幸せな日は、自分でつくる。

今日は最低の日だ。

思えば昨日から、予兆はあった。
小さいことでノビ夫と言い争いになり、なんとなーくおたがいギクシャクして今日のことの確認を怠った。それで朝一番からまた臨戦状態となってしまった。

なんとか”わだかまりはちょっとあるけど、まぁどうにかなるかな“くらいの空気になり、おたがいに仕事へむかう。

今日はいつもの出勤経路をつかわず、時間も普段とちがっていた。
乗りかえ駅についた時
「そうだ、時間が違うんだった」
と、電光掲示板を確認。うん、いつものホームにいつもの特急名が書いてある。来た電車にのりこんで指定席をさがしあてると、わたしの席にだれかが座っているではないか。“ちょっとちょっと…”と思った時に気づいた。

この車両、くさい…！

よくよく見てみると、わたしの席（2号車D18）の人は、C18の人とスルメのようなものをしみしみと食べている。
テーブルには、シルバーボディに「アサヒ！スーパードゥラァァイ！」の文字をきらめかせた500ml缶。
おかしい。平日の午前に、ここまで全力でへべれけ臭のする電車が行くような到着地がこの先にはない。

出発の音がピリピリと鳴りだしたので、あわてて飛びおりてホームにいた駅員さんに
「この電車ってどこですか？」
とわたしが乗りたい電車の場所を確認してみる。すると階段を渡って向こうのホームにいる、同じ車体の特急を示された。

「えぇぇ！」
なぜそこに同じ車体のものがいるのか。分身か。あわてると何を口走るのか、自分でもわからないものだ。駅員さんに向かって
「とめられないですか！？」
の“とめら…”の時点で、分身の特急は走り去ってしまった。
「とめら……れ、ないですね…へへ。」
こんなコントみたいな間とセリフ、今後一生使うことがないかもしれない。

以前の記事で書いたが、ノビ夫とわたしはそんじょそこらの田舎なら尻尾を巻いて平伏すような田舎に住んでいる。
そんな中でこの乗り換え駅は、最大規模のターミナル駅だ。一本逃しても次があるだろう。
「次の特急は1時間後ですね」
…誰だ、最大規模のターミナル駅とかいったの。
「…あ、ちがった、2時間後です」
…単位の破壊力。

＊　＊　＊

泣く泣く、普通列車でことこと進むことにした。
そこでさきほどの分身について調べてみたところ、同じ名前で同じ車体の特急が、同時刻に別ホームから上りと下りに向けて発車するようになっていた。
あのままへべれけ列車に乗っていたら、温泉地へ連れていかれるところだった。
てか、ややこしすぎるだろう！ターミナルが裏目に出とるやないか。

そんなことを考えながらゆられていると、ある駅で大量に人が乗ってくる。2人掛けボックス席をもう1人座れるように調整すると、20歳くらいの女の子が座ってきた。
しばらくして、一気に人が降りていき、また座席がスカスカになったのだが、彼女はきっちり横に座ったまま。
スーツケースを上げるひまがなく、床においてあるので、必然的に私の脚はスーツケースと座席にはさまれる形になっている。
棚に上げたいが、通路側が彼女なので動けない。だんだん脚が痛くなってきた。

LCCの座席でもこれよりは広い。エコノミー未満症候群って言えばいいのかな、なんか小物感はんぱないな。しかし彼女はなぜ動かないのか？隣に誰もいない座席のほうが絶対いいだろうに。あ、動いたら隣の人が嫌で移動したみたいに思えるからかな？あるよね、そういう感じ。

最終の駅についたときに“もう動いていいんだよ”という想いをこめて
「すみません」
と笑いかけると、いかにもけだるそうにチラッとこちらを見たあと、無言で立ち去られた。あ、これただ動くのが面倒やったやつやん。
残ったのはエコノミー未満症候群の脚の痛みだった。

＊　＊　＊

この時点でほとほと嫌になっており、急きょ楽しい予定を入れることにした。
久しぶりの友だちに、会いにいく。
おうちに着くまでに強風にあおられるし、道の舗装がガタガタでスーツケースはつんのめるし、それが脚に当たるし、その勢いで口の中をかむし。
ほんともうこんな日ある！？
ってくらい、いろんなことがうまくいかない日だったけど、そのお陰で友だちの笑顔に会えたし、新しい命へはじめましてのごあいさつができた。
最悪に思えたきっかけの出来事がなかったらこの嬉しい時間はなかったわけで、なにがどういうことを引き起こすかはわからないなーと思う。

＊　＊　＊

ベテラン駅員さんが特急の代わりを探すとき、小さい手帳の時刻表を取りだしてサッと案内してくれたのもかっこよかった。スマホよりはやかった、すごい。

ボックス席の彼女も照れていただけで、本当に移動したら悪いって気をつかってくれていたのかもしれない。そう思いたい。

ノビ夫から
「強風により、隣の家がいよいよ危ない」
という報せが来た。内容はさておき、強風がわだかまりも飛ばしてくれたのかも。しあわせ。

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訂正。今日もすごくいい日だった。
遠回りをするしかない時、どうせなら楽しむ余裕を持っていけたらいいよね。

お読みいただきありがとうございました！
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