TRPGシナリオ製作術 【謎やテーマやコンセプト! 6個の技術紹介】

◆はじめに

今回はテーマについてのお話です。前置き無しです。


テーマ周りのお話を、TRPGシナリオを執筆する人に向けて書いていきたいと思います。以下は要点です。

  • 題材は作品の材料、組み合わせ次第で相乗効果もある

  • コンセプトとは、その題材たちのどの辺を楽しんでほしいのかを読者(PL)に推す部分

  • モチーフとは作品の着想や作る動機であって、今から作る作品とはあんまり関係ない

  • テーマとは、読者(PL)への問いかけ

  • 題材、コンセプト、テーマが決まったら、それをログラインにしておく

  • 謎とは、謎であるが、主人公(PC)が謎に気付くと疑問(問いかけ)が生じる

  • 物語上の謎から疑問点が生じた場合は答えがある。テーマは何を正解とするか難しく、答えは個人それぞれによって違う

  • テーマとTRPGシナリオは干渉してしまう

◆題材、コンセプト、モチーフ、そしてテーマ

テーマで検索すると、どんな所でも題材とコンセプトとテーマは違うという話になっています。なので、詳細は他の方々にお任せして、この記事ではシンプルに説明します。

†題材は作品の材料

夏、爽やか、野球、友情、努力、勝利。
という材料で漫画を書こうとしたら暑い甲子園で手に汗握るスポ根野球漫画になりそうですが、こういうのが題材です。
冬、暖かい、野球、友情、努力、勝利。
これだと冬に友達たちが集まってコタツに入りながら野球ゲームする日常漫画になりそうです。
こういうのが題材です。単語一つを設定しても良いですし、〇〇の〇〇とかでも良いです。
例えば、ガンダムはロボットアクションや人間ドラマが題材に含まれてると思われます。

†コンセプトとは、その作品の作者が推す良きところ

夏、爽やか、野球、友情、努力、勝利。
この題材のどこを推すのかでまた違った漫画になりそうです。
例えば、爽やかと野球はどうでしょう。イケメン野球部員たちが爽やかに笑顔で野球を楽しんでいる乙女ゲーム的なイメージが湧いてきます。
努力と勝利をコンセプトにした場合は、熱血顧問の先生によるスパルタ教育によって最強になった弱小校の野球部員たちが才能だけでぬくぬくと勝利している強豪校の野球部員たちと対決して、辛くもギリギリ勝利する昔ながらの野球漫画がイメージされます。
夏と友情をコンセプトにした場合、夏の甲子園で負けてしまったとある野球部の先輩と後輩の友情物語がエモい感じにイメージされます。
題材のどこを推すかがコンセプトです。

†モチーフは作品を作る前の話

モチーフというのは、作品を作ろうとしたキッカケ、動機、着想の部分の話です。
○○という小説を読んで『こういうシナリオを書こう』と思ったとか、NPCが死ぬシナリオを遊んで悲しい思いをしたから『NPCが死にそうで全然死なないシナリオ書こう』とか、そういった場面で「この作品のモチーフは○○っていう小説で……」、「この作品のモチーフはNPCの死が悲しすぎたのが動機にあって……」という時にモチーフという言葉を使います。モチーフは作品を作るときの話ではなく、作品を作ろうとしたスタート時点のお話です。

†テーマとは問いかけ

作品のテーマを決めるとは、作品を通じて読者(PL)に対する問いを決めるということです。テーマを決める上で気を付けないといけないのは、自分なりの答えを出せるテーマにしておかないと、脚本や漫画にまとめることは出来ないということです。
決めたテーマに対して自分なりの答えを決めたとしましょう。それを脚本として映画や漫画に落とし込む場合、そのテーマに対して登場キャラクターがとりあえず答えを出すことになるはずです。キャラクターの中でも主に主人公が答えを出しますが、その答えに共感できるかどうかは読者次第であり、その答えに納得いかない読者も一定数存在してしまうことでしょう。エンタメ作品として考えると、テーマに対しては多数派の答えを主人公に選ばせるというのが一つの手段です。
しかし、そもそも上手いテーマとは、答えは人それぞれによって違ったり、はいかいいえの選択も五分五分に分かれてしまったりするテーマに設定するのが上手いテーマと言われています。
どちらを選ぶか主人公が葛藤するシーンが既に読者の共感を生みますし、出した答えと読者の答えが違った場合でも、白黒甲乙付け難いテーマの場合は「いやぁそっちの選択も確かにあるよね!」と納得出来るような雰囲気になります。出来れば、そういった葛藤を生むほどのテーマを設定したいです。
変化球の展開として、主人公ではなく、そこまで重要ではないと思われたキャラクターがテーマに対する答えをポンと選んでしまう展開もあります。この展開の場合、主人公はその人が選んだ答えに振り回される役になり、結果として主人公は真逆の選択を選ぶことになります。

逆に、誰もが選ぶまでもない問いかけや、余りにも日常的な問いかけをテーマにするのはチープな笑いを読者に提供することになりますし、作品として完成させるのも難易度が上昇します。『きのこたけのこ戦争』をテーマにシリアスなトーンの脚本を書けといわれても無理ですし、テーマにするということは答えを出すということです。きのこたけのこ戦争の答えを出す脚本がどう評価されるかは考えるまでもありません。(きのこたけのこ戦争を題材にするのはOKです)

††TRPGシナリオでのテーマは取り扱いに注意する

テーマを決めるとき、自分なりの答えを出しておくと上記で書いてますが、それは『物語の登場キャラクターがテーマに対して答えを選ぶシーンがある』場合のときのお話です。
TRPGの場合、テーマに対して答えを選ぶのはPCになるでしょう。テーマに対してどのような選択をするかPCが選んで、そのルートに分岐するという流れは、TRPGならではテーマ設定です。
しかし、これが非常に難しい問題を抱えています。PCが1人で遊ぶシナリオならば、そのテーマを選んでどのルートに分岐するのかはそのPCを操作しているPL次第ですが、複数のPCが参加しているシナリオで難しいテーマを提示すると、PCの間で意見が割れる可能性があります。テーマに対してAというルートとBというルートを用意したのに、PC間で意見を統一しないといけないとき、どちらかが妥協するしかありません。難しいテーマであればあるほど、妥協したくないという感情も生まれます。しかし、ゲームシナリオの都合上妥協しなければならないのがほとんどです。テーマに対してAを選びたくないのに、ほかのPCたちがAを選んでいるからBを諦めてAを選ぶ……ここにTRPGシナリオにテーマを設定する難しさがあります。

本当なら、意見が割れた場合用のCルートを用意しておくべきなのでしょうが、PCの意見が割れたままストーリーを進めるということは、つまりいずれ意見の違うPC同士が衝突する可能性もあるということです。
Cルートを用意する場合、『意見が割れてしまって時間が経過し、事態が変化してしまった』ことで答えを保留せざるを得なくなり、ストーリーが強制的に進むルートを用意するのがスマートかもしれません。保留したことで起きた新たな問題や状況に対応していくうちに、PCたちの気持ちにも変化が訪れる展開も良いですし、時間が経過してしまったことで片方の選択肢が強制的に選ばれてしまったという展開も実はアリです。トロッコ問題も分岐のレバーを操作するかどうか保留すると、トロッコは時間によって勝手に進んで5人の人間が轢かれることになりますが、それは5人の人間を見殺しにすることを選んだ訳でも1人の人間を助けることを選んだわけでもなく、選択できなかった結果ということになりますし、この選択できなかった結果をCルートとして用意するのはアリということです。

逆に映画やドラマ、漫画でも最後のエンディング時点で主人公がテーマに対して答えを出さずに終わる場合があります。「俺はこれからも答えを探すために生き続ける……」という独白で終わり、みたいな漫画のことです。
これはこれで『テーマの答えは読者が考えてね』というメッセージと受け取られますが、一定数の人が白黒キッパリハッキリ付けて欲しいと思うかもしれませんので、そういった人たちはもやもやして終わりそうです。
しかし、このタイプのエンディングは複数人が参加するTRPGシナリオにおいてお茶を濁せる手段になりそうです。テーマに対して答えを出すのはエンディング後、という展開もアリかもと覚えておきましょう。

TRPGシナリオで一番やっちゃいけないのが『テーマの答えはこれです』とPCに選択させずにシナリオを進めてしまうことです。
物語のテーマに関する選択肢は一番重要な選択肢です。テーマの問いかけに対して葛藤する部分がテーマというテクニックの『美味しいところ』なのであって、脚本や漫画のようにテーマの答えありきでシナリオのストーリーを作って、PLやPCに葛藤させる間もなくシナリオ都合でテーマの答えが選ばれてしまうと、別の答えを選びたかったPLやPCたちには不満が残るストーリー展開になるでしょう。
逆に、そういう不満が発生するのを逆手にとってしまうという手法もあります。テーマの答えをPCではなく、NPCが勝手に決定してしまう展開です。
この場合、NPCが選んだ答えに共感できるPCはそのNPCにも共感を覚えますが、違う答えのPCだった場合はシナリオに不満を持つのではなくNPCと"衝突(コンフリクト)"する展開に持っていけます。(衝突については過去の記事に書いています)
「どうしてそっちを選んだんだ!」とNPCを糾弾するシーンも用意して、テーマに対する話し合いをするシーンはアリでしょう。PLやPCは、テーマに対して決断したNPCに寄り添うか決別するか選択することになります。それはつまり、間接的にテーマに関わる選択肢を選んでもらっているということです。そうすることで、そこから分岐ルートに派生していく展開はアリかもしれません。

◆テーマの決め方

†テーマを決める手順の例

まず題材の中からテーマに使えそうな単語を見つけます。
夏、爽やか、野球、友情、努力、勝利の中からテーマを設定してみましょう。友情、努力などの概念を問いにするのは定番ですが、テーマにする場合はもう少し具体性が必要かもしれません。
例えば『友情とは』というテーマを設定したところで、その答えを言葉として想像できなければテーマとして具体性が不足しています。
そして、テーマに具体性を追加していく過程で新たな題材やコンセプトが浮かび上がるのは自然の流れです。

例えば『友情とは』を具体的なテーマにするために『友人をどこまで肯定するべきか』というテーマを設定しようとすると、題材に肯定が追加出来そうです。夏、爽やか、野球、友情、努力、勝利に肯定が追加されて、なおかつ『友人をどこまで肯定するべきか』というテーマなので、コンセプトも肯定と友情にしてみましょう。
思い浮かぶイメージは、『とある野球部員の友人が体を壊してしまいそうなほど猛特訓しているのを、止めるか止めないべきか悩む主人公』がイメージされました。題材の爽やか要素は皆無になってしまいましたので、いっそ題材から爽やかを抜いて書き始めることになりそうです。

別のパターンを考えてみましょう。『友情とは』を具体的なテーマにするために『野球と親友どちらを選ぶか』をテーマにしてみましょう。『とある野球選手が選手生命をかけた一戦を控えている中、親友が事故によって危篤状態になってしまい、今すぐお見舞いにいかなければ手遅れになってしまうかもしれない』というイメージが浮かびました。こうなってくると、題材の夏、爽やか、野球、友情、努力、勝利のうち、いくつかを考え直して別の題材に変更したり、題材を追加してみる必要がありそうですし、コンセプトを決める場合も友情プラスあともう一つぐらいをコンセプトにしたい気持ちがあります。題材を追加するなら、死と意志って感じでしょうか。親友は自分が事故ってしまったことで野球選手が試合を諦めて自分のお見舞いに来てしまうことに対してどういった感情を覚えるでしょうか。嬉しく思う方の脚本と悲しく思う方の脚本と怒りを覚える方の脚本と、これだけでも更に3パターンの展開から選べそうですし、その結果どうなるのかも作者次第です。

†題材、コンセプト、テーマを決める順番は順不同

このように、テーマを決めて題材が増えたり減ったりすることは自然ですし、テーマが決まってからコンセプトが決まるのも自然です。テーマやコンセプトが決まってからは、自由に題材を追加するのが難しくなってしまう場合があります。逆に、題材ばかり大量に思いついたところで、それらの題材からコンセプトやテーマを決めるのが難しくなってしまう場合もあります。なので、題材、コンセプト、テーマをそれぞれ少しずつ追加する手法がおすすめです。

題材から始める場合は5個ぐらいのキーワードを設定して、そこからコンセプトとテーマを決めて、題材の数を調整していくといいでしょう。

コンセプトから始める場合はもっと直感的に楽しい物語をイメージしやすいかもしれません。まず、自分にとって最高に面白い、最高にカッコいい、最高にかわいいシーンなどをイメージしてみます。つまり自分の性癖に合う最強のワンシーンを思い浮かべて、そのシーンの中から題材やテーマを抽出していくという方法です。

テーマから決めるのは手堅い手法のイメージがありますが、実は結構難易度が高い手法です。例えば『生と死』をテーマにしようと考えたとき、上記に書いたように具体性を追加していくことになります。どんどん具体的な内容に変更していく過程で、題材がどんどんイメージされてくるはずです。その後、集まった題材からコンセプトを選ぶという手順になりそうです。

†テーマとコンセプトを合わせるかどうかは選択

テーマとコンセプトを絡ませるかどうかも選択です。コンセプトはあくまで"ストーリーを通じて楽しんでほしいキーワード"であり、テーマは"ストーリーを通じて考えて欲しい問いかけ"です。
ガンダムと新世紀エヴァンゲリオンは『ロボット』と『人間ドラマ』が題材になっていて、更にどちらのアニメも『リアルな人間ドラマ』がコンセプトでありながら、それぞれの作品のテーマは全然違いそうですし、どちらのアニメも『ロボット』が題材であることがテーマと関係してるわけでもなさそうです。
ロボットはあくまで戦うための兵器として登場していて、こちらはこちらでロボット造形とかアクションとかの面白さを提供する舞台装置としての効果を担っています。

このように、題材もコンセプトも同じなのにテーマが違うだけで全然違う作品になりえるということですし、テーマが同じでも題材とコンセプトが違えばまたガラリと違う作品になります。

†題材(とコンセプト)は物語の構成要素

題材は物語の構成要素という以上の意味はありません。
ロボットアニメだからロボット関係のテーマを扱わないといけないわけでもなければ、警察モノ、探偵モノだからって『罪と罰』がテーマに関係している必要もありません。テーマと題材は分けて考えても構いません。

なので、題材はテーマやコンセプトを考える前に、自由なアイディアでもって考えてみましょう。そして、いろいろな組み合わせを考えて、物語をイメージしていきましょう。

†意外な組み合わせの題材+題材をコンセプトにした作品がウケる

これはどこでも目にするお話です。意外な題材を組み合わせた作品が人気を得てきたということも頭に入れておきましょう。
『艦隊+美少女』が艦これ、『日本刀+イケメン』が刀剣乱舞、『テニス+必殺技』がテニスの王子様、『化け物+育てる』がポケットモンスター、『アクションゲームはクリアするのが楽しい+高難易度過ぎてクリア出来ないアクションゲーム』がソウルライクと呼ばれる死にゲー、『異性と恋愛する+その異性に見合う主人公を育てる』がときめきメモリアル、『キャラクターが成長していくのがRPGの楽しみ+遊べば遊ぶほど発狂して死んでロストしていくRPG』がクトゥルフ神話TRPG……。
このように、かけ離れていたり、矛盾している題材同士が組み合わさった作品が一線を画す存在として受け入れられてきました。

この考え方は、TRPGシナリオの題材を考える際にも有効だと思われます。面白い意外な組み合わせを見つけてみましょう。斬新な組み合わせはそれだけで注目されます。

◆それらをひっくるめてログラインと呼ぶ

†ログラインとは

ログラインという言葉は脚本用語であり、
"ブレイク・スナイダー著「SAVE THE CATの法則」"
という脚本技術書でも重要な要素として取り上げられています。

ログラインとは、作品の見どころや要点を3行程度で表した文章です。この3行の中に『題材とコンセプトとテーマ』をシンプルにまとめます。
3行で収まらない場合は題材やテーマの詰め込み過ぎですし、出来上がったログラインをつまらなそうと自分自身で感じてしまったら題材とテーマを決め直す必要があります。

†ログラインを決めるときの注意点(重要)

ちなみに、出来上がったログラインを見て既視感を感じるのは自然なことです。この世には既に大量の物語が存在していますので、3行に物語を凝縮すると、既存の物語と大して変わらないように見えてしまいます。
ですが、一字一句全てパクろうと思って書かない限りは、細かい部分で作者の腕前や発想の差、表現されるシーンのニュアンスに違いが出るのが文章というものです。そして、そういった差が個性ということになります。

パクりと言われるのが心配でログラインから先が一生完成しないという人は、未視聴の映画のあらすじからログラインを推測し、その推測したログラインにそってストーリーを推測してから映画を観て下さい。推測通りになったとしても、『自分だったらこういうシーン挿入するな』とか『自分だったらこのシーンを省くな』とか思うはずですし、推測通りにならないこともあるはずです。
素人がプロの脚本にケチを付けるなと言われそうですが、映画はかなり勉強になります。

自分の作品のログラインがつまらなそうと自分自身で感じてしまった時、一旦自分の好きな他作品をログラインに変換してみてください。結局出来上がったログラインを見ただけで「名作だっ!」とはならないはずです。
面白いログラインとは、「ふーん、面白くなりそう」程度の面白さが感じられれば十分です。なぜなら、たった3行の物語で人を感動させるのは脚本のプロにも出来ないからです。
短歌や俳句のような媒体のわびさびを楽しむのとは違って、脚本は何千文字、何万文字を使って人を感動させることが出来れば良いのであって、ログラインで感動させるのは無理な話です。

さらにTRPGシナリオのログラインで人を感動させるのはもっと無理です。ログラインで感動させようと努力するより、シナリオ本編を面白いものにしようとする努力の方が何倍も効果的です。なぜなら、TRPGシナリオは脚本的な要素にさらにプラスしてゲーム的要素も含めてPLに楽しんでもらおうとするのが本分だからです。ログラインはあくまで脚本の部分を簡潔にまとめたものなので、ログラインを決めて置くことだけが重要であり、完全完璧なログラインを作ろうと頑張るのは止めましょう。

†ログライン(コンセプトとテーマ)が作品の軸を固定する

ログラインを決めるのがどうして重要なのか。それはストーリーの軸をブレずに書き切るための指標として丁度良いからです。テーマとコンセプト、そしてそれを簡潔にまとめたログライン、これらをいつでも思い出せる状態で脚本を書くことによって、登場キャラクターの思想や発言がテーマからブレてしまったり、面白いと思って追加したシーンが不必要なことに気付いたり、逆に足りないシーンに気付けたりします。

TRPGシナリオを書く上で、不必要なシーンに気付けるかどうかは途方もなく最重要です。ただでさえプレイ時間が冗長になりがちなTRPGは、PLの集中力を維持させるのが永遠の課題となります。シナリオ作者としては、PLの没入感を維持したいです。しかし、没入し続けることによる疲労は集中の妨げになって、集中力が欠けた結果、没入感が失われます。
集中して欲しいシーンに集中できるようにするためには、適度な休憩が大事です。不必要なシーンを描写するぐらいなら、適度なタイミングで休憩するようにシナリオに書いておきましょう。

さらに、近年のTRPGシナリオは凝ったストーリーとPC同士の掛け合いでPLに感動して欲しいということで、ストーリー描写とPC同士の掛け合いがプレイ時間の多くを占めるシナリオが増えました。つまり、『ストーリー描写とPC同士の掛け合い』がコンセプトのシナリオが増えたということですが、そういうコンセプトのシナリオなら、なおさら不必要なシーンより『PC同士の掛け合い』を増やすべきです。

コンセプトに沿ったシーンとテーマに沿ったシーン、緊張と緩和のコントロールのシーンといった脚本機能を考えたシーン配分に、ゲーム的な情報管理と技能成功と失敗、それに伴うリスクとリターンの設定などなど、TRPGシナリオは様々なことに気を使うため作者の脳みそはフル回転しています。
そんな状況の中では物語の芯の軸にまで常に注意するのは難しいので、ログラインを決めてシナリオと見比べられるようにしておくと楽が出来ます。

◆話は変わって、謎とテーマの話

本来なら謎は謎としてひとつの記事で取り扱うべきなんでしょうが、テーマの話をする上で謎のお話もしておかなければならないと思って、テーマに関わる部分のお話をまとめておきます。かなり重要な部分です。

†謎とは、答えが判明するもの

どんなジャンルのストーリーでも、主人公たちは様々な謎に出会います。全知全能の神が主人公の作品は聖書などといった宗教本ぐらいです。
そして、主人公が謎に出会うと、その謎について疑問が生じます。その答えを見つけるために行動するストーリーだったり、謎は謎のままで一旦保留されたりしますが、主人公が謎に出会ったら、それはいずれ解明されて答えが判明します。なんなら、謎が謎のまま終わるのはあまり良くないとされています。意図的に謎が解明されないストーリーの場合も、謎が解明されない理由が必ず描写されて終わることになるでしょう。

つまり、謎は疑問となって解明されるまでがセットであり、解明されるということは答えがあるということです。

†テーマとは、答えを選びだすもの

主人公はテーマに出会った時、意識的か無意識かに関わらずテーマの問いに答えを出します。テーマの答えを出せないとき、主人公はテーマに対して葛藤します。自分なりの答えを選ぶために様々な経験をしようとすることも、様々な人に相談することもあります。テーマに対して出した答えが間違いだったとして、後で別の答えを選ぶこともあります。

つまり、テーマは自分に合った答えを探し出して選ぶまでがセットであり、選ぶということは答えが複数あるということです。

†TRPGシナリオはシステム上、謎とテーマを混同しがち

TRPGシナリオで謎に出会った時、PCはそれを判別するために良く調べようとするでしょう。もしくはよく考えることになるでしょう。持っている技能で判定して、成功して分かることもあるかもしれません。
TRPGシナリオでテーマに出会った時、PCがそれに対してどの答えを選ぶか考えることになるでしょう。他のPCやNPCに相談することもあるでしょう。そして、葛藤の末に取捨選択することになります。どちらかを選ぶということは、どちらかを選ばなかったということでもあります。片方を捨てるという選択をしたということです。

謎とテーマは結果どちらも答えを出すので混同してしまいがちですが、テーマの答えを選ぶために技能判定するのはNGです。
テーマとは複数の答えの中からPCが選択する、という形でPLと関わってきます。しかし、答えを選べるかどうか技能判定すると、選びたい答えがあるのに技能判定に失敗して選べなかったということになります。
テーマに関わる選択の答えを決めて選択した後はいくらでも技能判定しても良いですが、テーマに関わる選択のところだけは技能判定にしてはいけません。テーマに関わる部分でも、技能判定があった方がリアリティが増すかもしれませんが、失敗した結果も成功した結果も面白い展開に出来るという自信がある場合に留めましょう。
テーマ選択の結果が技能失敗で終わるということは、ログラインとテーマに合わせて調整してきたシーンの数々の集大成であるはずのテーマ選択シーンが技能失敗で台無しになってしまうということです。今まで遊んできたシナリオのシーンの意味がダイス結果一つで完全に失われてしまうのを楽しめるPLは居ないと思いますので、気を付けましょう。

†TRPGシナリオに、物語のテーマというテクニックは邪魔になっている説

そもそもの話、テーマという考え方をTRPGシナリオに導入するかどうかすらも作者の考え方次第です。
上記の理由があって、最終局面のテーマ選択シーンに技能判定をするのはナンセンスですが、ダイス結果を尊重するのもまたTRPGという遊び方の一つではあると思いますので、そうなってくると逆にテーマという脚本テクニックそのものがTRPGのゲーム的面白さを邪魔するシステムになってしまうという見方も出来ます。ダイス結果で結末が決定するのもまたTRPGですよね。

妥協案というか、折衷案として、テーマ設定の方かTRPGのダイスゲームの部分の方かをある程度抑えて、両方の良いとこ取りを目指す考え方もあると思います。

◆まとめ

題材、コンセプト、テーマについて。
そして、TRPGシナリオにテーマを持たせることの注意点についてまとめてみました。
最近はストーリー重視のシナリオが増えてきているなかで、脚本技術のテーマ設定は間違いなく重要なテクニックだと思いますが、TRPGシナリオに導入することでTRPGのダイス遊びの部分と干渉して変な感じになるかもしれません。このバランス調整を頑張るのか、どちらかをある程度妥協するのか、そもそもテーマ性を持たせるというテクニックをシナリオに導入しないという考え方もアリです。
物語である以上、必ずテーマが含まれてなければならないというのはあくまで脚本の話です。TRPGシナリオにテーマ性を持たせるかどうか作者次第であり、テーマを持たせるかどうか選べるというのはある意味気軽にシナリオ制作に挑めるということでもあると思います。

テーマ設定の部分をどうするかはおいといて、題材とコンセプトの考え方はシナリオ制作においてかなり助かる考え方だと思います。面白い題材の組み合わせ、どの題材をコンセプトに打ち出すのか、それを考えることが面白いシナリオ作りの近道だと思います。

この記事が誰かのシナリオ制作の一助になれば幸いです。


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