脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の脳の中

関西のとある脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の教育機関を終了した看護師集団です。…

脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の脳の中

関西のとある脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の教育機関を終了した看護師集団です。これから、もしくはすでに脳神経外科で看護師と働いている看護師さんに向けて、私たち脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の脳の中にある知識を公開します。

最近の記事

脊椎・脊髄疾患 #10-1 脊椎・脊髄の解剖

脊柱・脊髄の構造 脊柱は頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙椎から構成されます。脊柱の役割は、①身体の支持、②体幹の運動、③脊髄の保護があります。  脊柱を構成する椎骨は32~34個あり、外観はそれぞれに異なりますが、基本的形態は共通しています。 環椎・軸椎  脊柱を構成する椎骨のうち、脊柱の一番上にある第1頚椎と第2頚椎は他の椎骨とは異なる形をしています。  第1頚椎は環椎と呼ばれ、第2頚椎は軸椎と呼ばれています。 椎体と椎弓 1個の椎骨は、椎体、椎弓と様

    • 脳梗塞 #5-9 STA-MCAバイパス術

      1.バイパス術とは バイバス手術とは、血流不足に陥っている領域の脳血管に別領域の血管を吻合すること(=バイバス)で、不足部分の脳血流を増やす手術です。STA-MCA(superficial temporal artery-middle cerebral artery:浅側頭動脈-中大脳動脈)バイパス術が行われることが多く、頭蓋内外の血管を吻合し、頭蓋外から頭蓋内へ新しい血液の流れをつくる手術のことです。  STA-MCAバイパス術で使用するSTA(浅側頭動脈)は、図のよう

      • 脳動脈 #2-7 椎骨動脈と脳底動脈

        椎骨・脳底動脈の解剖 左右の椎骨動脈(vertebral artery:VA)は、鎖骨下動脈から分岐して、大後頭孔を通って頭蓋内に入り、橋延髄移行部付近の高さで合流して1本の脳底動脈(basilar artery:BA)となります。椎骨動脈、脳底動脈からは、脳幹、小脳を栄養する3対の血管が分岐します。3対の血管は、後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery:PICA)、前下小脳動脈(anterior inferior cerebe

        • 脳血管 #2-6 皮質枝動脈

          皮質動脈の解剖 皮質動脈とは大脳半球を表面から栄養する血管を指し、前大脳動脈(anterior cerebral artery:ACA)、中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)、後大脳動脈(posterior cerebral artery:PCA)から分岐します。皮質動脈は表在枝動脈や主幹動脈とも呼ばれます。 中大脳動脈  中大脳動脈から内頚動脈から分岐し、前頭葉と側頭葉の間のくも膜下腔(シルビウス裂)を外側に向かい、その後2本(時に3本)

          脳血管 #2-4 大動脈弓部

          大動脈弓部 大動脈弓は、心臓から出て上行する「上行大動脈」から続き、前方から後方に弓状に曲がって第4胸椎レベルで縦隔内を下行する「下行大動脈」に続く間の動脈のことです。  大動脈弓からは、①腕頭動脈、②左総頚動脈、③左鎖骨下動脈の3本の動脈を出して、頭蓋内に血流を送ります。 ①腕頭動脈  大動脈弓部からの最初の枝で、右胸鎖関節の高さで右鎖骨下動脈と右総頚動脈に分かれます。右鎖骨下動脈は左上肢に血流を送り、右総頚動脈は頭に血流を送ります。 ②左総頚動脈  左側の頭頚

          脳血管 #2-5 頚部頸動脈

          総頚動脈 総頚動脈は、右は腕頭動脈から、左は大動脈弓部から分枝します。左右とも、頚椎の4~5番目前後で、頭の表面に向かう外頚動脈と、頭の中に向かう内頚動脈に分かれます。  総頚動脈分岐部から内頚動脈起始部にかけて頸動脈洞があります。頸動脈洞は血圧変動を甘受する圧受容器として働きます。また、総頚動脈分岐部には頚動脈小体があります。この部分は、血液の化学組成変化を感受する化学受容器で、ここからの情報は呼吸中枢や循環中枢を介して呼吸や拍動に反射的変化を起こします。  頚動脈洞

          脳血管 #2-3 Willis動脈輪

          Willis動脈輪の解剖 Willis動脈輪は脳底部にある脳血管で構成される輪のような構造です。1本の前交通動脈と左右一対の後交通動脈によって、左右の内頚動脈系と椎骨脳底動脈系の3つの動脈が吻合することで構成されています。前交通動脈は左右の前大脳動脈を、後交通動脈は内頚動脈と後大脳動脈を結んでいます。Willis動脈輪の構成は図のようになります。  左右の内頚動脈や椎骨脳底動脈系のどれかが閉塞した場合、Willis動脈輪が側副血行路として機能し、閉塞した動脈の分枝動脈へと

          脳血管 #2-2 脳血管の解剖的・生理的特徴

          脳血管の解剖学的特徴①側副血行路  Willis動脈輪や眼動脈の構造などが代表的ですが、側副血行路を完備しています。頚部では前方に左右の内頚動脈と、後方に左右の椎骨動脈へと分かれていましたが、大脳底部でもう一度吻合して、Willis動脈輪をつくります。Willis動脈輪をつくることで、仮に1本の動脈が閉塞しても側副血行路で血流を補うことができ、脳梗塞に陥る危険性を回避できます。  脳実質内に入り込む穿通枝動脈は、他の動脈と吻合を持たない終末動脈であるため、穿通枝動脈が閉

          脳血管 #2-2 脳血管の解剖的・生理的特徴

          脳血管 #2-1 脳動脈と灌流域

          動脈の名称 動脈系の走行  脳に向かう動脈は、右総頚動脈は腕頭動脈から,左総頚動脈は大動脈弓から始まります。椎骨動脈は鎖骨下動脈から出ます。以後、脳は2つの動脈系(内頚動脈系・椎骨脳底動脈系)によって栄養されます。 覚えるべき13本の動脈  脳は前方循環である内頚動脈系と後方循環である椎骨脳底動脈系によって栄養されます。 内頚動脈系(内頚動脈) ➜内頚動脈 ➜前大脳動脈 ➜中大脳動脈 ➜前交通動脈 ➜後交通動脈 ➜前脈絡叢動脈 ➜眼動脈 椎骨脳底動脈(椎骨動脈・脳底

          外傷 #8-3 急性硬膜外血腫

          原因と病態 頭部への高エネルギー外傷がきっかけで急性に起こります。高エネルギー外傷とは、高所転落や交通事故などで体に大きな力が加わって起こった外傷のことです。高齢者の場合は、単純な転倒などの外傷でも発生することがあります。血腫は硬膜と頭蓋骨の間に貯留します。多くは頭蓋骨骨折を伴い、その骨折線上にある中硬膜動脈が損傷し傷つくことで血腫ができます。骨折部や静脈洞からの出血によって起こることもあります。脳自体の損傷は比較的軽いため、血腫の増大がなければ後遺症が残こすことは少なくな

          外傷 #8-2 急性硬膜下血腫

          原因と病態 急性硬膜下血腫は、頭部に高エネルギー外傷がきっかけで急性に起こります。高エネルギー外傷とは、高所転落や交通事故などで体に大きな力が加わって起こった外傷のことです。高齢者の場合は、単純な転倒などの外傷でも発生することがあります。血腫は硬膜と脳の間に貯留します。外傷時の衝撃を受けた部位に起こる直接損傷もありますが、衝撃を受けた反対側の部位に発生することもあります。反対側に生じる場合を対側損傷(contrecoup injury)といいます。  対側損傷が発生する機

          脳神経外科のドレーン管理 13‐3

          脳室ドレナージの管理と看護のポイント 脳室ドレナージとは  ドレーン先端部が側脳室の前角に留置されているドレナージのことです。 1、対象疾患と挿入方法  対象となる疾患はくも膜下出血、脳出血(脳室穿破)、脳室炎、急性水頭症などです。手術によって挿入しますが、開頭しなくても挿入することができます。 2、脳室ドレナージの回路  開放式ドレナージ回路を使用します。 刺入部の管理  脳室ドレーン挿入中は、刺入部を観察し、感染徴候(発赤や腫張など)やドレ-ンの挿入

          脳神経外科のドレーン管理 13‐4

          閉鎖式ドレナージ回路の基本閉鎖式ドレナージ回路  閉鎖式ドレナージは、閉鎖空間(硬膜下腔、硬膜外腔皮下など)に貯留した血液や貯留液のドレナージをするのに適した方法です。回路は、大きくドレナージチューブ(頭蓋内に留置される部分と頭蓋外の部分) と、流出した排液を溜めて計測するドレナージバッグとに分かれています。ドレナージバックには、SBバッグやJ-vagなどがあります。脳脊髄液を含む空間(脳室、脳槽、くも膜下腔)に留置することの多い開放式ドレナージと比較すると、構造は簡単で

          脳神経外科のドレーン管理 13‐2

          開放式ドレナージ回路と4つのクランプ 開放式ドレナージは、脳脊髄液を含む空間(脳室、脳槽、くも膜下腔)にドレーンを留置するドレナージです。留置する場所により、脳室ドレナージ、脳槽ドレナージ、スパイナルドレナージ(腰椎ドレナージ)と呼ばれます。ドレナージの目的は、脳脊髄液を排液することによる頭蓋内圧のコントロールや、脳脊髄液の中に含まれる血液や細菌の排除のほかに、頭蓋内圧のモニタリングです。また、薬物の髄内投与や髄液漏時の硬膜の修復などがあります。  一般的に使用されてい

          脳神経外科のドレーン管理 13‐1

          ドレーン管理に必要な解剖生理脳脊髄液循環路とは何か?  脳室系は両側の側脳室、第三脳室および第四脳室からなり、それぞれを狭い通路によって結ばれています。脳室の内壁は上衣細胞と軟膜によって覆われています。これらが毛細血管を伴って脳室内に突出したものが脈絡叢で、脳室の中は脈絡叢によって作られた脳脊髄液で満たされています。脳脊髄液の機能は、脳や脊髄の保護と支持です。  側脳室は左右の大脳半球の内部にあり、前頭葉、側頭葉および後頭葉の発達に対応して前角、下角および後角が作られま

          解剖 #1-4 延髄

           脳幹は大脳と脊髄を連結し、大脳に近い部分から、中脳、橋、延髄の3つに区分されます。脳幹は小脳の前に位置し、小脳と連絡を取り合い、間脳(視床、視床下部)とも機能的な連携をします。脳幹には第3脳神経から第12脳神経の神経核が存在します。 中脳 中脳は脳幹の最上部にある組織で、上方の脳幹と下方の橋、後方の小脳に囲まれて位置します。  中脳の側腹面は大脳脚とそれに挟まれた脚間窩で構成され、上方には乳頭体と下垂体、視索が位置し、脚間窩からは動眼神経が出ます。腹側面には上丘と下丘が