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26年間生きてて1番ショックだったこと~前編~

プロローグ

「…..ピロン♪」

20××年3月下旬、私の携帯に1通のメッセージが届いた。

『優也が家に居ないんだ。お前、知らないか?』

この頃まともに定時で帰れなかった私は、疲労が溜まりまくっていた。

だからこそ、貴重な休日。
誰にも邪魔されたくなかった。

なのに、、こんなメッセージを送ってきやがって。

優也というのは、私の元彼であり
メッセージを送って来たのは、元彼の友人Aだ。

このメッセージを見た瞬間、私は大きな溜め息をついた。

「またか・・・・・・」

そう。

元彼はかなりのメンヘラ体質(訳:心に闇を抱えた人、精神的に不安定な人、自傷行為をする人)だ。

私と別れてから何年も経つ今でも、かなり未練が残っているらしい。

私は、あなたのことが大嫌いなのに…..。

彼は私と別れた直後、別れてから数日後、別れてから数週間後・そして別れてから数ヶ月の4回も、毎度おなじ''ある行動''を起こしている。

言わなくも分かる人もいるだろう。薬の大量摂取。つまりOD。

彼は精神的に追い込まれると自宅でODをし、
意識朦朧としながら近所の公園まで歩き、ベンチに横たわり力尽きる。

そしてたまたま前を通った「全く関係の無いひと」の通報により、彼は救急車で搬送される。

「全く関係の無いひと」に迷惑をかけるなと、あれほど言ったのに….。

正直、この流れはもう慣れてしまった。

だから今回も友人Aからメッセージが来たとき、「きっと公園にいるよ」っとだけ返信し、私は静かに携帯を閉じた。

彼からすれば、「私と寄りを戻したいが戻せない」「自分はもう必要がない」という孤独感から、何度も何度もODをするようになったそうだ。

元カノであるならODを辞めるよう注意しなければいけないのだが、私が何を言っても彼はODを辞めようとしなかった。

だが今回は、ただのODでは無かったようだ。

昏睡状態へ

いつもなら、

「救急車で病院に搬送される→胃洗浄→医師からの指導を受ける→自宅待機」

っというのがいつもの流れであるが、今回はそういかなかった。

なぜなら、彼が目を覚まさなかったから。

医師いわく、過度の薬物摂取により臓器障害を起こしたようだ。

医師たちが目を覚まさせようとするのだが
彼の身体がそれを拒むようようだ。

だから彼が目を覚ますまでは、医者としてはどうすることも出来ない

そう言われた私は、友人A、そして彼の家族と共に、彼が起きるのをひたすら待った。

3日間の眠りから覚めたが・・・

長い長い眠りから、ようやく彼は目を開けた。

それは、彼が昏睡状態になってから3日後のことだった。

病室に居た私は、彼に「おはよう」と声をかけた。

しかし彼から返ってきた言葉は、

「俺なんでここにいるの?え?お前だれ?」

どうやら長い昏睡状態が原因で、
彼の脳は「解離性健忘」という記憶障害が残ってしまったようだ。

解離性健忘:心的外傷やストレスによって引き起こされる健忘(記憶障害)のこと。自分にとって重要な情報が思い出せなくなる。

医師に聞くと、彼の頭のなかに「私」がいないようだ。
もちろん付き合っていたことも、別れたことも知らないそうだ。

そのことを聞いた私は、せめて私の存在だけでも思い出させようと必死に声をかけた。

「優也。私だよ?一緒に水族館行ったよ!ほら!写真見て!」

しかし彼の口からは、
「だれ?・・・・」

ただそれだけだった。

それでも諦めなかった私は、水族館で買ったお揃いのキーホルダーや、記念日に贈り合った手紙を見せた。

すると彼の口から、

「あ、、、え、?菜緒?」

私から名前を言ってないのに、彼は私の名前を告げてくれた。
そして、付き合っている所までは思い出してくれた。

しかし肝心な部分、別れたことはどうも思い出せないらしい。

隣に居た医師は、そっと私を廊下まで呼び、こう伝えてきた。

「彼にとって菜緒さんと別れた事がかなりショックだったようで、今むりに思い出させようとすると、却って逆効果になり、次に何を起こすのか分からりません。だから菜緒さんお願いがあります。【優也くんと付き合っている状態でお話してください。】」

私は驚いた。

''付き合っている状態でお話''・・・?別れているのに?

正直意味が分からなかった。

でもまたODをして昏睡状態になって、もしものことがあったらと考えたら、今は医師が言った通りにするしかない。

そう思った。

だから私は、別れているけれど優也と付き合っている状態を保ち続けた。

偽りの気持ちで付き合う

まるで付き合いたてのカップルのように、私は彼と連絡をしつづけた。

私と連絡している彼は、とても楽しそうだった。

この楽しさを、彼は友人たちにも伝えていたそうだ。

彼の携帯に残っている私との2ショットを友人たちに見せ、

「俺の彼女可愛くない?」
「なぁ見て。菜緒可愛くない!?」
「ほんま可愛い~~」

と毎日毎日言っていたらしい。

この様子を見た友人たちは、

「あれは優也ではない。まるで別人だ。」と私に伝えてきた。

そして友人たちは、ボソッとこう言った。

「菜緒と優也がまた付き合ってくれたら、優也も….☆◎×△▼。」

その言葉を聞いて、わたしはすごくモヤモヤした。

だって、私はもう彼のことは好きではない。むしろ嫌い、大嫌い。

なのに「また付き合ってくれたら」?冗談じゃない。

でも医師から言われたことは守らなければならなかったので
私は偽りの気持ちを持ったまま、彼と連絡をとりつづけた。

復縁を願う周りVS戻りたくない私

友人たちから
「復縁しないの?」
「優也こんなにも楽しそうだよ?」
「菜緒も優也と戻りたいって思わない?」

と言われる回数が増え、ついには優也の母親からも言われるようになった。

「菜緒ちゃんが優也と戻ってくれたら、あの子はどれだけ嬉しいのかな。いやあ~~あの子の笑顔がまた見れるなんて夢のようや」

もう1回いう。私はもう彼のことを好きではない。

周りから復縁を願われても、復縁する気は全くない。ゼロだ。

そこで私は決めた。

このまま彼と連絡し続けていても、周りからの押しに負けてしまう。

だから正直に言おう。

私は友人Aに連絡した。

【ごめん。このまま優也と連絡するのムリだわ。いくら優也のメンタルが安定しているからと言って、このまま私と話し続けていたら、私のメンタルが崩壊してしまうわ。もう関わりたくない。医師にもそう伝える。】

これで良かったんだ。
周りからあーだこーだ言われるのは予測できてる。
でもこれで良かったんだ。

・・・・・。

数時間後、返信がきた。

【あっそう。お前ってやっぱそういう奴だったんだな。優也が楽しそうに話しているの見て俺たちはめっちゃ嬉しかったのに。もうええ。俺から優也に全て話してくる。】

え?優也に話す?

ダメ!今の優也に全て話しちゃったら、何をするか分からない。

私は友人Aの行動を止めようとしたが、すでに遅かった。

もう優也の耳に入ってしまったようだ。

友人Aが優也に本当のことを伝えてから数時間後
優也から私にメッセージが届いた。

嫌な予感がした。

おそるおそるメッセージを開いた。

【菜緒の気持ちは分かった。俺が一人で楽しんでいたんだな。さようなら】

・・・・。

待って。

病室の窓から・・・

このメッセージが届いた瞬間、私はすぐさま病院へ駆けつけた。

だがもう遅かった。

ベッドに横たわった優也の周りには、泣き叫ぶ家族、友人たち。
彼らを静かに見つめる医師と看護師。

私も病室へ入ろうとした瞬間、泣き叫ぶ家族と友人たちは
私にこう告げてきた。

【お前のせいだ。】
【お前があんな発言しなければ優也はこんなことになっていなかった】
【お前が居なくなれ】
【優也を返せ】

反抗しようとしたが、何も言えなかった。

同時に私の心臓がバクバクして呼吸がしにくくなった。
そのまま倒れてもおかしくなかった。

でもココで倒れたら元も子もない、立ち上がれ私。

ふらついた状態の私は、「この場に居られない・・」っと、病室を背にし、廊下へ向かった。

すると後ろから、優也の母親が付いて来て、私にこう言った。

【あなたって本当最低な人ね】

もう、言いたければ言え。どうせ私は最低な人だよ。

息子の命を亡くさせた元カノだよ。

自分を責め続ける

自分の発言で、この世から大人一人を亡くしてしまった。

そうやって自分を責め続けた。

誰がなんと言おうと、全部わたしが悪いよ。

私のせいだ。私のせいだ。私のせいで人を亡くした。

こう思い続け、気づいたら外では桜が咲いていた。

あぁ。もう春か。

おわりに

このお話の約1割は私の想像で作られていますが、ほとんどが実話です。
(一部、登場人物の名前は架空とさせていただいております。)

この話には、まだ続きがあります。

よければ「後編」へお進みください。

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