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心温まる韓国エッセイ『あなたを応援する誰か』

 人はなぜ誰かが書いたエッセイを読んだり、絵を見たり、歌を聞いたり、詩を読んだりするのかと、時々考えることがあります。

 人間が生命を維持していくために必要なものは、水と空気と衣食住。けれども、長い人生それだけでは心もとないもので、生き抜くための知恵や技術、助け合う仲間、娯楽なんかも必要になってきますよね。

 なぜこの世に生まれ、いつまで生きられるのか?そんな答えの出ない問いを抱えながら何十年も生きねばならない人間の一生とは、ある意味、ほかの動植物より過酷です。

 その過酷さに耐えうるために、称え合うために、慰め合うために、叱咤激励し合うために、芸術が存在するんじゃないか?

 誰かが表現せずにいられなかったものに触れ、心を通わせることで、自分の身体から生きる活力が湧いてくる。胸の奥に閉まっていた感情が呼び起され、泣いたり笑ったり、怒ったりすることで心が解放されていく。「私は一人だが独りではない」と感じることで、もう一日頑張って生きてみようと思える…。

 つまるところ、人は誰かの表現に触れることで自らを省み、自分の命の在り方を確認しているんじゃないかと私は思うんですが、どうでしょうか?

 「そんな小難しく考えるなよ。芸術は単なる娯楽だよ」という答えでも、全然良いわけですけど。みなさんはなぜ、誰かが表現したものを読んだり観たり、聴いたりしたくなりますか?

 私が最近手に取った一冊は、韓国の画家・エッセイストであるソン・ミファさんのイラストエッセイ『あなたを応援する誰か(당신을 응원하는 누군가)』です。ミファさんは6年前の農業体験取材中に、江原道のトマト農家さんの家で偶然出会った方でしたが、彼女の本が今年日本で翻訳出版されたと知り、読んでみたくなりました。

 たった一度きりの出会いで、私のことは覚えていないだろうなと思っていたんですが、音声配信でこのエッセイについてお話ししたところ、ミファさんから「覚えてますよ!日本語はわからないけれど(音声配信を)聞いてみますね」と連絡をいただきました。人の縁とは本当に不思議なものですね。

 他にも今、とても夢中になって観ているドラマとエッセイがいくつかありますので、またいつかそんなお話もできたらと思っています。

 韓国・ソウル近郊は雨の一日で気温が急降下。明日はなんと雪の予報!

▼音声配信はこちら

《番組内容》
イラストを眺めているだけでも癒される、韓国のショートエッセイ集『あなたを応援する誰か(당신을 응원하는 누군가)』の紹介と、アートセラピーを学んだという同世代の著者、ソン・ミファさんとの出会いについてお話ししています。/2023.11.9収録

★番組内で紹介した本
『あなたを応援する誰か』 ソン•ミファ 著、桑畑優香 訳

★好書好日 ソン・ミファさんのインタビュー

★著者と出会った日のことを書いた記事はこちら


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