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無口な歌詞

1,733
あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2020年7月の記事一覧

マジシャン

たった一滴で
真っ白なお皿がまあ綺麗
洗剤のコマーシャル
.
あの油汚れは
見えなくなった
淵に押し遣られたから
.
この世はマジシャンだらけ
楽しませてくれる分には
素直に騙されましょう
ただそこに僅かばかりでも
含みがあったのならば
またそれが別の何かの力で
淵に押し遣られるだけ
.
.
たった一言で
真っ青な吐息があら不思議
半分のポテンシャル
.
もう闘争心は
燃えなくなった
隅に追い遣ら

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常温のプリン

時は裸足で近づき
気がつく頃には
背中に触れられて
「ストップ」
そう言える間もなく
ふっと居なくなる
.
何回目だって同じだって
飽きるまでやったって
掴まえられない
.
すぐ食べるつもりだったプリン
もう随分と出しっぱなし
また冷やすのもあれだからと
そのまま口へ運ぶ
何だか懐かしかったのは
きっと淋しかったから
.
.
時に無言を貫き
睡れる頃には
名前を忘れられ
「バイバイ」
その雰囲気は

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bus

思い通りに
だけはならなくて
ふて寝に次ぐふて寝
もう欠伸も出ない
.
深夜から
出るバスに乗り
行ったっきりの旅
.
止められそうにないから
誰も止めてくれない
それでいいのに
涙が止まらなくて
少し無理をして笑って
そのせいにした
.
.
思い通りに
だけはならなくて
気がついたら夜明け
もう言葉も出ない
.
彼方から
来るバスはなく
行ったっきりの人
.
止められそうにないから
誰も止めてく

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funny funny

適当に並べられた
選択肢の中から
今日も一番無難な
それを手に取る
.
笑われるのは判っていた
ただ真逆でもない斜めからの
風は不意をついて傷になる
.
世界がおかしいなら
私がなくなれば
それでおしまいなのに
取り外せた知恵の輪
その両方が淋しいと泣き出し
また元に戻すなんてさ
そんな繰り返しばっかり
一体いつになれば眠れるの
.
.
丁寧に揃えられた
選択肢の中には
今日も一番無難な
それが置

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綺麗なままに
摘まれた花
美しく
枯れた花
.
言葉にすれば同じ花
この目で見たらどんな花
.
揺らぎに正直
灯りに健気
落ちる欠片を
手に取って
見透かす仕草から
先駆け
.
.
静かなままに
挿された花
新しく
萌えた花
.
この目で見れば違う花
言葉にしたら花は花
.
当たりに丁寧
頼りに素朴
朽ちる時間を
指折りで
数える余白から
先駆け
.
揺らぎに正直
灯りに健気
伸びる背中を
追いか

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JM

淋しさの精度
信じられなくて
わざとらしく
昨日の轍を辿る
.
つまり来た道を帰る
それとなくほっとして
また黙る
.
大人しくなりました
大人ではなくて
それでも立派に育ちました
大人しくなりました
大人ではなくて
これでも真面目に育ちました
生産者の顔は知りませんが
.
.
優しさの角度
憶えられなくて
わざとらしく
自分の涙に頼る
.
つまり見たままを語る
それとなくしゅんとして
また回る

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ルビコン川を渡る

着なくなったとしても
クローゼットの中に
いつ迄でもあったらしい
笑えないのに笑っちゃうだろ
.
振り返りもせず
最後の馬が行き過ぎる
.
.
居なくなったあいつの
プレイリストの中に
ラブソングがあったらしい
笑えないのに笑っちゃうだろ
.
選り好みもなく
最後の春に差し掛かる
.
言葉を奪う風もそのまま
.
.
誰も止められない
その流れには
清らかな理由があるから
誰も変えられない
その流れ

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5000年後、また

何ちゃら彗星が見えるらしいと
意気込んで外へ出るも
どうやら曇り
隙間から少し星が見えただけ
.
折り返しの電話
する元気まではなく
取り敢えず部屋に置いてきた
.
昼寝のせいか
夜が長い
どうせ明日も
することなら同じ
だったら続きをしに行こう
まだきっと終わっていないから
せめて夜が明けるまで
.
.
何ちゃら彗星は見えなかったが
久々に見る夜空は
意外と綺麗
序でにと歩く酔いが醒めるまで
.

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エアコン

急に古く見えた
エアコンと目が合って
まるで回想シーンのように
この部屋での日々が
あれこれと思い出される
.
何度も模様替えをしたとか
その時にできた壁の傷も
何だか愛着があって
.
生きていたんだな
大袈裟にそんなことを
呟いてしまった
生きてきたんだな
しみじみとそんなことを
考えてしまった
.
お世辞にも綺麗とは言えない
この愛すべき混沌の中で
.
.
急に居なくなった
リモコンに気を取ら

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yをiに変えてes

ニュースの大きい小さいで
流れる涙の量が
変わってしまうなんて
それこそ淋しかった
.
今日も部屋の中
あるものだけを使って
生きたふりをする
.
主題歌は似合わない
だからかけないで
エンディングも要らない
というよりもならない
当たり前過ぎて気にもされない
そういうものがいい
そういうものでいい
.
.
優しい人から居なくなる
それでも涙の量は
決められているなんて
やっぱり淋しかった
.

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優しい人

普通って何
なんてさ
普通のことを
訊かないでくれ
.
いびきをかいて眠りたい
夢の中で踊りたい
たったそれだけのこと
.
いつの間にやら
破れかぶれ
誰しもが傷だらけ
可哀相だと思わないのか
自分のことさえも
優しい国なんてものはないが
優しい人は居るのだろう
.
.
誰かって誰
なんてさ
淋しいことを
言わないでくれ
.
あくびを待って眠りたい
夢の外で出逢いたい
たったそれだけのこと
.

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泣いたらば

数えられるくらいの言葉で
憶えられるくらいの言葉で
ちょうどいい癖に
.
目に余るものは
もう知らない
生まれたてのまま
息を吐く
.
恋しいと泣いたらば
抱きしめてはくれないの
信じていた訳でもないけれど
この残念な気持ちは
曇りの一つもない
ただ真っ透明な優れもの
.
.
数えられるくらいの理由で
憶えられるくらいの理由で
ちょうどいい癖に
.
手に余るものは
もう要らない
生まれたてのまま

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風の谷間

房々とした遠くの山
見つめていたら
眠たくなってきて
そのまま防波堤の上
寝転んでしまう
.
絵に描いたような季節も
いつだってここにある
.
空を掴んでみる
指の隙間から
逃げてゆく青と白
鳥も笑っている
風の谷間から
駆けてくる影と声
.
.
房々とした大きな雲
見つめていたら
愉しくなってきて
裸足でアスファルトの上
追いかけてしまう
.
ノスタルジックな未来も
何だってここにある
.
砂を

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今日は雨でした

実に些細なことで
簡単に壊れてしまっても
元に戻すくらいなら
別に気にはならないけれど
もう同じにはならないと
知ってしまうのが怖い
.
仮に突飛なことで
早々に忘れてしまっても
お茶を濁すくらいなら
無理に嘘も吐かないけれど
まだ優しくはなれないと
去ってしまうから辛い
.
更に勝手なことで
適当に流してしまっても
部屋に帰るくらいなら
敢えて止めたりしないけれど
あと少しだけ泣きたいと
待って

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