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映画「竜とそばかすの姫」はどう観るのが良いか、という話。

<鑑賞直後の感想 2021.7.16>
初日、朝イチIMAX
程度には期待してる

観終わった、
ド傑作
泣きポイント

マグカップ
ゲロ
クソ野郎がペガサス流星拳を撃ってくるが
フェニックス幻魔拳で逃亡
beauty and the beast
城の3D表現
君の名は。
空飛ぶクジラ
そのもの青き衣をまといて金色の野に
***
完全にサマーウォーズ超え
おめでとうございます

*********************
「竜とそばかすの姫」
ネタバレ少ししつつ、初見感想文。2021.7.18 ↓
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細田作品で一番好きなものになりそう。
初日、二日目のレビューは賛否あり、否定的なものの典型は
「歌・音楽と映像はいいが、ストーリーがうんこ」
ってなもの。

ただ、言わせてもらいたいのは
ほなきみらは
「バケモノの子」「未来のミライ」をどう観たのや、ということ。
この二作は細田守が自分で脚本を書いた作品ですけど、
ストーリーはめちゃくちゃで意味がわからず、
要素もごちゃごちゃぶち込まれていてまとまってない。
中年のおっさんが「ワシいまこんなことに興味ありまんねん」ってのをたくさん集めてぶっこんでみた、ってアニメだった。
パーツパーツに惹かれる人が「好きだ、良かった」というのはわかるけれど
「これは素晴らしい映画です」って言われると、まじすか?って感じはありました。

では今作「竜」はどう違うのか、というと。
良い意味で、細田守のこだわり、が無いことじゃないかな。
こだわりってのは、俺が俺が、ってこと。
細田守の映画、というより、ディズニーアニメ美女と野獣をはじめとして、大量の「素敵な過去作」が練り込まれていた。
ネタ元をこまかく探したり照らし合わせたり、というのはしたくないですが
鑑賞中ずっと、過去のいろんな映画体験、映像体験のことが頭や体をよぎり、幸せなきぶんだった。

もともとが「サマーウォーズ」のセルフパロディというか刷り直しのような性質があるのが良かったのかもしれない。
変に新しいもの、いままでにないもの、と肩に力がはいらなかったのかな。
過去のよいものは、当然パクりますけど、それが何か?
という開き直りがあった。

かっこつけて美女と野獣を「におわせる」のではなく、
単純に、美女と野獣を再現していた。それが潔くてすばらしい。
また、アナ雪が示したものは「ストーリーがうんこでも歌が素晴らしければ人は感動する」ってことなんだと思うんですけど、
それを、照れずに愚直に実現したのが本当に良かった。

だから
「歌はよかったけど、ストーリーがねえ…」
って文句言ってる人は、気づけてない。
実は逆で、このばあい正しい表現は
「あんな意味不なストーリーなのに、歌一発でまじ感動したわ」
です。
その素直な感動、ってのにブレーキかけちゃってるんですね
「ストーリーが素晴らしくないと感動しちゃいけない」
って思っちゃってるのかもしれない。
もったいない。

私はアナ雪はたしか5回ぐらいは劇場で観たはずですけど、
最後のほうは、レリゴーまで観てあとは寝てた、ってな鑑賞法だった気がする。
レリゴーにお金払いに行ってる感じで、それで文句はなかった。
文句ないというより、毎回レリゴーで感動して、ああ、よい体験をしたなあ、という。

2019の自己ベスト映画、ゴジラキングオブモンスターズ、についても、お話なんか、クソ中のクソでしょ笑
いろんなことが破たんし、つじつまなんてあわない。
そんでそのときも思ったんだけど、あんな素晴らしい映像みせてくれてるのに
「脚本が支離滅裂」
だの
「誰にも感情移入できない」
だの
謎の感想でケチつけてる人がおりました。
感情移入て。
ゴジラ神を崇めるためだけに作られた映画を観て、感情移入も糞もないわけです。
ギドラとの初戦は南極がええな、と思ったから南極の氷漬けのギドラを復活させたわけで
なんで?
って言われても知らんがな、という。

だから今回たとえば
「なんでベルは竜を気に掛けるの?竜の正体を知りたがるの?」
っていう意見というか突っ込みがあるわけですけど。
「いや美女と野獣やるんやから、近づかなあかんやろ」
ってことでありまして。
なんで、も糞もないんです笑

パシフィック・リムを観て
「なんで海の底から怪獣が湧いてくるの?」
って言うてるのと同じ。
答えは
「その方がおもろいからやん」
それに尽きますね。

これもネタバレになりますが、
後半鈴は一人で東京に行くんですけど、
「なんで一人で行くねん、みんなでついていけや」
ってレビューが複数あってびびった。
「ヒーローが複数で悪に立ち向かうわけねえやろ」と思います。
なんで一人で行くか、って言ったら「その方がかっこいいから」だし
なんで飛行機のらないか、って言ったら「それはダサいから」だし
わざわざ夜行バスに乗って東京に向かう理由は、父のメールみて「泣けるやん」ってシーンをやりたかったからだし、
映画にはそういう、こっちのほうがしびれるからやってますけど何か?というね、
そこ突っ込むほうがだせえな、という部分はあっていいと思うんですけどね。

***

で、まあ、個人的には、変に行儀よく小さくまとまってしまう映画よりも
なにかに特化し(あるいは何かを信じ切って)
パラメーター全振りしたような映画がやっぱ好きなんです。
だから、
「すっげー映像とすっげー歌を合体させたら人は感動するよね」
ってとこに特化し、それに全振りしてる今作には、ほんと感動しました。
他の部分はおまけ、幕間。

で、本編が歌ですから、歌はすばらしいけどお話がねえ、ってのは何かずれてる気がするな。
素直に、
本体である、歌と映像が素敵だった!以上
でいいんじゃないかと思います。

あきらかに歌に重心が有り、それがすばらしいので、成功なんですよ。
逆は目も当てられないじゃないですか。
ミュージカル映画をつくる、って言って
お話は面白いのに、肝心の歌とダンスがださかったら、それはあかんやん。
美女と野獣をやる、って言って、結果見事に美女と野獣なんですから、素直に感動したほうがお得です。

***

そういう意味では、天気の子を観たとき、あーだこーだとだいぶケチつけたんだけど、
あれ、最初から「日本中の、いや、世界中の童貞に捧げます。きみらのキモい妄想を映像にしてやったぜ!」
って新海誠が言ってくれてたら、そこそこ楽しめたんだと思うんですよね。
それをさ
新海誠はかっこつけて
「天気は刻々と変化する不思議なモチーフ」
とか
「小さい頃から空を観るのが好きだった」
とか
「降り止まない雨の中に光を見出してほしい」
とか
言うから~~~~

こっちはほなどんなメッセージ性の強い映画やねん、と観に行くわけじゃないですか。
だから、ふ・ざ・け・ん・な・よ
といらつくことになってしまうんですねー。
こわいですねー。残念ですね。

***

竜とそばかすに戻ると
細田守作品の正しい到達点、って気がすごくします。
時かけ、サマーウォーズ、おおかみこども、は、細田作品でありながら、奥寺佐渡子作品であったのだと思います。
だから、奥寺佐渡子ファンからしたら、
細田守がひとりで脚本書いた「バケモノの子」「未来のミライ」を観て
えっ?どういうこと?
ってなっちゃったんですね。
(バケモノ、はいちお脚本協力ってなってたかもしらんけど)
お話、ストーリーもの、としてのクオリティが細田脚本になったとたんに、ガクン、と下がってるわけです。
それはアニメーション監督である細田守が、お話の種をクリエイトできても、それをうまいこと整えて提出する技術がないんだと思います。
で、やることはぶっちゃけ二択で、
脚本を他の人にまかせるか、
自分の脚本でも成功するものをつくるか
ですね。

で、後者での到達点が竜とそばかす、ではないでしょうか。
お話の運び方は相変わらず下手で、いきあたりばったりで
正直言えばブレーキにもなりかねないやばさだと思います。
細部に突っ込んでいけば無限にダメ出しできそうな感じはあります。
でもたぶん、細田守は「それでいいや」って思ったんだと思うし、それは正しい判断なんだと思います。
そこを「小賢しく」整えることは、自分のアニメには必要ないや、って思ったんじゃないかな。
そういう整合性は捨てて(バケモノ、ではそれを捨てたせいで、は?ふざけんなよ?ってみんなに思われちゃったけれど)
じゃあ、自分の売りはなんなんだろう、細田守の映画にしか出来ないことはなんだろう、って考えたときに
この竜とそばかすにたどり着けたんだと思います。

アナ雪がある意味とんでもない傑作だったのと同じ意味で
こちらも正真正銘の、ド傑作だと思います。
これから観る方は、ぜひ細部の整合性やストーリー、などに惑わされず
ただそこにある歌
ただそこにある映像を存分に楽しんでみてはどうかと思います。

ほんとうにシンプルに言えば
「歌えなかった女の子が、歌えるようになる話」
でありまして、もうね、それだけで終わっていいのです。

*******
コメント追記
そうそう、ディズニー、駿はもちろんのこと、近いとこで、新海誠要素、なんてもの入ってんじゃないかな。君の名は、みたいな画がいくつかあった。
あと、今敏「パプリカ」なんてのも思い出して、ちょっとTwitter検索してみたら、けっこうな数の人がパプリカのこと思い出してるようで、そこも泣きポイントじゃないですかね。今敏の遺伝子がこうやって受け継がれてきているんだと思うと。

[2021.07.16-18 facebookから]

※2021.7.26追記
鑑賞後からずっとリピートしてる↓

ひとりに して欲しい と
貴方はつきはなす けれど
本当は胸の中にあるものを
覗かれたくないのでしょう

 怒り 畏れ 悲しみ
    抱えきれぬ夜
        でも
    口にできない

  きかせて
      隠そうとする 
      貴方のこえを
  みせて
      隠れてしまう
      貴方のこころ

************

一人にしてほしい、とか言ってるけど
本当は胸の中を覗かれたくない、そうでしょ?
とベルは竜に歌うわけですけど。
この歌のアツいとこは、
竜に向けて、貴方に向けて歌ってるようで、
実はベル自身、鈴自身が、
一人にしてほしい、と言いながら、胸の中を覗かれたくない、というキャラだというところ。

相手に向けている声が、自分に向かうことは現実にも多いですね。
竜を思いやることが、自分への応援となり、自分の救いにもなる、というそういう性質の歌。
素敵やん。

*****

2021.7.30追記

6周観たあとの感想はこちら↓



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