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日本は中東に貢献できるのか

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:中東問題に関わるリスクと難しさ。日本はどう中東に向かいあうべきか。教育がその答えである可能性について、あなたが出来ることは何かについて考えること。

第二外国語選択の今昔物語

昔の日本人は大学生になると、第ニ外国語を何にするかを迷った。それは今ほど世界がひらけておらず、外国に対しての偏見があったからだ。僕は韓国語を取ったのだが、物好き扱いされたことを思い出す。

フランス語を取ることに慎重だった友人もいた。なぜならば、アフリカ諸国はフランスの植民地だったからフランスが公用語のことが多く、商社などに入ったら、フランス語が出来るゆえにアフリカに飛ばされることを恐れてのことだった。

差別や偏見があると批判されそうな事実だが、そんな時代にも、アラビア語を学ぶという日本人はほぼ僕のまわりにはいなかった。

しかし、今NHKテレビ・ラジオ講座でアラビア語が開講されている。相当日本も変わったのだろうか。いや、まだ中東はミステリアス、というよりもテロのリスクを日本人はイメージしてしまうのではないか。

イランを思い出す、でも若干の苦さが


前にも話したんだけれど、20年前、まだ大学の非常勤講師だったころ、ある経営コンサルティング団体を通じて、「イランでコンサルティングをやってくれないか」、という依頼があったんだよ。

でもそれは僕だけじゃなくて、プロジェクトとして日本人の専門家が団体でイランに赴き、企業に指導するということだったんだ。僕はその頃、「HRMとは何か」という本を書いたばかりで、HRM(Human Resource Management人的資源管理)の専門家と買いかぶられていたようなんだ。

当時新しい概念だったこともあり、それを中心にイラン企業に教えてくれ、ということだったように記憶している。受け入れ先企業も決まっていた。ホドロ自動車というイランの国営企業だった。

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しかし、ほぼ前日にこのイラン行きはドタキャン。3ヶ月かけて渡航準備をしていたのがすべてパーになってしまった。理由は今もって知らされてないし、何の補償もなかった。

今回、これもまだ正式に決定しているわけじゃないが、ある石油関連企業を通じて、イラン企業の幹部たちにHRD(Human Resource Development 人的資源開発)を教えてくれとの間接的な依頼があった。

20年ぶりのリベンジかな、と思っている。

中東への無関心はなぜ

僕とイランのこのすれ違いはともかくとして、僕は日本人の中東に関する無関心というか、無交渉に残念な思いをしていた。もちろん、アフガンを救った中村哲さんみたいな偉大な日本人もいるし、いまも中東に身を捧げてくださっている多くの日本人がいることも知っている。

しかし、中東に対する議論はおろか、声すらも上がらないのは、なぜだろう。

もちろん、「お前がやれ」ってことなんだけれど、外野としてそんなふうに感じていた。

きのうも、アフガン問題でテレビを見ていたら、専門家がアナウンサーに「日本は中東に何が出来るんでしょうか」と振られて「そうですねぇ、日本はアメリカと違って直接利害がない、中立の立場にいますから、その立場を利用して何かできるかを考えたらいいでしょうね」と、木で鼻をくくったような答え。

お前専門家だろ、と言いたくなったよ。

都知事の小池さんも中東の専門家のくせに、一度も中東にコミットしたこと、いや発言すらしたことないよね。

あの人はカイロ大学卒業してるんでしょ。アラビア語の一言でもしゃべってよ。なんか、東京都と中東諸国の外交の一つもやってみてよ、そう言いたいよ。

彼女のキャリアなんて、まさに時代を先取りした多様性のフロントランナーと言っていいのに、なんで学んできたことを使わない?

まあ僕も含めて、中東から世界を変えようという動きは日本からは感じられない。

中東専門家の人や、中東を愛する人は発信してよ、noteに書いてよって感じはある。それとも、なにか話せばタリバンに暗殺されるんじゃないかって、恐れているんだろうか。僕が無知なだけなのかも知れないが。

宗教問題の深さ

昨日これもテレビだったけれど、9.11で息子さんをなくした方が10年かけてアメリカの9.11の分厚い報告書を訳して自費出版されたニュースを見た。

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その方は「テロリストとはわかりあえない。神のために自爆テロをするという背景に宗教がある。宗教とは恐ろしいものだと痛感した」と述べていた。

中東を理解するには、イスラム教の理解が欠かせないことは間違いないだろう。そして、どの国の人ともそうだが、こちらから積極的に胸襟を開いていかなければ、建設的な関係は何も作れないだろう。


さて、来年1月のくだんのイラン人の方々に対するレクチャーの件だが、どうせ今回も空振りだろと思いつつも、考えることがあるよ。

それは、なぜ、彼らが日本人にレクチャーやコンサルを頼むのかということだ。

ビジネスなら、アメリカ人やヨーロッパ人に英語で教わればいいでしょ。俺たち日本人は英語もつたないし、そもそも経営は欧米のもんでしょ。ビジネス教育はアメリカ人のお家芸でしょ。日本人は俺みたく、アメリカの受け売りをするくらいしかできないよ。

しかし、一度ならず二度も声をかけてくるのはどういうわけだ。

ちょっと仮説を立ててみた。

なぜ、イランの人はアメリカ人より日本人に教えを受けようとするのか

理由1:日本人はアメリカ人から教わった理論や考え方を、イラン人にわかりやすく教える能力がアメリカ人より優れているから

理由2:日本人は独特のチームビルディング、融和的な労使慣行、ジャストインタイムシステム(カンバン方式)と言われる独自の経営手法を持っているから

理由3:イラン人はアメリカ人が嫌いで、日本人の方に親密さを感じるから


じゃあ、お前はどう教えるの?って?

そうなんだよ、僕もアメリカンスタイルを教えるのが一番手っ取り早いんだけれど、この間お話したように、アメリカの受け売りはもうヤなんだ。

そして、上記にも書いたようにイランの人たちは日本流を期待してるんじゃないかと考える。そうすると、前半はアメリカの教科書に沿ってHRDの概要、後半第二部に日本流のHRDをやろうと決めた。


後半のスケジュールはこんな感じだ。

1. 型。空手の型の実演。型は部分からなり、部分の鍛錬をすることにより、全体のパフォーマンスが上がる。そのことをまず型により実演。あと日本のビジネスがすべて型からできていることを説明し、これをデモンストレーションする。例えば、名刺交換とか、意味のないお辞儀の交換のなかに、日本のビジネスの秘訣がある・・・かなり無理があるが、新しい型を考えている最中だ(笑)。実はこれは何度か海外でやってるんだけどね。

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2. かんばん方式と5S(ごえす)。在庫を減らすことが経営である、というトヨタの理念がカンバン方式にすべてある。動画などを駆使して説明するが、その背後にある哲学を特に教える。

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5Sは生産管理の基本、職場の整理整頓のことです。これは日本しかできないお家芸であり、工場のみならずあらゆる職場の基本なので、受け入れてもらえるはずだ。


3. ケーススタディ。これは英語でこさえたものがあるから、すぐクラスを作ってやるつもりだ。時間が足りないから、顔見世興行的な感じで終わるかな。



さて、どうなるかな。
今度もキャンセルでも構わないんだよ。

前も言ったけれど、こういう仮のオファーでも、もらった方の勝ちだ。

その気になって準備して新しいスキルと能力と視座が手に入るわけだから。

ヤイ、運命。

前はがっかりさせられたけれど、今度はその手は食わないぞ。お前に乗っかってやる。運に乗ってやる(笑)

というわけで、昨日大人向きの連載で、英語で書いたやつの日本語版だけど、激しく違っているところもあるのでご容赦を。

ではまた明日お目にかかりましょう。

                           野呂 一郎

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