伊藤聡

会社員兼ライター。書評、映画評、美容記事、ジェンダー論を中心に、いろいろ書いております…

伊藤聡

会社員兼ライター。書評、映画評、美容記事、ジェンダー論を中心に、いろいろ書いております。| Twitter : https://twitter.com/campintheair | メール so.ito.so@gmail.com

マガジン

  • 雑記

    特にこれといったテーマもなく書いた雑文です

  • 映画の記録

    見た映画に関する記録です

  • 読書の記録

    読んだ本の感想をまとめたものです

  • スキンケア本『電父』(平凡社)のすべて

    2023年2月24日発売の書籍『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)について知ってもらうための記事です

  • 音楽の記録

    好きな音楽について書いたものです

最近の記事

「男らしさ」の定義

「(有害な)男らしさ」とは 支配的な立場であろうとする 主導権を握ろうとする 性行為に積極的である 競争を好み、勝ち負けにこだわる 対人関係において攻撃的(抑圧的、脅迫的)である 権力、富を得ることを第一の目的とする 感情を抑制する(喜怒哀楽のうち、怒以外を表出しない) 同性愛を嫌悪する トランスジェンダー、中性的な人に対して敵意を向ける 女性を蔑視する 女性蔑視を、男性同士の絆を強めるための手段として使用する 男性に対して従順でない女性を罰しようとす

    • 『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』と、使ってしまった禁断の切り札

      ※作品の内容や結末に触れています。 社会現象化した作品に決着をつける前作『ジョーカー』(2019)は、全世界で10億ドルを超える興行収入を記録した大ヒット作品である。劇中で描かれる鬱屈した男性像や、ホアキン・フェニックスの熱演によって社会現象化したが、同時に、主人公ジョーカーを真似た模倣犯が現実に犯罪を起こすなど、マイナス面も注目された話題作であった。こうした経緯を受けて作られた続編は、なんとミュージカルにして法廷劇。まるで映画作家みずからが、制御できないほどに過剰な影響力

      • 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と、地獄めぐりの旅

        重厚な画づくりで描くアメリカの分断『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(原題:CIVIL WAR)は、映画プロダクションA24最大の制作費をかけたとされる話題作です。予告編の時点で、かなり重厚な画づくりであると予想はつきましたが、実際に見てみると相当な迫力でした。まずはショットの強さ、画の力で観客を圧倒するタイプの作品だったと思います。米世論の分断をもっとも如実に感じさせる大統領選を間近に控え、非常にタイムリーな作品であったのではないでしょうか。分断を煽る政治家が支持される状

        • 『Cloud クラウド』と、答え合わせのできない映画

          転売屋から読み解く日本社会(?)なにしろ変わった映画である。思いもよらない展開の連続で先が読めない。この作品が現代日本の空気をとらえているのはよくわかるし、劇中の登場人物やできごとが何らかの暗喩となっていることも予想できる。しかし、具体的に何のメタファーなのか、どういったテーマなのかと考えると、理解し切れない部分が残るのだ。映画を見ると、つい「答え合わせ」をしたくなる私のような人間を、そうかんたんに解釈させないぞと突き放すような部分が、『Cloud クラウド』にはある。そこが

        「男らしさ」の定義

        マガジン

        • 雑記
          120本
        • 映画の記録
          146本
        • 読書の記録
          67本
        • スキンケア本『電父』(平凡社)のすべて
          25本
        • 音楽の記録
          12本
        • ハイラル王国、旅のしおり
          3本

        記事

          デヴィッド・M・バス『有害な男性のふるまい』(草思社)

          見知らぬ女性に声をかける男性先日、井の頭線に乗った際に、電車内で話している若い男女を見かけた。ふたりの会話が耳に入ってきたが、男性は、駅の近くで面識のない女性に声をかけ、どうにか連絡先を聞こうと、女性が乗った電車のなかまで着いてきてしまっていたことがわかった。男性は、女性のインスタを教えてもらおうと粘っていて、女性はひきつった笑顔でそれを断っていたが、男性はなかなかあきらめない。近くにいた私は、恐怖でいたたまれなくなった。とても見ていられない。「電車のなかまで着いてくる人って

          デヴィッド・M・バス『有害な男性のふるまい』(草思社)

          『ナミビアの砂漠』と、でたらめだが正しい怒り

          映画のフォーマットでしかできない表現映画らしい映画を見た、という気がした。映画のフォーマットでしかできない表現をしていると感じたし、せりふではなく画や音で伝わる場面が多いのもすばらしい。とはいえ劇的にストーリーが変化するわけではなく、主人公と恋人の関係性や、勤務先などの比較的地味な描写が続くのだが、最後までどうにも目が離せなかった。なぜこのように緊張感が持続するのだろうか。作品冒頭、最近ではまず見かけないスタンダードサイズの画面に驚き、複数の音声が同じボリュームで飛び込んでく

          『ナミビアの砂漠』と、でたらめだが正しい怒り

          manipulate を日本語でなんと言う?

          適切な訳語がない海外の映画を見ていて気がつくのは、会話のなかで manipulate(人を操る)や exploit(搾取する)といった単語がよく出てくることだ。今日、映画館で見た『ビートルジュース ビートルジュース』でも、高校生の登場人物がごく当たり前に使っていた。こうした言葉が出るたびに、日本と海外の差を感じてしまう。海外の文化圏では、他人を自分の思い通りに動かすために、物事を大げさに表現したり、脅したり、混乱させたりといった手段で操ろうとするのは倫理的に間違っているという

          manipulate を日本語でなんと言う?

          ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学』(エトセトラブックス)

          フェミニズムの初期衝動自信に満ちていて、堂々とした本だった。フェミニズムという思想の可能性を理解し、すべての人を幸福にする有意義な考え方だと確信している人でなければ書けない本だと思った。フェミニズムへの全幅の信頼がまぶしく輝いていて、読んでいて圧倒されてしまう。まだ十代であった著者がフェミニズムに衝撃を受け、自分の進んで行く方向を照らしてくれるものだと感じた、その興奮と初期衝動が伝わってくるようである。読みながら、私が高校時代にニュー・ウェイヴと出会い、この音楽ジャンルには自

          ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学』(エトセトラブックス)

          『ヒットマン』と、「男らしさ」を持て余した主人公

          グレン・パウエルの勢いリチャード・リンクレイター監督、グレン・パウエル主演のクライムコメディが『ヒットマン』です。『トップガン・マーヴェリック』(2022)以降ぐっと勢いが増し、一気に人気俳優の座に躍り出たグレン・パウエル。「彼でスター・ウォーズを撮ってほしい」「007にはチャラすぎるか」「ガイ・リッチーとは相性よさそうだぞ」など、キャスティング妄想がひろがるスター俳優になりました。本作も好調なようで、グレン・パウエル効果もあってか劇場はほぼ満員。本作は、監督と主演俳優の組み

          『ヒットマン』と、「男らしさ」を持て余した主人公

          『ラストマイル』と、令和の一億総プロレタリア時代

          ※こちらの記事は映画の内容に触れています。 当初の予想を裏切る強いテーマ性大ヒット中の話題作『ラストマイル』である。私は会社の同僚に勧められて見たのだが、この経緯からしていかにもヒット作らしいと思う。当初は、予告編で描かれていた「物流倉庫から出荷される貨物に、爆弾が仕掛けられていた」というミステリーじかけの展開から、わかりやすいエンタメ作品をイメージしていた。しかし実際に見てみると、より重要なモチーフとして、日本の劣悪な雇用形態や労働環境、過労死、低賃金労働、貧困など、シリ

          『ラストマイル』と、令和の一億総プロレタリア時代

          『エイリアン:ロムルス』と、2024年のエンタメのかたち

          バランスよく配置されたドラマとエンタメ『エイリアン:ロムルス』は、『エイリアン』(1979)から始まるフランチャイズの最新作です。監督は、『ドント・ブリーズ』(2016)などで知られるフェデ・アルバレス。「エイリアン」シリーズは正直なところ玉石混淆で、なぜかプレデターと戦ってみたりと、よくわからない展開もあったのですが、本作に関しては非常によく練られた、エキサイティングな構成になっていました。人間ドラマとエンタメ要素がバランスよく配置され、息つく暇もありません。主人公のサバイ

          『エイリアン:ロムルス』と、2024年のエンタメのかたち

          クリステン・R・ゴドシー『エブリデイ・ユートピア』(河出書房新社)

          新しい世界を想像しようファック家父長制。その熱い思いで書かれた『エブリデイ・ユートピア』を読み、私の心は燃えた。「家父長制は歴史的な構築物だ。始まりがあるのだから、終わりは来る」。その力強いメッセージを胸に、私も生きていこうと思った。男性中心主義の根幹をなす家父長制。この悪しき制度を終わらせ、真に脱却するには、新しい世界を想像することが必要である。これまでに、世界のあらゆる場所で、ユートピア的世界を作ろうとする試みはなされてきた。それらを紹介しつつ、家父長制ではない社会はいか

          クリステン・R・ゴドシー『エブリデイ・ユートピア』(河出書房新社)

          『ACIDE/アシッド』と、なんか揉めちゃうお父さん

          予告編にあった「酸性雨で人が溶けてしまう」というモチーフが気になって、見に行きました。どこの国の映画かもよくわかっていませんでしたが、フランス映画でした。たしかに、なぜアシッドの綴りが「ACIDE」なのか、よくわからなかったんですよね。雨雲が悪意を持って追いかけてくるようなイメージに興味を持った人が多かったらしく、劇場はほぼ満員。映画は、身体に触れると死んでしまう酸性雨に追いかけられるといったホラー的なエンタメ方向に振ってはおらず、人間関係や社会問題を描くドラマとして構成され

          『ACIDE/アシッド』と、なんか揉めちゃうお父さん

          倫理的に間違っているが、爽快である

          そのできごとが起こったのは私が中学3年の冬、おそらく2月くらいではなかったかと思う。学年全員が体育館に集まって、卒業式の練習をおこなっていた。私は第2次ベビーブームの世代で、中学はひと学年につき10組あり、各クラスに43人、合計で430人がその体育館に集まっていた。少子化のいまでは信じられない人数である。ごく少数の教師で、どうやってこんな大人数の生徒を管理していたのだろうか。正直なところ、卒業式なんて適当にやればいいのにと思うのだが、やたらに綿密なリハーサルを行うしきたりがあ

          倫理的に間違っているが、爽快である

          『インサイド・ヘッド2』と、自我の解体工事

          https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2 子ども向け精神分析映画2015年公開『インサイド・ヘッド』の続編である本作は、愛らしいルックを受け継ぎつつも、徹底した「精神分析映画」として深みのある内容になっていた。エンタメと人間の心理(精神分析)が結合して、子どもにも伝わりやすいストーリーとして構成させる視点の鮮やかさが光る。1作目を見たときにも思ったが、よくこんな映画の企画を通したものだと感心してしまった。ある少女の思春期を描いてお

          『インサイド・ヘッド2』と、自我の解体工事

          8月の後半

          子どもの頃からずっと感じているのだが、8月の後半は妙にさみしい。何十回経験しても、8月の終わりには何ともいえない喪失感があるのだ。夏が終わるのが悲しくて元気が出ない。暑い暑いと文句を言いながらも、いちばん好きな季節はやはり夏なのである。「涼しくなるのが嬉しい」という人もいるが、私はずっと暑いままでいてほしい。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)の劇中で、セカンドインパクトという大災害が原因で季節が喪失し、一年中夏になっているという設定を知ったとき、ちょっとうらやましか

          8月の後半