高収量農業こそ環境に良い?

こんにちは、こんばんわ。

雇われ有機農家の Notari です。

今回は2020年4月に発表された論文The global cropland-sparing potential of high-yield farming(高収量農業の世界的な農地節約の可能性)を紹介します。

人口増加による環境破壊

世界の人口は歴史上かつてないほど増加しています。

人口が増えれば食糧が必要で、農地を広げなければなりません。

食糧のために森林が農地に変われば、森にいた動植物は住み家を失います。

地球の全陸地に占める割合は森林が31%、農地が36%と言われています。

世界の農地面積を半分にする?

この論文は、小麦、米、トウモロコシなど16種の主食農作物を最適な農地に割り当て、集約的かつ合理的に栽培するシナリオを提案しています。

シナリオによると、肥料の最適化、土地転換の削減(土地に適した作物を栽培)、低投入農業の排斥、マメ科カバークロップの普及、輪作・灌漑地などの改善で収穫量は現在の2倍以上になる可能性があると指摘しています。

単純な話で、収穫量が2倍になれば農地を半分にできます。

日本で農業をしていると収穫量を2倍にするなんて無理だ!と思うかもしれませんが、世界的にみれば技術的に未発達な農業が多いのは事実です。

農地を森に返す!

農地が半分になったらどうなるのか?

使われなくなった農地は森に返ります。

メリットは3つあります。(抜粋)

①農地減少→地球温暖化防止

農地からの温室効果ガスの排出が減ります。

特に田んぼからはCO₂より25倍の温室効果があるメタン(CH₄)の排出を半分に抑えることができます。

②大気中CO₂の削減

論文のシナリオでは農地の半分が森に返ることで最大24.2Pgの炭素隔離ポテンシャルがあるとしています。

これは産業革命以降に人間が排出した炭素の10%にも及びます。

③生物多様性の保護

熱帯雨林は生物多様性にとって重要な地域です。ホットスポットとも呼ばれ、沢山の昆虫や植物が生息しています。

ホットスポットにあたる農地を森に返すことで多様性が回復します。

結論
できるだけ少ない農地で合理的かつ効率的に食糧を作って、あとの農地は森に返した方がよい!ということです。

僕が気になったポイント

有機農業をしている僕にとっては心が痛む論文でした。(笑)

この論文のシナリオでは化学肥料と有機肥料を使い、収穫量を最大化させます。マメ科の作物以外は作物要求量の120%を窒素とリンの施肥量としています。この量はたとえ化学肥料でも環境負荷が少ないです。また、日本のような先進国では過剰施肥が、後進国では施肥不足が懸念されています。施肥量を空間的に均一化すれば、現在と同じ肥料量で収穫量を2倍にできそうです。

一般的に、慣行農業(化学肥料を使う農業)と比べると収穫量は有機農業で2~3割、自然栽培で5割減です。

有機農業や自然栽培がいくら自然に優しくても、森には代えがたいです。

収穫量ベースでは有機農業や自然栽培は環境に良くないことになります。

あ~心が痛い。。。

有機農業でも高い収穫量を得る技術が必要ですね。

それか、慣行農家に転身するか(笑)

しかし現状、作物要求量に元づく施肥をどのくらいの人が実践していうでしょうか。土壌・有機肥料の分析により施肥設計をして、作物が最も養分を吸収する時期を見極めて施肥を行う必要があります。

大概の農家さんは経験や勘で施肥していると思います。その結果、日本の農地は今後50年はリンの施肥をしなくても作物が育つような過剰施肥の現状があります。

また、日本で耕作放棄地が増える一方で、人口増加が著しい国ではさらに農地が必要とされています。そんな国から安いからといって食料を輸入していいのか?とも思います。当たり前のことですが、輸入品に頼らず日本で最も効率良く育つ食糧を食べようと思いました。

今後はこのような施肥や食糧問題も発信していこうと思います。


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Notari


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