「ターゲットの定義」を見直す。
年齢✕性別や顧客ランクは「ターゲット」でありません。
クライアントとの打合せで、「ターゲットはどんな人ですか?」と聞くと「40代女性で新規のお客様」とか、「シニア層に絞って商品開発しています」などとよく言われます。
「あー、ここが浅いからうまくいかないんだな〜」と感じます。
見出しにもありますが、年齢✕性別や顧客ランクは「ターゲット」でありません。
厳密に言うとターゲットになりえません。
「消費者の多様化」という言葉をよく聞きますが、
まさにその通りで、同じ40代でも経済状況、家族状況、趣味嗜好が多様化しています。
30年前くらいまでは、みんなが同じテレビ番組を見て、同じものが流行り、同じゲームをして、同じ漫画を読み、同じ映画を見て、だいたい同じ年齢で結婚して、だいたい同じ年収でと、みんなが均一化されていました。
だからこそ、年齢と性別で分ければ、どのようなものが好きか? どのような悩みを持っているか、何が欲しいかが、ある程度一緒だったんですね。
しかし、現在では楽しむコンテンツも多様化し、世帯年収の格差も開き、自分の考えを発信できるSNSが発達し、その考えに共鳴する人々が集まる小人数グループ世界が数多でき、その世界での価値基準が優先される社会です。
年齢と性別だけで分けた層にメッセージを送っても、みんなに好きだと言って、みんなに嫌われる商品のできあがりです。
今回は、このターゲットの考え方を見直すだけで、飛躍的に売上が伸びるきっかけになる。というそんな話です。
ペルソナ設定はやるべきか?
じゃ、よりターゲットを具体化するために、ペルソナを作ろう!となります。
42歳の女性で2人の子ども(男の子、女の子)がいて、郊外に住んでいて、パートタイムで週3働いている。夫は中企業の課長で2歳上。
月に2回は外食でちょっと贅沢をしていて、服はユニクロでも買い物するけど、いくつかブランド物を持っている。最近はinstagramをやっていて、好きな雑誌は「VERY」。
誰?
それ誰?
って思います。
ペルソナを設定するマーケティング手法は、かなり高度です。
表面的なものを仮設定するだけでは何も見えてきません。
ペルソナで設定されたその人物の感情や、日々悩んでいること、何を判断基準にしているのかというところまで掘り下げなければ、ただ上っ面をなぞっただけになるんです。
ペルソナ設定から始める場合は、それ相応の覚悟と確度と技術が必要です。
だからぼくはクライアントに、あまりおすすめしません。
「ペルソナ作ろう!」と言い出したら、止めます。
「ターゲット」とは?〈事例紹介を含めて〉
では「ターゲット」とは何か?
結論から話せば、前回のコラムにも書きましたが、
「どんな悩みや考えを持っている人か」
です。
ここでぼくがたずさわった事例を紹介します。
商品は美白化粧品としておきます。
<新商品発売 編>
成分にかなりこだわった美白化粧品なのに、
価格は3,000円前後という、かなりお値打ち品。
10,000円でもおかしくない効果があり、贅沢な成分が入っていると
クライアントさんは胸を張っていました。
たしかに、美白化粧品は一般化粧品よりも高額です。
だから、こんなに素晴らしい商品がこんなにお値打ちだということで、
20代〜30代女性を中心に商品をプッシュして欲しいということでした。
「こんなにいい成分が入った美白化粧品。こんな効果があるよ!
それがこんなにお値打ちだよ!」
結果惨敗。目標には遥か遠く、全く商品は動きませんでした。
<ターゲットみたいなものを設定 編>
翌年もう一度チャレンジ!と、ターゲットみたいなものを設定しました。
「美白ケアをしていない全ての女性」
「美白って必要だよ!美白してないと5年後えらいことになるよ!
今ならこんなにいい商品がお得だよ!」
結果惨敗。昨年と大した変化もありませんでした。
<ターゲットを設定 編>
翌年、もう今年あかんかったら、廃盤にするということでした。
そこで、思い切ってターゲットの設定の仕方を変えたのです。
今までは、年齢や「美白していない人」という状態をターゲットにしていたのを、今回は
「美白をした方がいいなと思っているけど、経済的に+αで化粧品購入は厳しい。それに美白ってそもそも肌白くなるの?」と考えている人。
と設定。そうすると広告の切り口が大きく変わります。
1.なぜ美白しないのか?という理由をアンケート取り、それは間違っているよということを伝え、
2.そもそも美白は肌を白くするものでなく、シミ・ソバカスを防ぐものであることを伝えたり、
3.まずは手軽な価格で始めてみましょうという提案
という流れで広告をつくりました。
結果、在庫切れになりました。
このような事例はいくつもあります。
つまりターゲットとは、
「どんな本音を持っている人か?」とも言えます。
顕在化しているもの、潜在的なもの、
意識的なもの、無意識なものも含めて、
どんな本音があるのかを知る必要があります。
ぼくは「市場」とは「本音の集約」だと考えています。
商品に合った「市場の本音」を見つけ出し、
その本音を持っている人をターゲットにすること。
そうすれば、必ず商品は動くと信じています。
「市場の本音」の見つけ方
では「市場の本音」は、どうやって見つけるのか?
「見る・聞く」こと「想像する」ことしかないです。
これを繰り返すことが、「本音」を見つける近道です。
マーケティング予算が豊富な企業は、
定性調査として、様々なアンケートや手法を使用し、
膨大な量の「見る・聞く」ことをし、そこから仮説を立てて、
分析し、本音に近づきます。
予算がない場合は、徹底して話を聞くこと、そして、
ターゲットが好きそうな世界に身をさらすこと。
ただ、その道の専門家の人に話を聞くのはあまりおすすめしません。
身近な人、普段から周りにいてくれる人が、どのようにそれを感じているのか、どのような考えを持っているのか、それを蓄積していき、仮説を立て、
その仮説が合っているか、また意見を聞くということを繰り返します。
上記の美白化粧品でも、
いろいろな話を聞く中で、
「そもそも美白化粧品って効果あるって信じている人多いのかな?」
「疑問を持ちながらも、必要なのかなーと漠然と思っているだけなんじゃないかな?」
という仮説から始まりました。
また、
「美白化粧品がこんなに安いと逆に効果がないって思うんじゃないかな?」
という仮説も立てました。
結果的に成功したのですが、
聞く→仮説を立てる→聞く
これを繰り返すことで、どんどん自分の直感と思考が磨かれていきました。
まとめると、ターゲットとは
「どんな悩みや考えの本音を持っている人か」です。
どんな「本音」があるかを掘り当てなければありません。
化粧品で言えば「乾燥肌や肌荒れが悩み」という表面的なことではなく、
乾燥肌や肌荒れがあることで、
「セーターなどを着れない。おしゃれの幅が狭い。」とか
「人前に出るのが自信がない。」「化粧ノリが悪くて、何回も化粧直ししてめんどくさい」など、その深い悩みや考えを見つけて、その考えを持っている人をターゲットにするのです。
今ある商品のターゲットを見直してみてください。
これから作る商品のターゲットを見直してみてください。
きっと新しい発見がありますよ。
次回は、そのターゲットに向けての「メッセージの作り方」。
その中でも、一生懸命伝えても、結局人は自分が思っていることを変えてくれないという話を。
人って頑固なんですよね。
より深い考察や経験したいので、ご意見やご感想、ご質問などありましたら、お気軽にコメントください!