イルミネーションが苦手だ。 それはたぶん、だいぶ昔からずっとそう。 小説や漫画にもよくある展開のひとつに、恋人たちがクリスマスにイルミネーションを見に行く、とい…
桜の木が好きだ。 花ではなく、葉でもさくらんぼでもなく、桜の木。 桜が好き、というのは、日本人として珍しくない。 でも、桜の木が好き、というひとは、あまり見ないよ…
こどもの頃、綺麗な羽を拾った。 虫の羽だ。 とんでもなく薄くって、力を込めずとも呆気なく割れてしまいそうなものだった。透き通った羽は虹色に光っていて、信じられな…
立体駐車場の、灰色の柱の向こうに、広い青空が見えていた。響いていた靴の音、乾いたコンクリートの香り。そんな景色ばかり、いくつも覚えている。 ――――― 人混み…
窓が好きだ。 できれば、空と緑の見える窓。他はどんな景色でも構わないし、どんな方角を向いていてもいい。 いま暮らしている部屋は、建物の角に位置していて、2つの窓か…
さとざき幸
2023年6月28日 00:34
イルミネーションが苦手だ。それはたぶん、だいぶ昔からずっとそう。小説や漫画にもよくある展開のひとつに、恋人たちがクリスマスにイルミネーションを見に行く、というものがある。そんな話を見るたび、うんうんそうね、と読み進めつつ、心の中ではちょっぴり違和感を覚えてしまう。わたしなら、イルミネーションよりも夜景がいいし、夜景よりもずっとずっと、星が見たい。個人的な好みの問題だろうけれど。満天の
2022年12月17日 02:30
桜の木が好きだ。花ではなく、葉でもさくらんぼでもなく、桜の木。桜が好き、というのは、日本人として珍しくない。でも、桜の木が好き、というひとは、あまり見ないような気がする。元々、桜そのものも、人並みに好きだった。咲けば歓声を上げたし、散れば悲しかった。門の横、学校の校庭の周り、川辺。桜は本当に身近な木だった。高校生の頃、母と二人で車に乗って、大きな公園によく足を運んでいた。平日の昼
2022年7月12日 09:18
こどもの頃、綺麗な羽を拾った。虫の羽だ。とんでもなく薄くって、力を込めずとも呆気なく割れてしまいそうなものだった。透き通った羽は虹色に光っていて、信じられないほど細かく緻密な網目模様をしていた。それは、たぶん、とんぼの羽だった。(いや、もしかすると、蝉の羽だったのかもしれない。もうはっきりとは思い出せない)ほんとうに綺麗で、日に透かしたり、目に近づけて向こう側を覗いてみたりと、しばら
2022年5月14日 02:17
立体駐車場の、灰色の柱の向こうに、広い青空が見えていた。響いていた靴の音、乾いたコンクリートの香り。そんな景色ばかり、いくつも覚えている。――――― 人混みが怖くて、駅をまともに歩けなかった。中学生の頃の話だ。駅も繁華街もデパートも、あの頃はとても怖かった。そうなる少し前から、中学校には行けなくなっていた。なんとか行けた高校は、通信制だった。平日にも時間があったから、よく母に
2022年5月2日 23:19
窓が好きだ。できれば、空と緑の見える窓。他はどんな景色でも構わないし、どんな方角を向いていてもいい。いま暮らしている部屋は、建物の角に位置していて、2つの窓からは緑と空と街がよく見える。最近は、朝日が少しまぶしい。緑がどんどん、春から初夏へ向けて濃い色になっていく。毎日窓を開け放って、季節と光をたっぷり味わう。前に住んでいた部屋は、同じように角だったのだけれど、とことん光の差さない北向き