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どこにも越したくない

例えばある朝、ピンポンが鳴って
ドアを開けると神様がいたとする。

実物を見たことはないけど
やけに神々しいからきっと神様だろう。

神は言う。
「お前は今からどこにでも住める。
思い煩うことなど何もない。
さて、どこに住みたいかね」

突然の問いに逡巡する私。
どこでもいいって、これは詐欺か、詐欺か。

そして数分の思案の末、
私はきっとこう答えるだろう。
「あ…い、今のままでいいです…」


ということで、noteのコンテスト欄に
#どこでも住めるとしたら
というお題を見かけて、自分でも考えてみた。

「もし、場所の制約がなくどこにでも住めるとしたら、どこに住んでどんな暮らしをしてみたいか。」(引用:#どこでも住めるとしたら

なんの制約もないというなら
海外でも良いということか。

例えば観光地として人気の
ハワイはどうだろう。

憧れのワイキキビーチに毎日行き放題だし
パンケーキもハンバーガーも食べ放題だ。

あるいは「世界幸福度ランキング」で
常にトップ圏内のフィンランドはどうか。

夢の北欧暮らし。
ムーミンやサンタクロースとの
ハッピーライフが待っているかもしれない。

いや駄目だ、
どの国に行こうと
途中でリタイアしそうだ。

どこであっても
言語の壁にぶつかって砕けそうだし、
文化が違いすぎて
カルチャーショック死しそう。

幸福度と言ったってそれは
その国に生まれ育ってこその感覚だと思う。

いくら彼らが幸せだからって
私がその輪に入って幸せを感じられるとは
限らないのだ。

何はともあれ、
様々な壁を乗り越えられるような
アグレッシブさとポジティブシンキングを
持ち合わせておらず、

かつ、衛生大国ニッポンにいてもなお
日々胃の不調と闘っている私にとって
外国暮らしはかなりハードルが高そうだ。

断念、海外。


では国内ではどうか。

そうだな、そういえば一度訪れた
福岡はよかった。

藤井風のライブの3次抽選が
奇跡的に当たって弾丸で行った福岡。

初来福なのにどことなく親近感があり、
博多駅前はなんだか
馴染みのある札幌駅のような雰囲気があって
とても過ごしやすかった。

うどんはコシがないのが最高に好みだったし、
滞在時間がない中とにかく買い込んだ
お土産は、もれなくどれも美味しかった。

だが、あれは11月だった。

北海道の涼夏でさえ
暑い暑いと言っているのに
九州の8月なんて想像しただけで蒸発しそう。
暑いのはちょっとムリです。ゴメンナサイ。

たしかに、北海道の冬も厳しい。

体感としては春・夏・秋・冬・冬
というくらい冬の割合が多いし、
氷点下13度で猛吹雪に見舞われた時は

「もうこんな町いやや!来世は東京の
イケメン男子にしてくださーい!!」


と叫びそうにもなるが、

もう何十年も住んで
ある程度慣れた部分もある。

夏・冬どちらも厳しいなら
慣れている方がいい。

仕方ない、道内で探すか。

札幌なんてどうだろうか。
季節感はだいたい今と同じだし、
なんなら今住んでいるこの街より
ずっと気候も安定している。

札幌に住めばスタバがあるし
マックもミスドもケンタッキーもある。

「今日、ケンタッキーにしない?」と
CMで煽られて悶々とすることもない。


加えて空港も近いし、ライブ会場も近い。

こんな、イベントごとに朝イチで出発して、
深夜にヘトヘトで帰って来なくたって
”グッズを買いに行って、一旦家に帰る”
というあの羨ましいやり方ができるのだ。

限定グッズの列にも並べる。これはいい。

ということは、真駒内なんかどうだろうか。
札幌にしては自然が多いし、
よくライブが開催される
真駒内セキスイハイムアイスアリーナも近い。


あ、ダメだ。
あそこクマ出るんだ。

却下。

無念、札幌。

というように、散々考えてはみたが
結局制限があろうとなかろうと
住みたいところなどなかった。


つまるところ私は、
刺激を求めていないのだ。

住むところとはすなわち
生活をするところ。
日々を過ごしていくところ。

そこは穏やかであってほしい。
魅力的でなくていい。

いや、よく考えてみれば
今いるここは
十分に魅力的なのだ。

北海道。水は美味しいし、魚は新鮮、
米も野菜も地元のものが手に入る。

さらにこの街は
過疎がすぎるゆえ、建物が何もなくて
見晴らしが最高にいいし、

人がいなさすぎて
日々混乱に巻き込まれることもない。
あとは親戚がいるし、家族もいる。

今いる場所が最高だ!
できることならずっとここにいたい…!


あ、でも、
と考える。


おばあちゃん家の近く、いいかもしれない。
あそこならウチより天気が良いし
スーパーもコンビニも近い。

うん、それは良さそうだ。
だいたいの用事は歩いて行ける。
そうしよう、そこにしよう。

というわけで、結論
どこにでも住めるなら私は

数キロ先の、祖父母の家らへんに住みたい。

ひどい結論だ。
今すぐ引っ越せという話だ。





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