脊椎・脊髄疾患 #10-2 脊椎・脊髄の疾患
脊髄・脊椎の疾患とは
脊椎・脊髄の疾患には、髄核がはみ出て脊髄や神経根を圧迫するものや、脊椎が変形して脊髄や神経を圧迫するものがあります。脊椎の疾患は、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、後縦靱帯骨化症、脊椎圧迫骨折などがあり、脊髄の疾患は、脊髄動静脈奇形、脊髄梗塞、脊髄腫瘍、頚髄損傷があります。
椎間板ヘルニア
加齢に伴う椎間板の変性や椎間板への過重負荷が要因となり、髄核が線維輪を破り、後方または後側方に突出し、脊髄や神経根を圧迫します。この状態を椎間板ヘルニア(Disc hernia)といいます。
可動域が大きく、負担がかかりやすい頸椎や腰椎に生じやすく、頚椎に発生した場合「頚椎椎間板ヘルニア」、腰椎に発生した場合「腰椎椎間板ヘルニア」と呼びます。圧迫されて症状を出現する神経によって、名称が変わります。脊髄の場合は脊髄症、神経根の場合は神経根症といいます。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアは40~50歳代に多く、動きの大きい第4~6頚椎間に多く発生します。
1.症状
頚椎が圧迫された場合は、四肢のしびれや脱力などの感覚・運動障害を自覚することが多く、重症例では、短距離での歩行での下肢の痛みや排尿・排便障害を伴います。神経根が圧迫された場合は、頸部痛、肩甲骨周囲や上肢の局所的な痛みが出現します。腕が上がらないなどの、局所的な上肢の運動障害を伴うこともあります。
2.診 断
頸椎椎間板ヘルニアの部位を確認するため、MRI検査を行います。頸椎X線撮影やCT検査では、頸椎椎間板ヘルニアの診断は困難です。
3.治療
保存的治療として消炎鎮痛剤、ビタミンB12、神経性疼痛緩和薬などの薬物治療を行います。外科的治療としては、椎間板摘出術+頸椎前方固定術、椎弓形成術があります。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアは30~ 50歳代の男性に多く、第4・5腰椎間、あるいは第5腰椎・仙椎間に多く認めます。
1.症状
激しい腰痛と、殿部から大腿背面に沿って、下肢の痛み(坐骨神経痛)を訴え、短距離での歩行での下肢の痛みや排尿・排便障害を伴うこともあります。前駆症状として、腰部の違和感を訴えることもあります。
2.診断
腰椎椎間板ヘルニアの部位を確認するため、MRI検査を行います。
3.治療
急性期には、安静や消炎鎮痛剤・筋弛緩剤などの薬物治療を行います。脱出した髄核は数か月で吸収されることもよくありますが、保存的治療でも症状が改善されない場合や、排尿・排便障害を伴う場合は手術を行います。
手術は、腰椎後方から椎弓を一部切除し、神経を圧迫している脱出した髄核を摘出します。
変形性頚椎症
退行変性によって、椎間板がつぶれて脊柱管内に突出するとともに、周囲の椎体辺縁に形成された骨棘も突出して、神経症状を呈します。椎間板ヘルニアとの違いは、椎間板に急激な変化が生じるのではなく、長い年月をかけて形成された多椎体の骨軟骨性隆起(骨棘)が主体の病変であることです。
1.症状
椎間板ヘルニアと同じように、神経根症、脊髄症があります。主に加齢による変化であるため、多くの椎体に変性が認められ、脊柱管が狭窄します。
2.診断
MRI検査を行いますが、X線撮影や3D‐CTでも骨棘の形成を確認できます。
3.治療
神経根症・脊髄症の症状が軽度の場合は、保存的治療を行います。保存的治療は、頸椎安静、頸椎固定、薬物治療などを行います。
神経根症状で上肢の痛みが激しい場合や、麻痺が進行してきて日常生活に支障をきたす場合は、外科的手術を行います。手術は、頸椎前方固定術を行うか、あるいは多椎体に病変がわたる場合は、頸椎後方から脊柱管拡大術を行います。
頸椎後縦靱帯骨化症
頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊椎椎体の後縁を連結する「後縦靭帯」が骨化することにより起こります。骨化によって脊柱管が狭窄し、脊髄や神経根の圧迫障害をきたす疾患です。 頸椎に起こることが多いのですが、胸椎・腰椎にも生じます。また、他の靭帯(黄色靱帯、前縦靱帯)の骨化を合併することもあります。
40歳以上に好発し、男性で女性の2倍多く発生します。
この骨化がなぜ起こるのかは現在のところ不明ですが、遺伝的背景が疑われています。国が定める特定疾患(難病)に指定されています。
1.症状
頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)は項部痛や頸部痛、あるいは上肢のしびれ・痛みで発症します。進行すると、四肢の感覚・運動障害や膀胱・直腸障害が出現します。
転倒や事故などの軽微な外傷で、脊髄損傷を引き起こし、突然に四肢麻痺になることもあります。
2.診断
MRI、CT、あるいはCT脊髄造影が最も有用な検査で、X線検査でも診断は可能です。
3.治療
薬物治療など保存的治療もありますが、根本的治療は外科的手術が必要です。
手術は、頸椎後方から脊柱管拡大術(椎弓形成術)を行います。
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