俺の上にね、もう一人、俺がいるんですよ。
■俺の上にいるもう一人の俺
七代目立川談志のこの言葉を
弟子の立川志の輔師が紹介していた
(先日の『インタビュー 達人達(たち)』)。
これは、
噺の中の登場人物が、
いま正にその人物を演じている自分にも
予測できない出方をするという
不思議な感覚を表している。
しかし私は、
噺家独自のこの感覚を、
万人に通じるある種の体験に
重ね合わせてみたい。
■自分のなかにいるもう一人の自分
人は、
いや少なくとも私は、
(感覚としては頭脳で考える)自分のなかに、
別の、
(感覚としては心の奥に存在する)
もう一人の「自分」を
確かに感じ、
話しかけ、
あるときは共に喜び、
あるときは励ましつつ生きる。
そして数多くの人が
この「もう一人の自分」
について似通った話 をする。
■もう一人の、自分とは違う「自分」へ
談志が言っていた、
そして志の輔師も同様の感覚を持っていた
「俺の上にいるもう一人の俺」
とは、まさしく
噺家でなくとも多くの人が感じている
「自分のなかにいるもう一人の自分」
が、思いもよらず噺の
登場人物に影響を与える体験を
表現したのではないか。
*
そして、不思議な話だが
この「自分のなかにいるもう一人の自分」を
(私のように)どんなにダメでもダメと思わず、
常に励まし続けることで、
人生は幾分かは生きやすくなるのである。
※「高座(こうざ)」=座布団に座り、噺家が演じる場をこう言います。
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