#9 オーフスの図書館にある天国の話
ドイツの北方ハンブルグから夜、列車でデンマークのオーフスまで向かう。
着いたのは朝。
目当てのArne Jacobsenが設計した市庁舎が開くまでの間、散歩することにした。
海の方へ向かって歩いていくと、4階建てくらいの大きい建物に辿り着いた。
現代的な渦巻きのような形をしている。
双子用ベビーカーを押す若い男の人とすれ違う。
そこは図書館らしく、誰でも入れるみたいだったので入ってみる。
平日の午前中だからか人があまりいない。
天井の高い大空間に本棚や机、椅子が配置され小空間を生んでいる。
上のフロアに行くと少し天井が抑えられたスペースにレコードやCDが並んでいて、椅子に座ってじっくり音楽を聴けるコーナーがあった。
ここは天国なのか。
vitra社のグランレポという包み込まれるような大ぶりのラウンジチェアが置かれていて、
ヘッドホンをすれば完全なる自分だけの音楽の世界に浸れる。
ここは、天国なのだろうか。
日本の図書館に、ここまで贅沢な空間があるだろうか。
豊かな時間が過ごせる居場所があるだろうか。
私は見たことがない。
公共施設へのこのようなお金のかけ方は、
今の日本では実現できないと思う。
いつか、実現できたらいい。
デンマークでは歩いていたら素敵な公共空間に辿り着ける。
その期待感だけで、歩くのが楽しい。
豊かな空間が精神的な豊かさを生む、相乗効果の街。
訪れた北欧の図書館はどこも幸せな空間だったけれど、このオーフスの図書館が一番印象に残っている。
(ちなみに、設計はSchmidt Hammer Lassen)
その時、私が聞いていた音楽。
Bruno Major "Easily"
初めて一声聞いた時、胸がふるえた。
生きている限りそういう音楽に出会えることが幸せだ。
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