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脳神経外科のドレーン管理 13‐4


閉鎖式ドレナージ回路の基本

閉鎖式ドレナージ回路

 閉鎖式ドレナージは、閉鎖空間(硬膜下腔、硬膜外腔皮下など)に貯留した血液や貯留液のドレナージをするのに適した方法です。回路は、大きくドレナージチューブ(頭蓋内に留置される部分と頭蓋外の部分) と、流出した排液を溜めて計測するドレナージバッグとに分かれています。ドレナージバックには、SBバッグやJ-vagなどがあります。脳脊髄液を含む空間(脳室、脳槽、くも膜下腔)に留置することの多い開放式ドレナージと比較すると、構造は簡単で、圧をコントロールしたりすることはできません。また、貯留液がある程度減少すると早期に抜去するため、留置期間は数日間(多くは1~2日間)であることが多いです。

閉鎖式ドレナージの種類

 脳神経外科で用いるドレナージのうち、閉鎖式ドレナージには次のドレナージがあります。

皮下ドレナージ

 皮下や筋層に溜まった浸出液や血液の排出を目的に行い、皮下と頭蓋骨の間に留置されます。適応は、開頭術後や外減圧術後頭蓋骨形成術後などです。

閉鎖式ドレナージ回路の原理

 閉鎖式ドレナージ回路は、頭蓋内圧のコントロールを必要としないドレナージであるため、回路内にはサイフォンなどの圧設定の機構は存在しません。硬膜下・硬膜外・皮下ドレナージは、それぞれの部位から導出されたチューブが、排液バッグや陰圧のかかるバッグに接続されています。

 排液バッグにつながれている場合、バッグの高さによって排液の圧が変化するため、通常はベッド上かベッド脇に置くようにします。陰圧のかかるバッグに接続している場合は、陰圧をかけるリザーバーを作動させることにより吸引します。

 挿入したドレーン先端は、通常は隙間はなく、液体も存在しませんので、周囲の組織からの出血などがなければ、排液がなくても問題はありません、また、ドレーンから髄液の漏出など、くも膜下腔との交通が予想される所見があれば、早期にクランプを閉鎖してドレナージを中止することが一般的です。必要以上に髄液を排液すると、低髄圧症候群や頭蓋内の感染を発生させる可能性があります。

閉鎖式ドレナージ回路の管理と看護のポイント

1.SBドレナージ

 SBドレナージは皮下にドレーンチューブを留置し、頭皮と頭蓋骨の間にたまった血液や浸出液を排出することを目的に留置します。絶対的な適応疾患は無いですが、開頭術後に皮下に留置します。

 頭皮と頭蓋骨の間に隙間はありませんが、開頭をする際に頭皮と頭蓋骨をはがすことで隙間ができます。ドレーンチューブはこの隙間の皮下に留置します。通常、手術翌日に画像検査を行い、皮下に血腫などの貯留が無いことを確認してから抜去しますので、留置期間は1~2日程です。排液量や排液の性状によっては、数日留置する場合があります。

2.SBドレナージの構造・加圧方法

 SBドレナージは、ドレナージチューブと、圧の設定と排液を貯留するSBバックと、ドレナージチューブとSBバックを接続するYコネクターからなります。SBバッグは、排液ボトルと吸引ボトルに分かれます。排液ボトルはドレナージチューブを挿入されたYコネクターが直接接続され、排液がたまります。Yコネクターと排液ボトルの間に板クランプがあり、クランプすることでドレナージの停止や逆流を予防します。

 排液を破棄する際は、板クランプをクランプし、排液ボトルキャップを開け、排液を破棄します。破棄後は排液ボトルキャップをしっかりと閉めます。

 ドレナージは、ゴム球に加圧をかけることで吸引ボトル内を陰圧にして行います。圧をかける際は板クランプをクランプして、ゴム球を指示の回数だけ加圧します。加圧後に板クランプを開放します。加圧を解除する際は、板クランプをクランプして、吸引ボトルの下のキャップを開放して陰圧を解除します。陰圧を解除後、板クランプを開放します。

 SBドレナージは、吸引器のタイプが通常圧と低圧の2種類あります。吸引ボトルに圧のタイプが表記されていますので、術後に確認をします。同じ加圧をしてバルーンの大きさが同じでも、吸引圧が変わります。SBドレナージには、NDタイプがあります。NDは落差圧でのドレナージができ、加圧を掛けない状態でドレナージチューブ挿入部位よりバックを低く設置して、その落差圧によってドレナージを行います。NDタイプは吸引ボトルに表記されます。

SBドレナージ
Yコネクター

3.SBドレナージの管理方法

 SBドレナージの留置は手術室で行います。術後、帰室搬送中は板クランプでクランプをしているため、排液はありません。術後、帰室しベッドに戻ってからドレナージの設置やクランプ開放を行います。

 帰室したら、

1. バッグをドレナージチューブ挿入部とほぼ同じ高さの位置に固定する

2. ドレナージチューブをYコネクターに押し込み、Yコネクター内のバネにしっかりと引っかかっているか確認する

3. 板クランプでクランプされていることを確認し、吸引ボトルのキャップを開放し、加圧を平圧にする

4. 指示の圧をかけるためゴム球を加圧する

5. 板クランプを開放する

6. ドレナージされる排液の色や性状を確認する

4.閉鎖式ドレナージにおけるトラブル・インシデント

持続的な血性排液の流出

 ドレナージチューブドレーン挿入部周囲の止血が不完全で、硬膜や皮下の血管から再出血している可能性があります。創部のガーゼに血が滲んでいないか、創部の皮下に血液が貯留していないか、創部痛の有無を確認します。また、意識レベル、麻痺、瞳孔所見、神経学的所見、バイタルサインを観察し、医師に報告するとともに、急変に備え対応ができるよう準備します。

ドレナージチューブのYコネクターからの抜けた

 排液が流出しないようにドレナージチューブを屈曲させ、ドレナージチューブとYコネクターの接続部をイソジンで消毒した後、接続する。指示の加圧になるようにゴム球を加圧し、排液の流出状況を確認します。

排液の流出がない

 排液の流出がない、チューブ内の液面の移動がない場合は、ドレーンが凝塊血などにより閉塞している可能性があります。ミルキングを行い、チューブの閉塞の状況を確認します。

1.板クランプをクランプします

2.Yコネクターの真ん中を指で数回圧迫します

3.板クランプを開放します

ミルキング実施後も排液がない場合はDrコールをします。

ドレーンチューブ内の液面の拍動性移動と排液増加

 SBドレナージは皮下に留置されているので、基本的に拍動はありません。手術後に板クランプを開放すると血液の排出があり、経時的に流出は減少します。透明の排液が持続的にみられた場合は髄液漏を疑います。開頭手術は、頭蓋骨を外し、硬膜を切開して手術をします。閉頭時に切開した硬膜を縫合して針穴を接着剤で塞ぎ、髄液漏を防止します。しかし、髄液が漏れることがあり、頭蓋内と皮下が交通すると、皮下に髄液が貯留し、持続的に髄液が排液されることがあります。チューブ内の液面が呼吸性、拍動性に移動し、髄液の排出を疑われれば、板クランプをクランプし、Drコールをします。

ドレーンチューブ抜去後の看護のポイント

 ドレーンチューブ抜去は、チューブを固定している縫合糸を抜糸し、ゆっくりとドレーンチューブを引き抜き、最後まで抜去されたのを確認したあとに、皮膚貫通部に一針縫合をします。チューブ抜去後に、創部から浸出液が漏れることがあり、縫合処置が必要となることもあります。抜去後は、創部の観察をして問題がないか確認することが必要です。

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