マガジンのカバー画像

#映画 #ドラマ 記事まとめ

242
テレビや動画配信サービスのドラマ・映画に関する記事をまとめていきます。
運営しているクリエイター

2021年3月の記事一覧

【映画】あのこは貴族/岨手由貴子

タイトル:あのこは貴族 監督:岨手由貴子  東京で生まれ暮らしていると色々な出自の人々に出会う。僕はといえば東京の城南地区の大田区で育ち、東京の中で進学し今の仕事に至るまで暮らしてきた。映画の中のキャラクターで考えれば、どれにも当てはまらないのだけれど、生活水準は美紀に一番近いのかもしれない。僕の家庭は間違いなく裕福な家庭ではないし、劇中冒頭の会食シーンを見ていると息がつまりそうになる。   東京の友人関係で言えば、松濤出身の人もいるし、神戸から慶応大に進学した友人もい

【映画】ミナリ Minari/リー・アイザック・チョン

タイトル:ミナリ Minari 監督:リー・アイザック・チョン あぁ、また聖書引用ものか…。 韓国からアメリカに移民した家族の感動的なドラマと思いきや、キリスト教と聖書引用が根底にある。ジェイコブ、デヴィッドという名前と、ポールが十字架を背負って歩いているシーンを観れば一目瞭然なのだけど…(パンフレットには一切書かれていない。何故だ?)。 何故主人公たちが韓国からの移民で、韓国語を話す人々を描いた映画がアメリカ、特にロットントマトなどで支持されているのかが観る前までは謎

【映画】ノマドランド Nomadland/クロエ・ジャオ

タイトル:ノマドランド Nomadland 2020年 監督:クロエ・ジャオ アメリカの原風景をイメージする時、所謂ロードムービーがぱっと思い浮かぶ。アントニオーニの「砂丘」やヴェンダースの「パリ・テキサス」、最近だとアンドリュー・ヘイの「荒野にて」と言った映画もある。アメリカの荒野の風景が思い浮かぶ映画監督はアメリカ国外の人が多い印象がある。アメリカの監督でももちろんそういった風景を取り上げる事もあるのだけれど、当たり前な風景として捉えられてしまっているのか結構さらっ

絶望と希望の物語。映画『ノマドランド』が描いた孤独と、新しい「連帯」の形について。

【『ノマドランド』/クロエ・ジャオ監督】 今年のアカデミー賞を席巻すること間違いなし映画『ノマドランド』は、なぜ、2021年の今、これほどまでに注目を集める超重要作品となったのか。 結論から言ってしまえば、この作品は、「アメリカ映画」、より具体的に言えば、「自由の国=アメリカのリアルを映し出す映画」の系譜における最新型であり、同時に頂点に君臨する一本だからだ。 原作は、気鋭のジャーナリスト・ジェシカ・ブルーダーによる『ノマド 漂流する高齢労働者たち』。この十数年の間に新

映画『あのこは貴族』が描いた「分断と連帯」、そして「抑圧と解放」について。

【『あのこは貴族』/岨手由貴子監督】 長きにわたる映画史において、時代を超えて継承されてきた「シスターフッド」の精神。それぞれの年代において、女性同士の連帯を描く傑作が次々と生まれてきた。 そして2020年代を迎えた今、劇的なパラダイムシフトに合わせて、ついにこのジャンルが一つの美しい結実を見せ始めている。 昨年には、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』という一つの金字塔が打ち立てられたばかりであるが、この日本からも、新たな「シスターフッド」の大傑作が誕生し

『ミナリ』と、アメリカン・ドリームの残骸

これは誰の夢なのか1980年代、レーガン政権下のアメリカ。カリフォルニア州に暮らしていた韓国人一家が、農業での成功を目指してアーカンソー州*1 へ移り住んでくる場面から、映画『ミナリ』(2020)は始まります。カリフォルニア州ではひよこの雄雌鑑別を職業としていた夫婦ですが、独立してひと山あてたいと願う夫(スティーヴン・ユアン)は移住を決意。アーカンソー州の美しい自然がとらえられたオープニングのショットに胸が躍りつつも、これが「夫の目線から見た風景」であるようにも感じられます。

『ノマドランド』と、包摂を止めた社会

セーフティーネットからこぼれ落ちた人びと 「ノマド(流浪民)って、昔の開拓者に似てるよね。アメリカの伝統だと思う」と声をかける主人公の妹。刺々しい会話の雰囲気を和らげるために気を遣ってかけた言葉のはずですが、主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)の苛立った表情からは、妹の発言はあきらかに余計だったことが伺えます。キャンピングカーで暮らすほかない状況を、周囲が「放浪癖」「自由を求める精神」等と都合よく解釈する、その手前勝手さと無理解。60代になっても屋根のある家に住めない

【連載第2回】『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』大研究 「星条旗を背負う者」

ドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。アメコミライターの傭兵ペンギン氏に、このドラマを解説していただくのが本コラムです。連載第2回目の今回は、エピソード2「星条旗を背負う者」でほのめかされた今後の展開について解説してもらいましょう! ※この記事ではドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第2話の内容に触れています。未視聴の方はご注意ください。 文:傭兵ペンギン​ 役者は揃った!『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の第2話「星条旗を背負う者」。ついに

【連載第1回】『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』大研究

3月19日から配信がスタートしたドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。アメコミライターの傭兵ペンギン氏に、このドラマを解説していただくのが本コラムです。連載第1回目の今回は、エピソード1「新たなる世界秩序」に登場した注目キャラクターを紹介! ※この記事ではドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第1話の内容に触れています。未視聴の方はご注意ください。 文:傭兵ペンギン​ 『エンドゲーム』後の世界で生きるキャラクターたち『ファルコン&ウィンター・ソルジ

注目映画『あの夜、マイアミで』を観てほしい理由

Amazon Primeで配信中『あの夜、マイアミで』(原題One Night in Miami)は、ブラックカルチャーのレジェンド4名がマイアミのホテルに集い語り合った、奇跡のような一夜を描いた戯曲の映画化作品だ。実際に1964年2月、カシアス・クレイ(のちのモハメド・アリ)の世界王者獲得を祝うために4名が集まったという史実に着想を得て、会話の内容はすべて創作されている。本年度アカデミー賞では助演男優賞、脚色賞にノミネートを果たしており、その他にも数々の映画賞で高く評価され

ピクサー映画の些細なところを検証する

アニメ映画の中で描かれていることが事実か、現実と照らして正確か、なんてことはあまり求められていないでしょうね。 しかし、些細なことに思えたり観客にとってはど~でもよさそうなことが、ストーリーには大きく影響することがあります。そんな細部や微妙なニュアンスを掘り下げる探偵のような映画好きたちのオンライン集団があります。「Movie Details/映画の細部」は、2017年にできてから220万人の会員を擁する投稿サイトにまで成長しました。 そして今回、彼らは人気ファンの多いピ

祝・ゴールデン・グローブ受賞。声優・内山昂輝とネトフリ編集部が熱く語る「クイーンズ・ギャンビット」の魅力(後編)

「クイーンズ・ギャンビット」のゴールデン・グローブ受賞を祝して、人気声優・内山昂輝さんを迎え、本作の魅力を深掘りしていく座談会。チェスのルールを知らなくても楽しめる分かりやすさと、続きが気になる鮮やかなストーリーについて熱く語り合った前編はこちら。 後編では、キャラクターやシーンごとに、それぞれの視点で感じた魅力や受け取ったメッセージを語り合います。 内山昂輝:声優として活躍中。代表作に「機動戦士ガンダムUC」「DEVILMAN crybaby」「ハイキュー!!」「呪術廻

祝・ゴールデン・グローブ受賞。声優・内山昂輝とネトフリ編集部が熱く語る「クイーンズ・ギャンビット」の魅力(前編)

2月28日(現地時間)にバーチャル開催された第78回ゴールデン・グローブ賞でミニシリーズ/TV映画の作品賞、主演女優賞(アニャ・テイラー=ジョイ)を受賞したNetflixオリジナルシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」。世界63か国でトップに輝き、1シーズンで完結するリミテッドシリーズとして、ネトフリ配信後4週(28日間)で6,200万世帯が再生。さらにチェスブームを巻き起こし社会現象にまで発展。一体なぜ、こんなにも世界中の人々が熱狂しているのでしょうか。 受賞を祝し、本作の

【連載第0回】『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』大研究

3月19日から配信がスタートする、マーベル・スタジオによるオリジナルドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。このドラマと連動して、アメコミを得意分野とするライター/翻訳者の傭兵ペンギン氏の連載コラムがスタートしました。MCUファンに向けて、アメコミマニアならではの視点で元ネタを解説していただいたり、今後の展開を予測したりしていただきます! 文:傭兵ペンギン​ 『ワンダヴィジョン』の次はどうなる? ついに来週からDisney+で配信の始まるドラマ『ファルコン&