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223.「日本はおかしい、著作権管理団体がひとつしかない。これでは日本のアーティストは育たない…」


1.「廃虚の写真をまねされた」これは盗作だ!!


 
最近、廃虚の写真が静かなブームを呼んでいる。
なぜだろう? 
そこには人の懐かしさがあるのか? 
それとも郷愁を感じるのか?
哀れさを想うのか?
それとも歴史の重みを懐かしむのか?…。


写真対話集 問いかける風景 丸田 祥三(Shozo Maruta)


廃墟漂流 ペーパーバック – 2001/9/1 英語版 小林 伸一郎 (写真)



朽ち果てた建物、鉄道の廃線などの写真「廃虚」をテーマとして、写真作品を撮り続け知られている丸田祥三さんが、「自分の作品をまねされ、著作権を侵害された」として、写真家の小林伸一郎さんを相手に写真集の差し止めや損害賠償として約600万円の請求を求める訴えを東京地裁に起こした。

訴えられた小林さんの代理人弁護士は、読売・東京新聞紙上で、
「他人の写真を模写して写真を創作したことはなく、著作権侵害と主張されるのは極めて遺憾だ。裁判の場できちんと反論していきたい」とコメントを出した。

丸田さんは1992年以降、廃線や廃虚の写真を個展や写真集で発表し、1994年に日本写真協会新人賞を受賞し、廃虚写真では先駆け的存在と言われている。

訴状によると、丸田さんは、自身の作品である栃木県の足尾銅山付近の建物、群馬県の旧丸山変電所、静岡県の大仁金山付近の建物など5点について、同じ被写体、同じ構図の写真が1998年から昨年にかけて出版された小林さんの写真集に掲載されたと主張。

丸山さんは「長い時間かけて文献などを調べて被写体を探し出し、現地に何度も足を運んで構図や撮影時期を選んでおり、高い創造性がある」という。

訴えられた小林さんは後発だが、1998年以降から廃虚をテーマとする写真を次々と発表していた。

小林さんにも言い分はある。
「写真とは撮影状況や色の使い方など様々な要素により独創性が生みだされるもの。丸田氏の主張は、先に撮影した被写体を他の写真家は撮影してはならないというのに等しく、断固として争う」とコメントを出している。

また、丸田さんは「平成20年8月に質問書を出したが、小林さんは何の説明責任を果たしてこなかった。類似点があまりにも多く、自分の方がまねをしたと思われ、不愉快だ」訴えている。



この争いは一体どうなるのだろう?

問題はまねをしたかどうかではなく、盗作かどうかという点。

つまり、これが本当に著作権侵害なのかどうかということだ。
確かに、同じ場所、同じ位置、同じ構図、同じ光源、色彩、イメージや体験などが争点になり、被写体や場所探しには苦労、労力が伴うとも思うが、これだけ情報が発達している時代、既に存在している情報を独占できるものではない。

従って、同じような場所で写真撮影したからといってクレームをつけることはむずかしい。
丸山さん、小林さんの写真集を見て撮影に行く人が増えるかもしれない。
これから大勢の人たちが写真撮影して写真集を出すかもしれない。
だから、場所と被写体に関して独占することは不可能と考えられる。

問題は著作権でいうところの盗作(複写、または複写に近いものかどうか)かどうかという点であり、ただ単に同じ場所で写真を撮ったからといって、即、著作権侵害になるとは限らない。

この写真は説明材料の引用として使用しているが、全体のイメージ、構図を含めて、まったく別の著作物であることは間違いない。あとは判決によって最終判断が下されるだろう。



これは、西瓜事件

 


2.「JASRAC(ジャスラック)」私的独占で公正取引委員会から排除命令を受ける


 
2009年(平成21年)2月27日。公正取引委員会はジャスラックに対して独占法違反(私的独占)で排除措置命令を出した。これは、テレビなどで放送される音楽の著作権使用料をめぐり、ジャスラックが他業者の新規参入を阻んでいるとしたもの。

ジャスラックがNHKや民放各局との間で、放送事業収入の1・5%を徴収し、著作権を管理するすべての局の放送や放送用録音を一括して認める「包括契約」を交わしていることに対して大幅な見直しを迫った。

この「包括契約」とは、ジャスラックが管理する楽曲を利用者が契約上の一定額を支払うことにより、その楽曲を好きなだけ使えるというもの。
そのため、放送局が別の業者と新たな契約を結ぶことはコスト増につながってしまう。

こうした契約形態のため、公正取引委員会は、ジャスラックが新規参入の業者を阻害していると指摘。

ジャスラックに対して契約形態の解消を命じる方針を明らかにした。

ジャスラック側は記者会見を開き「事実認定、法令適用とも誤っている」として審判請求する方針を明らかにした。

しかし、このまま放置しておけば他の著作権管理業者や民間著作権管理業者の新規参入はままならず、新規事業者の管理する曲が放送でほとんど利用されないことになってしまう。

公正取引委員会の目指していることは、放送局などがより安価に楽曲を使用でき、同時に作曲者などの著作権者が、より多くの使用料を得られる環境作り。また音楽著作権事業者が自由に新規参入でき、一つの団体の独占産業ではなく、広く自由な競争が生まれることを望んでいる。

今回の排除措置命令は、ジャスラックの包括契約によって利便性、公正性に欠ける恐れがあることを重視した措置といえる。

また、ジャスラックは公益法人であり、著作権管理の委託を受ける公的性の強い組織でもあるため、その責任は民間企業より重い。

この問題は、公正取引委員会が独自に調査していく過程で、新規参入した民間著作権団体が排除されたというケースが発覚したことから始まった。

この会社は港区の「イーライセンス」で、同社は2006年10月に大手レコード会社から人気歌手の大塚愛さんや倖田くみさんなど、アーティストの一部の曲について管理を委託された。
しかし、番組放送ではほとんどが流されず、結局、2007年1月にレコード会社から契約を解除されてしまった。

2001年に誰もが自由に著作権の管理事業が行える「著作権管理事業法」という法律が生まれ、音楽の分野での新規参入が民間でもNPOでもできるようになったが、現実はなかなか厳しい世界といえる。10数年前、ある人気アーティストがマスコミにこう発言した。

「日本はおかしい、著作権管理団体がひとつしかない。これでは日本のアーティストは育たない…」

「著作者自ら自分の音楽を管理する団体を選べないなんて不思議だ。
これではその団体のいいなりになってしまう。自分たちの音楽の主張もできなくなってしまう。音楽の世界はもっと自由競争でいいはずなのに…」

こうした想いをきっかけとして、「著作権等管理事業法 」 が生まれたはずだが…。



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※注 この著作権noteは1999年からの事件を取り上げ、2000年、2001年と取り上げ続け、現在は2002年に突入。今後はさらに2003年から2020年~2022年に向けて膨大な作業を続けています。その理由は、すべての事件やトラブルは過去の事実、過去の判例を元に裁判が行われているからです。そのため、過去の事件と現在を同時進行しながら比較していただければ幸いでございます。時代はどんどんとネットの普及と同時に様変わりしていますが、著作権や肖像権、プライバシー権、個人情報なども基本的なことは変わらないまでも判例を元に少しずつ変化していることがわかります。
これらがnoteのクリエイターさんたちの何かしらの参考資料になればと願いつつまとめ続けているものです。また、同時に全国の都道府県、市町村の広報機関、各種関係団体、ボランティア、NPО団体等にお役に立つことも著作権協会の使命としてまとめ続けているものです。ぜひ、ご理解と応援をよろしくお願い申し上げます。
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