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【エッセイ】エンコーしようとした話 ~つながり〜
この物語は第1回(全5回)
脚色している箇所があるが、
当時の状況や場面は不変のものだ。
その時に「感じたまま」を書いている。
土曜日の昼下がり。
晴れ間に少し雲がかかっているが、
雨になる気配がない。
大型ターミナル駅から少し歩くと、
ほどなく、私鉄の駅にたどり着く。
比較的大きな駅にありがちな街の設計だ。
その私鉄の駅から目の前に、繁華街が見える。
ここは、日本最大級ともいえる繁華街だ。
私は、紺と白のボーダーの服を着て、
チェックのスカートを履いている。
どこかで買った、黒い合皮でできた偽ブランドのやや小ぶりな鞄を肩から下げている。
靴下は紺色でくるぶしソックス、
靴は白地にピンクラインのニューバランス。
度の入っていない黒縁眼鏡をかけ、
肩ほどの髪をアップさせ、
白く細い首と「うなじ」と耳をさらしている。
繁華街×地味女×澄まし顔
一見不揃いな組み合わせだが、
色めいた街では、格好の「餌食」だ。
--
私には「家族」が無くなった。
大人になり切れていない私の頭でも、
その事を理解するのに時間はかからなかった。
人間は「つながり」がないと生きていけない。
集団行動する動物の一種だ。
孤独に耐えうる人は、
「つながり」なんて無くて良いと言う。
「つながり」は、時に煩わしく感じる。
しかし、現実に「つながり」をプツンと切らしてしまうと、私自身で「私が生存していること」に対し、大きく疑義を唱えてしまう。
誰かに寄りかかりたい
誰かと話したい
友達や知人ではなく、
全く知らない第三者が必要だった。
そして「男」が必要だった。
私は、どんよりと滲んだ頭で、
昼間からネオンに「ギラついた」繁華街へ向かった。
--
繁華街の入り口から少し歩いたところに、
「出会いカフェ」という看板があった。
入り口のドアには「女性無料」とある。
どうやら男は有料のようだ。
そこでは男女が出会い、
お互い気に入ったら店外デートをする、
というシステムになっている。
簡単に言うと
「男が女を買う場所」
私はスッと、カバンから黒いマスクを取り出し、耳にゴムをかけ、口へ装着させた。
やや胸を張り一呼吸をおく。
そして、一寸の迷いもなく、
「押してください」と表示された、
無機質で灰色の長いボタンを押し、
暗く澱んだ入り口へ足を踏み入れる。
つづく。
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