自分の専攻を就職活動でどう活かすか、という話

どうも、のっちゃんです。

突然ですが私は就活生時代、本当に多くの業界を志望していました。
コンサル、証券、銀行、メーカー、IT、広告、エンタメ……と、おそらく就活生が思いつくであろう業界は、内資外資問わず一通り応募しています。そしてそのほとんどで内定、ないしは最終面接まで進んでいました(既に第一志望に内定を頂いていたため、辞退させていただいた会社も多いです)。

しかし私は法学部生で、それも専攻分野は刑法。おおよそ一般の民間企業では何一つ活かせない分野でした。
そのため面接官には何度も「なんで法学部なのに民間行くの?」や「その専攻分野って仕事にどう生かせるの?」といった質問を投げられました。

文系の学生だと納得してもらえると思いますが、文系学生の新卒就活において、専攻なんてものは8割役立ちません。勿論法務部や経理部、あるいはマーケティングといった、新卒時からある程度専門性を持つ部署に配属される場合は別ですが。ただそれでも、多くの文系学生にとって、志望業界と自分のアカデミックスキルは一致しないことが殆どでしょう。
一方理系学生は、このようなミスマッチが起きる確率が低いです。そもそも技術職という職種が存在することや、有形商材を扱うビジネスにおいて理系分野の知識が必要ないということはあり得ないですから。
ただその点を捉えて「文系は就職不利」という結論を導くのは、あまりに早計……と言うより、就職活動というものの全体像が見えていない気がします。

まず理系だけしか応募できない職種(技術職など)があるという点ですが、それは文系だって同じです。先述した法務部は当然法学部生しか応募できませんし、経理やマーケティング部でも同様に特定学部からの入社が必須・推奨されているケースは多々あります。そういった部署に理系は応募できないので、就職活動全体で見た時に文理で就職先の選択肢に大きな差が生まれているとは考えづらいです。

ただ実際、文系学生にとって自分の専攻と志望先の乖離は大きな悩みです。
ではどのように、その乖離を無くせば良いのでしょうか。


結論はシンプルです。
そもそも貴方が学んでいる学問は、多くの場合「専攻」と呼べるほど解像度が高いものではありません。
もっと簡単に言えば、学部生如きの知識量で専門云々を語ることは、少なくとも就職活動においては無意味だと思います。

いきなり暴論とも呼べる結論に見えるかもしれませんが、もう少し読んでいただきたい。
そもそも大学以上で学ぶ学問というものは、高校までに経験した内容と比較にならないほど膨大かつ広大です。高校までに履修する学問は学習指導要領という形で体系化された、いわば地図と道順が既に与えられた学問なのです。学生はどの道をどの手順で、どの程度の速度で進めばゴールに辿り着けるかが示されています。
しかし大学以上の学問は、その地図の大きさが何倍にも広がります。ある程度道は整備されていますが、その道は高校時代までと比較して圧倒的に整備がされていません。それにゴールは見えないどころか、まだ見つかっていないことが多いです。
そうなると、学部生の間に吸収できる知識はほんの一握りでしかありません。その程度の知識で専門性がどうこうと語っても、「それだけの知識で何を言っているんだ」と言われるのがオチです。

では話を戻して、どのように自分の専攻と志望先の乖離を減らせば良いのか。
答えは、「専攻を正しく抽象化する」ことにあります。

抽象化する、とはどう言うことか。
例えば私の専攻である刑法を使ってやってみましょう。

一般に法学部と言うと「この事例は刑法◯条に違反しているので犯罪!」ということを勉強しているイメージだと思います。しかしこのイメージは、実態と大きく異なります。
法律を学ぶ際に最も重要なのは「どの法律に抵触しているのか」ではなく、「なぜこの法律に抵触する/しない」のか、そして「この法律はなぜ作られたのか」という点にある(と私は思います)。
例えば刑法を例に取ってみましょう。刑法は罰金や懲役という形で私人の権利を制限するため、法律の中でも特に運用が難しい分野と言われています。そこで刑法は犯罪行為を「構成要件に該当し、違法かつ有責な行為」と定め、その全てに当てはまる行為を犯罪として処理します。この”構成要件”、”違法性”、”有責性”という3要素を個別の事例や条文に当てはめて、犯罪の可否を論じるのが刑法という学問です。
このように見ると刑法はただ単に犯罪成立の成否を問うだけの学問ではなく、その背景に「複数ある考慮要素や関連因数を特定・精査し、先行事例や学説といったデータを活用しながら、目の前の事実を論理的に解釈する」という手順(枠組みとも言えるかもしれません)が存在します。即ち刑法を学ぶこととは『①原因や因数の特定 ②データの活用 ③現状の分析と施策の提示 という3要素を包括的に学ぶこと』と抽象化することができるのです。

ここで大事なことは、この抽象化が本当に正しいのかどうかはあまり重要でないということです。そもそも抽象化というのは、どの点を切り出して抽象化するかによって出力結果が変わります。そのため抽象化した結果が正しいかどうかというのは、実のところ誰も正確には判定できないのです。
むしろ注視すべきは、抽象化した内容と志望先で求められる要素(コアコンピタンスと言えるかもしれません)が一致することです。例えばコンサルでは「論理的思考力」がモロに求められますし、トレーダーでは「損益がなぜ生まれたか」ということを推測する思考力が問われます。それぞれの志望先で求められている能力を適切に理解し、それに沿う形で抽象化を行うことで、専攻内容と志望先の乖離は大きく減らせます。

そもそも学問というのは、1要素だけで全てが決まるものではありません。どのような学問でも論理的に思考する力が求められますし、一方で一つ一つのデータを精査する力が求められる時もあります。つまり学問を修める上では、「論理的思考力」「データ分析力」「言語化能力」などの多種多様な能力が複合的に求められているのです。だからこそ、自分がその時推したい能力が伝わる切り口で抽象化をすることが大事なのです。

これは別に専攻に限った話ではありません。例えば部活動やサークル活動でも、「調整力」「発信力」「リーダーシップ」「サポート力」「コミュニケーション力」といった様々な要素が求められているはずです。そう言った意味では「何をしたか」ではなく「何を伝えるか」の方が、新卒就活においては圧倒的に大事なのです。

当然のことですが、アカデミックを極める学生はその道を突き進んでいいと思います。先ほど学部生レベルの〜なんて申し上げましたが、修士博士のレベルに到達するためには、少なくとも学部生レベルの知識が必須ですからね。もし本気で挑戦したい学問があるならば、迷わずその道を邁進してください。

一方で自分の専攻内容にさほど興味がない場合、あるいはあってもうまく伝えきれない場合は、この抽象化を意識してみると良いかもしれません。

実体上は学部生の専門性は、少なくとも新卒就活という市場においては形骸化していると言わざるを得ません。しかしそれは学生にとってはどうしようもないことなので、適度に付き合う位がちょうど良いでしょう。

さて、ではお聞きします。
貴方が大学で学んできたこと、そしてそれを会社でどう活かしたいですか?

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