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外傷 #8-3 急性硬膜外血腫


原因と病態

 頭部への高エネルギー外傷がきっかけで急性に起こります。高エネルギー外傷とは、高所転落や交通事故などで体に大きな力が加わって起こった外傷のことです。高齢者の場合は、単純な転倒などの外傷でも発生することがあります。血腫は硬膜と頭蓋骨の間に貯留します。多くは頭蓋骨骨折を伴い、その骨折線上にある中硬膜動脈が損傷し傷つくことで血腫ができます。骨折部や静脈洞からの出血によって起こることもあります。脳自体の損傷は比較的軽いため、血腫の増大がなければ後遺症が残こすことは少なくなります。

急性硬膜外血腫

画像所見

 硬膜と頭蓋骨は比較的密に結合しているため、血腫は広がりにくく、画像の特徴として凸レンズ型血腫を認めます。急性硬膜外血腫のCT画像では、血腫は凸レンズ状の形状で、頭蓋骨に骨折線を認めています。脳実質に損傷が及ぶケースは少なく、予後は良好な場合が多いです。

 受傷直後には血腫が形成されていなかったり、少量のこともあり、経過を追って繰り返し撮影を行い、再出血の有無を観察する必要があります。

頭部CT 水平断
線状骨折

手術の適応

 急性硬膜外血腫の手術適応は、厚さ1~2cm以上の血腫、あるいは20~30mlの血腫量とされています。また、意識障害などの神経症状の急激な変化も手術適応の判断材料になります。

 手術は開頭手術による開頭血腫除去術を行います。

急性硬膜外血腫の経過

 急性硬膜外血腫では、経過として「受傷直後の一過性の意識障害」→「意識清明」→「再び意識障害」をたどることが多くなります。受傷直後に意識障害を呈してから数分から数時間は意識が回復し、意識清明の状態になります。この中間の意識清明な時期を指して、「意識清明期(lucid interval)」と呼び、「意識清明期」が急性硬膜外血腫の特徴になります。「意識清明期」のみられる症例は約15~60%であり、受傷部位や重篤度などによって様々で、「意識清明期」の後、脳ヘルニアを伴った昏睡となり、生命の危機的状況に陥ります。

 救急外来や外来で急性硬膜外血腫や頭蓋骨骨折を認めた場合は、症状が軽くても、経過観察のため入院することが重要です。入院したのち、2~3時間後に必ず再度、CT検査を実施して、血腫の増大を確認することと意識レベルを中心とした症状の観察をしなければなりません。この数時間の観察が重要です。

 血腫の増大により脳ヘルニアが発生すると生命の危機的状況に陥りますが、脳ヘルニアが発生する前に早急に開頭血腫除去術を行えば、予後は良好になります。

看護

 急性硬膜外血腫の患者に対して、意識清明期後の神経症状悪化を想定して、注意深く経過観察をすることが重要になります。早期診断・治療につなげるため、頻回に意識、瞳孔、麻痺など神経症状のチェックを行います。

 血腫量増加を避けるために、疼痛コントロールを行いながら安静を保ちながら、血圧コントロールをすることが重要です。必要時に降圧加療をして高血圧を避けます。

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