水車と男

その村には水車がありました。
おかげで村人たちは水には困りません。
いつでも新鮮な水を飲むことができました。
その水車を作ったのは一人の男でした。
村人たちは彼に感謝をしました。
それまでは遠くまで水を汲みに行っていたからです。
それが水車が出来てからは、そんな苦労をしなくて済んだからです。
ある日、水車が雷に打たれて使えなくなってしまいました。
明日からはまた遠くまで水を汲みに行かねばなりません。
村人たちは愕然としました。
村人たちは水車を作ってくれた男に修理を頼もうとしました。
でも男は明日、この村を出ていくと言います。
その水車が壊れたこととは関係がありません。
元々男は明日に村を出る予定だったのです。
すると一人の村人が声を上げました。
「村人全員が困っているのに、なぜ直してくれないんだ!村を出るのはいつだってできるだろう!自分一人と村人全員、どっちが大事なんだ!」
するとその場にいた村人たちはそれに賛同しました。
「そうだ!そうだ!直してくれよ!俺たちが困るんだ!」
水車を作った男は驚きました。
自分がせっかく善意で作った水車なのに。
別に自分は感謝をされたくて作ったわけではない。
それで便利になって私もみんなも楽になれば幸せだと思って作っただけ。
それに壊れたのは自分のせいじゃない。
なのになぜ村人たちは自分を責めるのだ。
彼は後足で砂をかけられたと憤った。
男は次の日、予定通り村を出た。
村人たちがまだ寝静まっているうちに。
村人たちはその日から毎日水を汲みに行っている。
誰も水車の作り方を知らない。
物は見ていても誰一人作ることはできなかった。
今までの幸せは全てあの男のおかげだったのだ。
でも村人たちはそんなことは考えない。
ただ淡々と毎日水を汲みに行っては、遠い、しんどいと文句を言うのみだった。

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ごめんなさいね〜サポートなんかしていただいちゃって〜。恐縮だわぁ〜。