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何を書くか構成を決める

文を書くのが苦手、気が重いという人に、文章を書くための大きなポイントを3つ、お伝えしよう。文を書くのが好き、すらすら書けちゃうという人にはまったく無益なので、そういう人は読まなくていい。

文章が苦手な人にまず聞きたいのは、「何を書くか、決めてある?」ということ。「そりゃ当然ですよ」と言うかもしれないが、「本当に?」と尋ねたい。「そりゃ当然ですよ、◯◯に対する弊社の取り組みです」「そりゃ当然ですよ、△△さんのインタビューです」ではなく、◯◯に対する会社の取り組みがどうだと言いたいのか、△△さんのインタビューで聞いた何を書くのか、その結論(もしくは「主張」、もしくは「伝えたいこと」)を決めてあるのかということ。文章が苦手な人の80%は何を書くか決めていない。

文章講座や作文教室では、「何を書くか、決める」ことに時間の半分を費やす。子供の作文だと考えてみてほしい。何を書くか、「遠足について書く」は答えになっていない。遠足の「何を書くか」考える。
「遠足はどうでしたか」
「楽しかったです」(ほとんどの子はそう答える)
「何が楽しかったですか」(what)
「お弁当を食べたことです」
「どうして楽しかったのですか」(why)
「みんなで食べたからです」
「誰とどこで食べましたか」(who/where)
「えーっと◯◯ちゃんと△△ちゃんと食べました。木の下の石に座って」
「どんなふうに楽しかったですか」(how)
「えーっと、◯◯ちゃんのエビフライをもらって、私のトマトをあげました」
「エビフライとトマトと交換?」「△△ちゃんとは交換しなかったの?」などと聞き出すと、質問しなくても、どんどん話し出すタイミングがある。「◯◯ちゃんのエビフライはマヨネーズがおいしくてもっと食べたいと思った。△△ちゃんの卵焼きはうちのと違って甘かった。牛乳とハチミツを入れるんだって。△△ちゃんは私があげたイモ餅を落としてしまって3人とも悲しくなったけれど、すぐにアリがたくさん来て少しずつ運んでいって、どんどんイモ餅が小さくなって、それが面白くて楽しくなった」。
それです!
「アリと食べたお弁当、それを書きましょう!」

ビジネスでも同じことで、◯◯に対する会社の取り組みがどうなのか、まだまだ甘いのか、努力しているわりに成果がないのか、とても上手く行っているのか、新しい視点を提案するのか、その結論(主張)をまず決める。同じデータでも結論は人によって違ってくるだろう。

第2に、その結論を書くための構成を考える。迷ったら、このパターンに落とし込むといい。
結論(◯◯に対する会社の取り組みは費用対効果が低い)

理由1(費用と効果のデータ)

理由2(他の取り組みとの比較)

理由3(他社との比較)

再び結論(効果を上げるために新しい施策が必要だ)

「結論→理由1、理由2…→再び結論」というパターンは、どんな文章にも使える。結論を先に言うこと(その結論が興味深いこと)で、webコンテンツでは離脱を防げるし、書きながらブレることも少なくなる。メールやSNSでもそうだ。「欠席します(結論)→理由1、理由2→残念です(再び結論)」と書けばいいのに、本当は参加したいのに…ということを延々書いて出席するかもしれない曖昧なニュアンスになってしまう人もいる。

加えて言うと、「結論→理由1、理由2…→再び結論」に該当しないことは、書かない思い切りも大切だ。遠足の作文でいうと、「落としたおかずにアリが寄ってきて一緒にお弁当を食べた気分だったこと」を書くと決めたら、朝の集合時間に遅れそうだったこと、たくさん歩いて疲れたこと、友達が転んだけど大丈夫だったこと、そういうことは思い切って書かない。

これは、webメディアの特にインタビュー記事に多く見られる問題で、相手が話したことを時系列にすべて盛り込んで、結論がなくなっていることがある。相手が有名人だと、どのエピソードも貴重に思え、(多くの場合、字数制限もないので)すべて紹介したくなる気持ちもわかるのだが、それは逆効果だ。「インタビューのダイナミズム」にも書いたが、webメディアにも、インタビューにもコンセプトやテーマがあるわけで、それ以外のことは書かない思い切りを持つことで、書きたいこと、結論により光が当たる。むしろ、そのほうが読まれる記事になる。

3つめ、最後のポイントは、書く作業と、直す作業を分けること。何を書くか決めて、構成を決めて、そのあとは、一気にスピード感をもって書く。言葉や漢字に迷っても止まらず、わーっと書ききる。書ききってからはじめて推敲をする。文章が苦手な人はたいてい1行目から文にこだわり「うーん」と唸り出す。書いては消し、書いては消し、前の段落を読み返しては戻ることを繰り返す。なかなか進まないと、その過程自体に気が重くなってしまう。

文章を一気呵成に仕上げたら以下のことに注意して読み返そう。
ひとりよがりにならず初めて読む人が理解できるように説明できているか
 ・結論が明確に書けているか
 ・結論を導く理由に説得力があるか
 ・説明ができているか5W1H(what/who/when/where/why/how)のチェック
 ・ひとつの文にひとつのメッセージを基本に長い文は2つに分ける
 ・「ですます」調か「である」調か文体を統一し、立ち位置をブラさない
 ・専門用語、カタカナ言葉が多くないか、言い換えできないか
文章の構造が整ったら、誤字脱字の修正や、語尾などの調整をしよう
 ・「〜です」「〜です」と同じ語尾が重なっていないか
 ・「しかし」「そして」などの接続詞、「その」「そちら」などの指示語、
  「我が社は」などの主語は省略しても意味が通じることが多い。
  省略できるものは省略する。
 ・助詞の「の」が連続していないか
 ・意識せず常套句を使っていないか
 ・二重否定、受け身、推量、推測などはできるだけ避ける
 ・ありふれた形容詞、動詞はより具体的に言い換えられないか検討する
 ・「にんじん」「ニンジン」「人参」が混在しないように表記の統一をする

文章が苦手な人に3つのポイントを挙げたが、多少、文が荒削りでも、書かれている内容がユニークであれば、それに勝るものはない。逆に内容がないのに、文の技法だけ駆使していても全く意味がない。文章は、「何を書くか」、それが問題だ。

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