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寄生生物~生き抜くために~

どんな生物も、全てを一人で完結させることは極めて難しい。
虫も魚も人間も、自分を産んだ親がおり、生きるために他の生物を利用して栄養を摂り、生き残るために数多くの争いもしてきた。

しかし、体を動かしたり、考えたり、食事をしたりといつも当たり前のように一人でも行っていることがほとんどである。虫も魚も、危機が迫ると誰かに言われたわけでもなく自分の力で逃げたりできる。
だが、そんな当たり前のことができなくても生き続ける手段がある。「寄生」だ。

寄生と聞くとあまり良いイメージがないが、その通りで、寄生は寄生する側にしかメリットがなく、される側は大きな害を受け続けることになる。
実際に今、我々はインフルエンザやコロナなどのウイルスによる「寄生」を恐れながら生きている。

生物における寄生とはどのようなものだろう。
寄生する際、搾取するターゲット、宿主が必要になる。その宿主を利用しながら生きる生き物を「寄生生物」という。

宿主の生き物は、自分が寄生されていると気づいていないことが多い、宿主が死んでしまうと、寄生生物自身も生きていけないからだ。
なので、寄生生物の多くは宿主に察せられぬよう、小さくなったり、宿主に合わせて自分自身を変化させて対応している。

自分が生きる為に、他者を一方的に利用し続ける。

それは、自分の力だけでは全く生きていけないとてもか弱くとても恐ろしい存在でもある。

イソガニに寄生するフクロムシ

私達のよく知るカニは産卵の時、卵を腹部で抱えるように持ち運び、孵化するまで卵を守る。
しかし、写真のカニが抱えている黄色い物体は、卵ではない。カニに寄生する「フクロムシ」という寄生虫である。

フクロムシは、生き残る為の最低限の機能しか備わっていない。
寄生するまでは自力で浮遊し、宿主を探す。宿主に寄生した後は生殖器以外をほぼ全て退化させ、あたかもカニの卵かのように成長し、栄養分を常に吸収しらがら生きる。
この時、寄生に気づくことはできない。寄生するカニが雄だった場合、雌だと洗脳させて、自らの世話をさせる。

カニは、寄生される際フクロムシに繁殖機能を破壊されてしまう。栄養分を無駄なくかつ効率よく吸収するためだ。
カニは、もう子孫を残すことが出来ないことを知らずに、自分の子供と思いながらフクロムシを守り続ける。
そして、フクロムシは宿主となったカニが力尽きるまで、繁殖を続ける。

生き残るためならどんな手段を使ってでも、そんなメッセージを「寄生」という生き方から感じられる。

では、利用している相手が逆に自分を利用し始めたらどうなるのか。お互いがお互いを必要としている状況、これは、「共生」となる。

これには、互いに利益を得ている関係でなければならない。そして、相手の害となってはいけない。
無意識ではあるが、私達人間は約100兆個と言われる腸内細菌と、共生している。

大きなイソギンチャクに包まれるカクレクマノミ

ディズニーの映画でニモという名前で有名な「カクレクマノミ」は共生の手本のような生き物だ。

カクレクマノミは縄張り意識が高く、イソギンチャクを隠れ家として生きている。
イソギンチャクのひらひらとした部分は触手で、そこに毒があり、触手に触れた魚を麻痺させ捕食するため、イソギンチャクの周りには外敵となる生き物が寄り付かない。

カクレクマノミはその毒の影響を受けない粘膜を身に着けているため、イソギンチャクに食べられることがない。

一見、カクレクマノミが、イソギンチャクを利用してるようにも見えるが、この関係の場合、後者にもメリットがある。

イソギンチャクは自ら動くことが出来ない。その為、餌を食べれるかどうかは運になる。
カクレクマノミはイソギンチャクを縄張りとし、そこに餌を運んでくる。
イソギンチャクはそれを食べることができる。
共存することで効率的に餌にありつけるのだ。

異なる性質をもった生物同士でも、互いの性質を理解しあうことで、生き残っている。

人と人との繋がりが、自然の繋がりを知るきっかけになる。

人間社会も、様々な人が一つの会社や企業に勤務して仕事をしている。
自分の知らない誰かが生産した商品を誰かが運び、またそれを誰かが店に仕入れそれを購入している。これも共生の流れであろう。

我が国では共生社会という言葉がある。
互いを理解し、障害者や高齢者などの一人での生活が困難な人を支え合い、一緒に働けるような社会を目指している取り組みである。

最も積極的に取り組むべき課題ともいわれているほど、共生は私達には重要なのだ。

しかしそれら全てが本当に共生しているのだろうか。

互いに利益を得ておらず、片方が「そう感じている」だけではないのか、
集団では必要でも、個人では害だったりしたのなら、それは共生と呼べるだろうか。

寄生は、共生の中にある手段の一つ。ネットやニュースで流れている事件やトラブルは、「共生」を謳った「寄生」が引き起こしているのではないだろうか。

どの生物においても共生と寄生の関係がある。私達人間が最適な環境は、果たしてどちらが近いのだろうか。


(イソガニ エビ目 モクズガニ科)
(フクロムシ  顎脚綱 根頭上目)
(カクレクマノミ スズキ目 スズメダイ科)

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