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【エッセイ】エンコーしようとした話 ~出会いカフェ~
この物語は第2回(全5回)
前回の記事を読まなくても分かるように、
「あらすじ」を付ける。
■前回までのあらすじ
土曜日の昼下がり、晴れ間に少し雲があるが雨の気配はない。
私鉄の駅近くの繁華街に向かう主人公は、紺と白のボーダーの服とチェックのスカートを着ている。
彼女は「家族」を失い、孤独感から第三者とのつながりを求め、「出会いカフェ」という看板の店に入る。
そこでは、男性が女性を買うシステムがあり、彼女は迷わずその世界に足を踏み入れる。
■前回の記事
店内に入ると、外とは違い全体的に暗く、
どころどころライトアップされている。
入店してすぐに受付があった。
受付には、黒髪でややチャラそうな顔つきの、黒いスーツを着ている眼鏡の男がいた。
受付前には、何人かの男がダルそうに、
スマホをいじりながら並んでいる。
およそ20代から60代まで、
全体的に地味な格好の男たちだ。
その地味男たちは、
入店した私を「ねっとり」と見る。
顔、服、スカート、髪、脚、首、
すべてを「舐め回す」。
その視線は、服越しに体の奥まで凝視されているようだ。
すでに「品定め」は始まっている。
店員に促され、私はマスク姿で写真撮影をする。
表情というモノを作ることが出来ない。
店員が掲げたスマホをまっすぐ見る。
私は、白い紙のプロフィールカードを書く。
「こういう店は初めてです。」
「好みのタイプは、優しい人」
書き終えると、女性用ルームへ案内される。
そこは、黒いカーテンで仕切られていた。
中には、お菓子やドリンクバーがおいてあり、食べ放題で飲み放題だ。これで無料。
ここに通い、お菓子とジュースを飲み食いし、
なにかの「待ち合わせ」に使っている女もいるようだ。
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女性用ルームは10人以上が座れるスペースがあり、既に6人が並んで座っていた。
全員が鏡のほうに、同じ方向を向いて座っている。
その鏡は「マジックミラー」と呼ばれるものだ。
座っている席の前に、横に大きく貼られている。
女側から男は見えず、鏡になっている。
男側から女を見ることが出来る。
座っている女は、全員20代とみられる。
5人はマスクを着け、1人は素顔を晒していた。
その顔が見えている1人は、
黒髪ボブであり小柄で痩せていた。
化粧がやや濃く、目が大きい。
涙袋は大きくふくらんでいる。
服は真っ黒コーディネートだ。
高級な黒いブランドバッグに、
マイメロの小さい人形を下げていた。
スマホの画面を直視しており、
唇が微かに動き、何やらぶつぶつ呟いている。
私は、メンタルがやられているように感じた。
長袖で腕は見えなかったが、
おそらく「イカ焼き」が記されているだろう、
と勝手に妄想した。
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私が、既に6人がいる女性用ルームに入るやいなや、店員が後を追うように入ってくる。
「みほさん、お呼びです。1番ルームへ行ってください」と店員は言う。
私はまだ、座ってもいないし、お菓子も水も貰っていない。
お腹が空いていたので、何かを口にしたかった。
しかし、そんな猶予はなかった。
私は、入ったばかりの女性用ルームを出ようと黒いカーテン開き、1番ルームへと向かおうとした時、男性用ルームから出てきた男と鉢合わせた。
その男は、茶髪でガリガリに瘦せており、
目が少し窪んでいて、顔が長く猫背だった。
右手は腰くらいの高さにあり、
その手にはスマホを持っていた。
その大きなスマホ画面がチラリと見えた。
ガリガリ男のスマホ画面には、
裸に一枚だけ布を付けたような女が、
3人並んでいた。
「料金」や「システム」という文字も、
僅かに見え隠れしている。
ガリガリ男は、こちらを横目で流して、
なにか口元を奇妙にぶつぶつと動かし、
外光が照らされる出口へと向かっていった。
つづく。
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