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#11 記号が意味を帯びる話

前の話でフランス語しか話せないおじさんと拙いやりとりをしたと言ったけれど、
その国の言葉が分かるようになっていくのは
楽しくて嬉しいという話をする。

少しでいいから、コミュニケーションをしたいという姿勢を見せるのが
その町で過ごしやすくなるための近道だ。
こんにちは、ありがとう、またねくらいは、
便利なスマートフォンというものがあるのだから、簡単に分かるはず。
または、友だちに教えてもらえばよい。

フランスの駅で電車を待っていて、かつ腹ぺこだった時、
構内でPAULを見つけた。
京都の三条にもある、あのパン屋だ。
知ってるぞ。嬉しくなって、
パルミエ・ショコを買う。
チョコが半分かかっている平たくてかたいパイです。
Bonjour. Can I have this?
代金を払い、パイを受け取る。
Merci, Au revoir.と笑いかけると、
お店のお姉さんは少し驚いて、にっこりAu revoir.と返してくれた。
それだけの出来事が嬉しかった。

スイスに来て始めのセメスターに、ドイツ語のA1初級クラスを取っていた。
駅を歩く。看板に書かれているBahnhofは駅という意味だ。
スーパーに行く。Apfelはりんご。Käseはチーズ。Zuckerは砂糖…
勿論見たら分かるものが多いレベルではあるけれど、
まるで意味があるかも分からないような文字、というか記号の羅列が
意味を帯びて目に入ってくる過程は、
その町での日々をぐっと親しみやすくさせてくれる。

バスに乗る時。友だちにさよならする時。美味しかった時。
一言覚える度に、分からないが分かるようになる度に、
町が、日々が好きになる。
分かりたい。
完全に分かり合うことは出来ないとしても、
まず分かろうとしてみたい。
この気持ちはどこに行っても、日本でも、忘れたくない。

ここで1曲。スイスで、友だちに連れて行ってもらったクラブで流れていて、好きになった曲。
Toploader "Dancing in the Moonlight"

ヨーロッパではカラオケはあまり見かけず、皆クラブで踊ってお酒を飲む文化がある。
学校が終わって、一度家に帰ってごはんを食べて、
クラブで飲みながら踊ったりする。
そこで流れていた。

歌いながら洗濯物を干す時くらいしか踊る習慣がなかったので
ただ踊るなんて慣れていなくて下手だけど、
皆で身体を揺らしていると意外と楽しい。
好きな曲が流れている時は特に。
また行きたいな。


ちなみに、冒頭の写真はルツェルンの中心部にある、プールをコンバージョンした複合施設。
まず入るとカフェバーがあり、奥のプールはコンサート会場として使われることもある。
地下のボイラー室はDJブースがあって、ミラーボールが回っている。
かわいい、良いコンバージョン事例だと思う。


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