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色褪せた紫陽花の横通る夏 引き継ぐような華の浴衣ね
騒ぎ立つ雷も遠くなっていく 余韻の雨がなぐさめる庭
浮かんではぼやけていった歌たちが 雷伝い 渡り歩く空
六月の雨に打たれて紫陽花の垂れる頭は心にもたれ
帰りつき余力でちょっと引き延ばす 明日のための短い夜を
いたずらに過ぎる平日 友だちの誕生日さえ覚えておけない
話したいことの鮮度は落ちていく まま味気なき大人の日々は
窓際に座り仰げば風が吹く 洗いざらしの服の柔さよ
公園のベンチににげる昼休み 馴染みの雀を眺める休み
渋谷駅 大人になるということは 行き交う顔に 面影みること
オーディオの外してなかった保護フィルム剥がして最初の指紋をつける
口角をわらう重力増す日々の輝きに心侵されていく
自転車で野球少年駆け抜ける 日に焼けた風が 夏連れてくる
照らされて洗濯物が落とす影 八百屋の顔も季節の変わりめ