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良い部屋の途上

より良い部屋、より自分の好きに満ちた部屋をつくるためには何を考える必要があるか? というテーマで、12の事項について考えてみるシリーズです。

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#5 サイズのサ

サイズのサは、部屋作りのキホンのキである。 美術館みたいに広い部屋だったら、なんでも置けるけど、 部屋は大体狭い。 いらんところにいらん隙間があり、 いらん出っ張りがあり、いらん柱があり、 かと思えば洗濯機や冷蔵庫のスペースは詰まっている。 そううまくいかない。 なので部屋に入れる物質のサイズに気を付けなければならない。 また物には個体差というものがあって、 CGやグラフのように完璧で真っすぐな線でなかったり、 サイズが実際は微妙に違ったり、 更には放熱やコンセントを付け

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#4 いつかごみになる

好きで買ったそれも、 必要な家電も、 推し活グッズも消耗品も、 物質である限り、それはいつかごみになる。 だから何かを買う時は、ものの未来を考えた方がいい。 特に賃貸で数年住むくらいの想定でいる場合は。 家に合わせたサイズ感のものを買いますよね。 洗濯機やキッチンの隙間にちょうど合う収納、ほしいよね。 壁いっぱいの本棚、あるといいよね。 よく分かる。サイズ感は家具選びの基本のキ。 でもそれは引っ越す時どうする? 捨てる?譲る?売る? 捨てる時はどうする? 部屋いっぱいに

#3 線は少なめに

生活する上で電気は必須で、 電気は線を伝って走っている。 何を当たり前のことを、と仰るかもしれないけれど、 部屋のインテリアにおいてそこに意識を向けるのは最後になりがちではないだろうか。 でも線は見えない方が部屋はすっきりするし、ない方がレイアウトはより自由になる。 グラフィックとリアルの一番の違いは、 配線のことを(真面目に)考えなくていいかどうかだと思う。 コンセントの位置と数は? 必要なところに必要なものを置けるか? そうでないなら、線の長さは十分か? 線をどう隠せ

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#2 窓を選ぶ

フィンランドのとある町に礼拝堂を見に行った時、 高い窓から光が降り注いで十字架を照らしていたのを見た。 その時光は天からの恵みだなあと実感した。当たり前だけど、よく忘れること。 部屋を選ぶ時は必ず、窓からどう光が入るかを考える。 外が明るいと朝自然と目が覚める。 仕方がないから起きてやるか、という気持ちになる。 分厚いカーテンを使うのも防犯にはいいけれど、 光が起こしてくれる朝はやっぱり気持ちいい。 祭壇に降る西日も、ガラスの瓶を通ってゆらゆら揺れた変な光も、物に生気を宿

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日歌

日々の短歌をまとめました。

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手を挙げて風を集めた凪の夜 夢の中では天高く凧

水面に零れる夕陽の足跡を 揺らすいたずら新しい風

ファインダー覗き目があう自分の瞳 あつめた光の行く先見せて

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編歌 2024

2024年に詠んだなかから10の歌を編みました。

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公園にころがるグミが日を受けて 琥珀のようにきらきらひかる

駄々こねる洗濯物を乾かして 台風一過の蝉降る九月

夏の夜 祭気分の雷砲と追いかけっこの最終バスなり

帰りつき余力でちょっと引き延ばす 明日のための短い夜を

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My Best in Every Years

年の瀬に皆へのありがとうと大好きを書きなぐる儀式です。

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Something my best in 2024

今年は職場が変わり、休日もよく平日に変わりの1年でした。 なりふり構わず言うと、大変がんばった。 毎日のように怒られて、事務所を飛び出て歩きながら涙が収まるのを待って、また仕事して、 何もわからず、正解も汲み取れず、 誰かが助けてくれる訳でもない、 やったことない知らないでは許されない、 鉛のかたまりくらい重たい1週間のくりかえしだった。つくりきるってすごいことなんだ。 そんな自己憐憫の中にあっても 心のアンテナがぴんと立つ瞬間はいくつもあって、 疲れているからこそ、外に

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マイ ベスト エキシビション2023

10月以降全く展示を見に行けていなくて、マイベストアーティストを書いて満足していたのだけど、簡単に追記しておく。 今年は21の展示に足を運んだ。 1.「心の糸」松村和彦 @八竹庵 京都 Kyotographieの展示の一つ。認知症の妻を長年介護する夫の視点で、妻の点々とした記憶を空間に表現した展示。途切れて薄れていく記憶の記録。さいごまで付き合っていくそれでも、という気概は限りなく愛に近い。それが愛で片付けるには過酷だとしても。 2.「星野道夫 悠久の時を旅する」星野道

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Something Best in 2023

歳の瀬、会う人会う人のベストバイを聞いている。 久しぶりの人でもよく会う人でも、その人の1年の、印象深いいくつかの出来事が垣間見えてたのしい。嬉しい。 私のベストバイは 1. Louis PoulsenのPH5 mini 2. DENONのヘッドホン 3. Barbourのビデイルジャケット です。 あなたのベストバイはなんですか。 さて本題。 今年も沢山のグッドミュージックに出会えた。 悲しみの淵に尚 そこにある音楽がどれだけ心強かったか。 人の手の軌跡を何度もなぞ

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Something my best 2022

なぜか人は1年の終わりには過ごしてきた時間をふりかえりたくなる生き物なので、私もそうする。 今年は19の美術展に足を運び、2395曲の歌を聴き、25の映画とドラマを観たようです。 大変お世話になりました。 マイベストエキシビジョン 1.WHO ARE WE 観察と発見の生物学 / 国立科学博物館 日本デザインセンターの三澤遥さんのファンなので行ったけど、会場構成やグラフィックが本当に良かった。剥製の配置で交わる 交わらない視線とか  展示什器の仕掛けとか 能動的に知る

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旅と音楽

これは私が留学していた時の、所々で覚えているつもりの記憶と、その頃聴いていたグッドミュージックを意味なく広大なネットの海に放つ試みです。 週1更新、全12エピソード予定。 https://anchor.fm/musicandjourney

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#12 その地に足をつけるために

私は1つのところに長く留まるのが苦手だ。 飽き性なので、すぐ新しい酸素がほしくなってしまう。 学生時代のアルバイトは半年から1年程で辞めていたし、 引越しもよくしている方だと思う。 何かを極めることもなく、そのくせ居場所を求めてふらふらしている。 そういう甲斐性のない私が どうして留学に行ったかというと、 大学院にいるのが息苦しくて、あと自分が社会に出ても何の役にも立たなさそうで、 新しい街で、透明になりたかった。 この時の透明というのは、街に溶け込み日常を暮らすという意味

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#11 記号が意味を帯びる話

前の話でフランス語しか話せないおじさんと拙いやりとりをしたと言ったけれど、 その国の言葉が分かるようになっていくのは 楽しくて嬉しいという話をする。 少しでいいから、コミュニケーションをしたいという姿勢を見せるのが その町で過ごしやすくなるための近道だ。 こんにちは、ありがとう、またねくらいは、 便利なスマートフォンというものがあるのだから、簡単に分かるはず。 または、友だちに教えてもらえばよい。 フランスの駅で電車を待っていて、かつ腹ぺこだった時、 構内でPAULを見つ

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#10 フィルミニでミディ(しなかった)話

フランス、リヨンから電車で小1時間。 フィルミニという町に、建築界の巨匠コルビジェ(Le Corbusier)が設計した文化センターと教会がある。 見に行きたいが、駅から20分ほど歩く必要がある。 辿り着けるだろうか? そこに電波は届くのだろうか。 心配していたけれど、駅に着くと目印があった。 コンポジションされた赤と黄と緑と青の線が一筋、道にプリントされてずっと続いている。 建築学生ならお分かりだろうか、これはコルビジェの色。 これを辿れば絶対の絶対に、文化センターまで

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#9 オーフスの図書館にある天国の話

ドイツの北方ハンブルグから夜、列車でデンマークのオーフスまで向かう。 着いたのは朝。 目当てのArne Jacobsenが設計した市庁舎が開くまでの間、散歩することにした。 海の方へ向かって歩いていくと、4階建てくらいの大きい建物に辿り着いた。 現代的な渦巻きのような形をしている。 双子用ベビーカーを押す若い男の人とすれ違う。 そこは図書館らしく、誰でも入れるみたいだったので入ってみる。 平日の午前中だからか人があまりいない。 天井の高い大空間に本棚や机、椅子が配置され小

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