清濁併せ呑む

煮込み料理には灰汁が出る。
通常、灰汁は取るものだ。
それは味を濁らせてしまうから。
でもたまに灰汁すらも旨味に感じることがある。
それはラーメンに感じることがあって、灰汁を取っていない豚骨を炊いたスープを飲むと、とても動物的な匂いと旨味を感じることがあるのだ。
確かにスープの灰汁を取れば見た目も美しく、味に濁りもない。
鼻につく動物臭も抑えられる。
とてもお上品なスープが仕上がる。
でも旨味ってのはそれだけじゃない。
動物的で下品な匂いも食欲をそそることがある。
ジャンクフードなんかもその類だ。
不健康の代名詞と揶揄されるが、あれだって時たま無性に食べたくなることがある。
ジャンクとは動物的である。
それは人でも同じ気がする。
ただの善人は何だか薄っぺらい。
そこに少しの後ろめたい悪があるからこそ、その人の旨味は増す。
「悪」は「灰汁」ということだ。
清廉潔白、そもそも後ろめたいことがない奴なんていないだろう。
必ずや、一つ二つの秘密があるはずだ。
そういう陰を持っているから人は魅力を増すのだと思う。
善人かと思いきや、悪人。
悪人かと思いきや、善人。
人間には相反する根っこが混在していて、それが人間臭くて面白い。
そんな人間を炊き上げたら、さぞかし動物臭いスープが出来上がるだろうなぁ。
そんな人間こそが、本当に旨いのである。

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