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幻の”MIKIKOチーム版”と消えた165億。クリエイターだけが傷つけられたオリンピック開会式。閉会式を終えた今も組織委員会はだんまりのまま…

はじめに。私は、小林賢太郎氏の熱烈なファンではない。そんな私が、オリンピック開会式演出の突然の解任劇について記事にしたのは、この問題が、個人のみならず、クリエイターへの冒涜であり、エンターテインメント全体の問題だと捉えたからだ。

小林氏の汚名が返上されれば済むという話ではない。
そもそも、まかり通ってはいけないことが起きたのだ。
MIKIKO氏も被害者。傷つけられたのはクリエイターばかりだ。
上記記事と重複する内容だが、多くの方の目に触れ、考える機会になることを祈って、こちらに記事立てする。

■制作予算は増えるどころか、当初の5分の1に削減。
小林賢太郎氏に、開会式演出の白羽の矢が立ったのは、今年2021年の春先。
他のクリエイターたちが匙を投げるような、「度重なる変更や条件」、「制作予算の大幅な削減」にも応え、最悪「お蔵入り」も覚悟して、求められる中で最大限のパフォーマンスをするため、4か月弱という短い期間ながら、チーム一丸となって制作に取り組んだ。

組織委員会が165億と発表している開閉会式予算は、当初のMIKIKO氏の案に掛かった人員拘束費や作業費、さらにコロナ対策など、電通の中で、ほぼ予算の全てが消費されていた。
結果、制作現場にまわされた予算はたった10億(4式典合算)と言われており、当初の予算の5分の1に削減されたというのだ。クリエイターたちは、苦境の中、世界の祭典に見合うクオリティを求められ、やりくりして応えていかなければならなかった。

「動くピクトグラムくん」というアイデアも、そういった限られた制約の中で、言葉の壁を超え、世界中の方々が楽しめるように、と作り出された、クリエイター・小林氏の才智の結晶だったのだ。

発売中止となった開会式公式プログラム・小林賢太郎インタビュー抜粋
【立体である人間の体が平面にデザインされたものがピクトグラムですが、これを、わざわざ立体に戻し、人間の体で表現することがナンセンスなおかしみになれば、というところから発想していきました】

小林氏は、コロナ禍でのオリンピック開催についての想いも吐露した。

【オリンピックを目指す選手の皆さんの思いはとても尊いものです。でも、開催を疑問視する声もまた、筋が通っている。だからこの式典の内容が、意見の分断を際立たせるものになってはいけないと思いました】

開会式の準備は、刻刻と変わる条件に対応していくことの連続であり、演出企画チームは、その都度、何度も作り直し、開催されるとなった時のために備えてきた。小林氏はインタビューのラストをこう締めくくっている。

【この式典で私たちがどんなメッセージを伝えるかよりも、ここにオリンピックが存在しているという事実の方が、ずっと大きなメッセージになるだろうなと思います。その受け止め方は100人いれば100通りかもしれません。そして大事なのは、みんなの考えを同じにすることではなく、お互いの違いを尊重しあうことだと思います。さまざまな制約のある式典づくりになりました。参加してくれているアーティストの皆さんは、持てる才能を惜しみなく注いでくださいました。そして、私よりずっと前から携わってきた大勢の方々の長きにわたる献身が、ここに形になろうとしています。この東京2020オリンピック開会式は、今の私たちにできる精一杯の表現であり、主役であるアスリートの皆さんへのエールです】

文末には、はっきりと「演出・小林賢太郎」と記されていた。
発売中止の書籍に触れるべきか悩んだが、そもそも発売中止にしなくてよかったはずのものが、発売中止に追い込まれていること自体にも、声をあげるべきだと思い、あえて、触れることにした。

文春が公開した、MIKIKO氏の当初の案は素敵だ。見たかった。
しかし、今回の問題は「残念だった…」の一言で終えて良いのだろうか。
利権重視で、クリエイターが平然と傷つけられたまま、それ自体も仕方なかった…と国民の同調を図る情報操作が行われたのである。
「ホロコースト」という絶対あってはならない歴史的過ちを前に、小林氏の問題の論点をズラすことで、著名人さえ、声をあげることを抑制された。

「コロナ禍のオリンピック開催に反対する」のと「選手を応援する」のが別の話であるように、「ホロコーストを許さない正義」と、「小林賢太郎氏の解任」も別の話だ。論点のすり替えによって、今後のエンターテインメントに影を落とす、恐ろしい前例となってしまった。
だからこそ、私は、声をあげるために文字を起こした。エンターテインメントが、利権に脅かされる未来を危惧して。どうか、一人でも多くの方に届きますように。

【小林賢太郎氏の問題のポイント】
❶誤報が拡散:小林賢太郎氏は危険思想家ではない。「ホロコーストごっこをしようと言った男」は誤報である。
❷功績を無視:発言後、自身の浅はかさを反省し、20年以上「人を傷つけない笑い」を追求したことや、自身の動画広告収入を、障がい者への寄付や復興支援にあてたことが、一切、精査されないまま、即日解任。

詳細は、下記の記事にまとめています。ユダヤ人記者さえ、小林賢太郎氏の解任は行き過ぎだ、と擁護しています。改めて「知りたい」と思われた方は是非。

最後に。上記の記事に「想像力は思いやる力にもなる」と記したが、今回の件で、胸を締め付けるツイートを目にしたので、添付する。人の傷に敏感な人間でありたいと願う。


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