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結局メイクで何がしたいの?(前編)

他のライターの記事を読んでいて思い出したが、私はメイクするという行為に対し一般的とは言えない意見や思想を持っている。

というのも、メイクした自分の顔も悪くないと思えるまでかなりの時間がかかったからだ。
今でもメイクは楽しんでいても何故するのか自分でもよくわからない。

なので人に読んでもらえるくらいにしっかりと言語化、文章化すれば何かが見えるのではないかと思い綴ることにした。


初めてメイクをする

私が初めてメイクをしたのは小学1年生くらいの時で、ダンス教室に通っていた為本番のステージがある時化粧をしていた。

初めは親がしていたがいつしか自分でやるようになった。道具は全て母の物。舞台メイクなので派手な色を使った方が目立つ。衣装に合わせて紫や青、緑のアイシャドウ、色の濃いリップを好んで使った。
アイブローやファンデーションには手を出さず、ポイントメイクだけをした。
塗りたくればそれでいいという小学生らしい程度のものだった。

しかし2年に1回ある大きな発表会では教室のスタッフにたっぷりと時間をかけ、本格的なメイクを施してもらった。
化粧水を塗りベースを整える。ファッション、アイブロー、ハイライトやシェーディング。
遠くから見てもはっきりするような大胆且つ繊細なアイライン、鮮やかなアイシャドウのグラデーション、まつ毛をしっかりとあげる。
最後に真紅のリップを塗れば完成だ。

してもらっている時に鏡を見ることはない。
終わってからどれどれ、と鏡を除いてみる。

それが面白かった。

当然だが良い意味で別人になっていて、自分を見ていて美しいとさえ思えた。非常に満足した。

普段の練習や普通の本番はあまり心踊るものが無かったが、特別な衣装を着てライトが眩しい大きなステージで踊るのは高揚するものだった。

メイクを辞める

中学生になった私は部活動に専念するため8年ほど通っていたダンス教室を辞めた。
辞める時は部活動(ダンスではない部)の方が興味があり、そこまで寂しい、辞めたくないという感情はなかった。

学校に行き部活をして帰る。そんな日々が続いた。ヘアスタイルに凝ったりスカートを短くしたりするものがいたが、私は自分の外見にそこまで興味がなかった。自分の脚は太いんだろうか、長いんだろうか、そんなことは人並み程度に思ったが、自分の顔に関して大きな悩みはなかった。

化粧のこともすっかり忘れていた。


こっそりメイクをするクラスメイト

再び化粧のことが頭に戻って来たのは高校3年生の時だった。文化祭の出し物で劇をすることになり、当日の本番前にクラスメイトがアイラインを引き始めたのだ。

私に役という役はなく、舞台に登場するのは合計10秒ほどで衣装やセリフはなかった。その子は主役ではないがセリフがある程度ある役で、アイラインを引く動機は理解できた。

「これくらいならバレないよね?」
彼女は私にそう言った。というのも私の学校は校則が厳しく化粧はもちろん禁止されていた。文化祭というのもしていい理由にはならない。

「私ちゃんは化粧とか興味ないの?」
「うーん、無いかな」
「休みの日とか友達と遊ぶ時にしない?私はするよ」
「うーん...。しないなあ」

それっきり高校時代にメイクの話を誰かとすることはなかった。
私の頭からメイクは再び消えて行った。


メイクが正面に立ちはだかる

高校を卒業した私は服飾系の専門学校に進学した。
受験勉強はしていたが大学には興味が持てず、自分の好きなことを考えた結果だった。
高校時代の部活動は異常に厳しくハードなもので、休みが年7日ほどしかなかった。その数少ない休日を費やしたのが洋服を眺めることだった。
理由は今でもわからないがショーウィンドウやマネキンに飾られた洋服を見ているとどうしようもなく楽しかった。
ファッション誌にも夢中になり小遣いで少しずつ買うようになった。

そんな動機で入学することにしたが入学式の前、私はある大きな不安に陥った。


メイクをしなければハブられるのでは?

ファッションの専門学校だ。メイクが好きな人間が集まってくるに決まっている。
慌てて私は大昔ダンスをしていたころを思い出し、していく用のをやってみようとした。

しかしここで大きな問題が発生した。

舞台メイクはわかるが日常メイクがわからないのだ。

そもそもメイクとは私にとって舞台上で顔を目立たせるためのものだった。マナーや自分をよく見せるためのものではない。
そもそもメイクで自分をよく見せたいという欲求が理解できなかった。
私は自分の外見にさほど興味がなかった。

どうしていいかわからなかった。

相談できる相手はおらずこっそりとキャンメイクのアイシャドウとリップだけを買い、やってるかわからないレベルの濃さでして入学式に参加することにした。


メイクをする日の当日

度胸なしな私は結局顔はなにもせず入学式に出席した。洋服と靴は前から決めていたもので黒いワンピースに銀色のパンプスを合わせた。

入学式の会場に入る。
そこは言うまでもなくそういう空間だった。

私は周りを見渡しメイクをしている人間のおよその比率を弾き出した。

ざっと8割。

10割でないことに心からほっとした。
式後のクラスの集まりでも新しいクラスメイト達は私を外物扱いすることなく、至って普通に接してくれた。

私はその環境に甘えた。いつまで経ってもメイクをしなかった。したいと思わなかった。自分をよく見せたい願望がなかった。

切り出すタイミングを逃していたがメイクをした方が服のコーディネートと顔がバラバラにならず良くなることは始めからわかっていた。
でもそれは他人や課題に対する考えで自分はその限りではなかった。

洋服すらも自分を飾る要素ではなかった。他人が着飾っていたり服単体で見るのが好きなだけで身につけることに価値を感じることができないのだ。洒落た洋服を着る理由は着るという事が正しい使用法だったからに過ぎない。

だから必然的に顔というアイデンティティの塊を創意工夫するメイクを自分にすることに興味が持てなかった。

私の学科は服のデザイン、型紙、縫製等が専門だったのでメイクは学習対象外だった。
こうして洋服に対する知識量、技術、センス、意欲、メイクに対するそれらの差はどんどん開いていった。

しかし本当の問題はこれからだった。

就職活動とメイク

薄々思っていたというかとっくの前からわかっていた方も多いと思うが本当の問題とは就活だ。

アパレル系の就活は一般的なリクルートスーツで参加するものとは違いほぼ全て私服で参加する。

就活にメイクは必須だというのにアパレル業界だからなおさらだ。
就活が始まってから事の重大さに気づいた愚かな私は今までに無いレベルの不安に襲われた。

無知で気が動転した私はプロに頼った。百貨店のコスメカウンターを訪れ、BAさんに施しを受けた。
美術や洋裁など美的センスに問題のない私はやり方を教えてもらうと最低レベルのそれは直ぐにできるようになった。

こうして私はあたふたと就活メイク問題をなんとかクリアし最低レベルのメイクを会得した。



ここから技術と意欲を手に入れるのは別の話。

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https://note.com/notewatashi/n/nddb696665c86




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