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臨床の思考の整理

訓練場面において、観察/評価は必須であり、訓練との直接的な結びつきが重要だと思います。
 
その訓練を通して、行為にどう汎化させるかがセラピストの腕の見せ所です。
 
その時、何をもとに行為へ汎化させるかが鍵となります。

本日は、私の体験談をお話ししたいと思います。

症例Aさん

Aさんは、2年前左片麻痺を呈し、症状は軽かったようですが、退院後から徐々に機能が低下し、左足を引きずるような歩き方となり、趣味であった将棋場へ行けなくなり、当センターをご利用となりました。

運動麻痺の要素は少なく、可動性の低下も少ない方でしたが、明らかな注意障害を呈しており、左半身の空間に対して各関節を定位できない症状が出ていました。

Aさんからは、「左足が重くて動かないんです」とお話を伺い介入しました。

歩行を観察すると、確かに左足を重そうに歩いており、体幹を回旋させて勢いよく降り出していました。それに対して、左上肢は異常に伸展位を作り、進む方向と逆の方向に力が働いている状態でした。

立ち上がり動作では、前方に重心が乗らず後方に倒れそうになるなど、立位場面からバランス機能が低下しており、自宅での転倒歴も多くなっていたそうです。

その方に対して、どんな介入が必要なのか。

まずは、本人がなぜ『左足を振り出すときに身体全体で勢いよく振り出す』戦略を取っているのかを仮説としてあげる事が一般的なリハビリをする前の観察/評価ポイントとなります。

ここはセラピストそれぞれが注目する視点や、手技で千差万別なので解説しませんが、この時、重要なのが「なにを使って行為に繋げるのか」が重要です。

行為には必ず本人の意図があり、自身が選択できる「モダリティー」を使ってその行為を遂行しています。

その為、本人がどのような意図をもって「左足を振り出しているのか」ついて追及し、本人が分かるモダリティーを使ってその行為を遂行できるように学習させることが、どの手技を使うにも必要だと考えます。

この方の場合は、左足を振り出す=「重たいものを前に出す」であり、左足の関節を使って降り出すという認識自体ありませんでした。

なので、重たい箇所を聞いても「左足全部」と答えが返ってきましたので、感覚の検査を行いました。

すると、感覚の問題はありませんでしたが、多関節の動きになると注意の細分化できなくなり、どこを動かされたかが答えられない症状が見られました。

これに対して、提示した関節運動は再現できた為、本人がイメージする「振り出す際に使っている関節」を使って振り出す瞬間の意識をその関節に向ける活動を行いました。

結果、重さは残っていましたが引きずる動きは無くなり、その時点で契約する流れになりました。

やったことはとても単純ですが、本人が「意識できる、認識できるモダリティ」を見つけ、それを本人が分かる「言葉(感覚)」で再現するだけで行為は変化します。

コツは、患者の「ポジティブな要素」をたくさん見つける事です。

自分で分かった使い方は自宅でも容易に再現できる為、行為の汎化は容易です。ぜひ、参考にして頂ければ幸いです。

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