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前途有望な僕ら

大学生の頃、オーストラリアのブリスベンに短期留学した。
僕は語学学校に通っており、世界各国から様々な人種の人達が集まっていた。

象徴的だったのは、中国人だけが別クラスであったという事だ。
事情を探ると、「アイツらうるさいじゃん」という事だった。
直接的な差別に結構面食らった事を覚えている。

僕ら日本人は親日の、台湾やタイランドの生徒と仲が良かった。
韓国人とはなんだかギクシャクしていた。
また台湾人と中国人も仲が悪いようで、僕らも中国人を敬遠する様になった。

僕はその複雑な関係に憤りを感じた。
「自分達の何世代か前の話で、前途有望な僕らが影響を受けるなんて間違っている!」と思った。
その複雑な関係に対して、僕なりの抵抗の仕方で戦った。


留学から10年の月日が経った。
気がつくと、僕は前途有望な若者では無くなっていた。外部からインストールされた差別意識が、脳の片隅で居座っている。
国境ではなく、国内の出自で人を見下す様になった。憎むべき世代がある。男女は分かり合えないだろうなと思う。

心は10年前より多くを感じなくなった。
生きることが楽になった。
成長がこの事を指すなら、途方にくれてしまう。



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