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eternal flame…永遠の愛 5

~前回のあらすじ~
はじめての悦子とアミールの2人だけの旅。
目的地は紅海広がるフルガダという町。
悦子は当時のことを今のことのように
感じていた。
今でこそ飛行機での移動となっているが、
当時はバスで6時間の長旅…だからこそ、お互いを
確かめ合う時間でもあった。
あれから随分と長い時間が経っていたことを
懐かしく思っていた悦子を乗せた飛行機は
今の生活の場でもあるフルガダ国際空港に
到着した。雑誌記者の恭子と共に…
今回もお楽しみください!


「悦子さん、私…いつの間にか寝ちゃってた!」
恭子は大きく伸びをして、大きなあくびをしていた。

「慣れない長旅だったから、お疲れなのよ。
 是非、うちではゆっくりしていってね♪」

「ありがとうございます。あぁ~、仕事のこと忘れて、 ずっとのんびりしていたいなぁ~!」

悦子もエジプトを訪れるたびに、恭子と同じ気持ちだったことを思い出した。

「恭子さん、心からそう願えば現実になるわよ♡」
悦子は気休めなんかではない、本音を伝えた。

「えぇーっ、でもお仕事しなきゃ…ご飯食べていけないじゃないですか!」

「そこよ、そこ。今のお仕事は本当に日本でしか
 できないことなのかな?って疑ってみてね!
 さぁ、我が家に向けて出発!行きましょ」

悦子は恭子の返事を待たずにバゲージクレーム
(荷物受け取り所)に向かった。

空港はヨーロッパからの観光客でごった返していた。
いろんな言語が飛び交う様は悦子に海外を意識させ、ここは日本ではない緊張感を与える。

「はぁ…さてと、お迎えを呼びましょうかね」
悦子はフルガダの家の管理を任せているファトマにお迎えの電話を入れた。

「悦子さん!お迎えって…ウーバーとかタクシー
 じゃないんですか?」

「ウーバーはホント最近なのよ、恭子さん…
 昔はタクシー使ってたんだけど、日本人だから
 なのかわからないけど、ボラれる確率高くてね…   アミールに愚痴ったら、家の管理をお願いしてるファトマに全部頼んだから大丈夫!という運びになったのよ。これで安心♡」

「ホント、アミールさんって、悦子Love♡ですよね!」
恭子は自分のことのようにキュンキュンしてた。

「お迎えまで少し時間がかかりそうなので、
 ロビーで冷たいものでも飲んで待ってましょ♪」

外の景色はまだまだ海とは程遠い、砂地広がる
茶色の世界…
気温はこの時点で43度、太陽の下では一瞬で
肌がこんがりとトーストされる。
しかし、悦子は日焼けには無関心…
イスラムの文化には大変失礼だとは思いつつも、
いつも半袖と短パン姿だった。

アミールには肌の露出をなるべく控えるようにと
注意をされたこともあったが、
ブロンズ色に焼けた肌を楽しむ悦子の姿に
何も言わなくなっていた。


「ひゃ~!アイスコーヒーが渇いた喉に
 染みわたりますーっ」
恭子は一気に飲み干した。

「恭子さん、まだ外に出ていないでしょ(笑)
 外気温43度らしいから、気を付けましょうね♪」

「そりゃヤバい💧日焼け止め塗らなきゃ!」
そう言って、恭子は化粧ポーチから乳液を出したた。

「悦子さんも良かったら、お使いになります?」

「私は大丈夫よ。ありがとう」

恭子は全身に乳液を塗っていた。
その時、悦子の携帯がピロンと鳴った。
ファトマから着いたよ!のメッセージだった。

「恭子さん、お迎えのファトマが着いたらしいの、さぁ!参りましょう」

2人は出口に向かった。

ファトマは2人をを丁寧に迎えてくれた。
悦子はこのファトマのいつでもウェルカムの姿勢が大好きで、また帰りたくなる気持ちにさせる。

「ウェルカムバック!悦子!」
両手を広げてファトマが叫んでいた。
悦子はファトマの胸に飛び込んだ。

「ファトマ!ありがとう♡ただいま!
 こちらが日本から来て下さった雑誌記者の
 恭子さんです」

「ハジメマシテ。ファトマデス」

「わぁ!はじめまして、恭子です。
 ファトマさん、日本語が話せるんですね!」

「スコシダケデス」
ファトマはそう言って、2人のスーツケースを
トランクに入れた。

「恭子さん、ファトマは日本語を勉強中なの。
 私がこちらに来たときは、日本語で会話して
 欲しい!っていうくらい努力家なのよ、
 アラビア語にヒーヒー言ってる場合じゃないわよね」

「素晴らしいですね!日本人の私でさえ時々、
 あれ?これで合っているかな?んて思うし、
 世界で一番難しい言語なのに…
 挑戦する姿勢が素敵です」
恭子は大きく頷いた。

「ワタシハ、ニホンガスキデスヨ。
 ダカラ、ワタシハガンバリマス。」

「ひぃーっ!もう完璧!パーフェクトです」

そう言って足をバタバタさせていた恭子に

「恭子さんって、本当にボディーランゲージが
 見事よ!それこそパーフェクト」
と悦子は笑った。

「アミールサンニハ、レンラクシテオキマシタ」
ファトマが運転をしながら悦子に伝えた。

「わぁ!やばい!メッセージ入れるの忘れてた!
 ファトマ、アミールは何か言ってた?」

「イイエ、アリガトウ ヨロシクイッテマシタ」

「ファトマ、ありがとう」
そう言いながら、悦子は携帯でアミールに到着の
連絡を入れていた。

”無事、フルガダに着きました。今、ファトマの車で家に向かってます。あなたが居なくて寂しいけど、恭子さんと一緒にフルガダを楽しみます♪
Love you♡ ”

送信した途端、すぐにアミールから返信が来た。

”僕がいないフルガダは寒くて眠れないだろう?
 大丈夫、今日中に仕事を片付けて明日の夜には
 君のそばに行くから、待ってて!
 愛してる、アミールより”

「えっ!明日?って何よ!」
悦子は呟いた。

「悦子さん、どうかしましたか?あ!
 もしかして…アミールさん、もう悦子さんが
 恋しくなってカイロにもどれ!みたいな?」
恭子はニヤニヤしながら悦子の顔をのぞいた。

「アミールサン、アシタコッチニキマス。
 タブン、ソノレンラクダトオモイマス」
悦子よりも先にファトマが答えた。

悦子は時々、アミールの行動が読めなくなる
ことが気になっていた。
せっかく恭子とゆっくり話ができる
と思っていたのに…

「悦子さん、愛されているんですよ。
 私、羨ましいなぁって思います。
 女性って求められると嬉しいじゃないですか。
 私もゆっくりとしたかったのですが、
 明後日にはここを出発しないと…」
恭子は流れる景色を目で追っていた。

「えっ!恭子さん、そんなに早く発ってしまうの?」

「そうなんです…空港に着いた時に会社から連絡が
 入って、”急ぎの案件があるから油売ってないで
 早く帰って来い!お前の机が無くなってるかも
 しれんぞ!って。ま、嫌みな上司なんです」

この時、悦子は何となく…会社からの連絡というのはウソのように聞こえた。
これは、多分…彼からの連絡なんじゃないかな?
恭子のテンションの高さといい、そわそわしている感じといい…

でも、彼はいないって言っていたけど…
これは何かありそうだけど、黙っておこう。

「残念だけど、こちらにいるまでは楽しんでいってほしいなぁ~。アミールも明日の夜にはこちらに来るみたいだし、みんなでパーティーしましょうよ!ファトマもご主人とお子さん連れてきてよ! 私、久々に和食でおもてなししちゃう~」

「デハ、ワタシハエジプシャンリョウリデ!」

「わぁ~嬉しい!和とエジの融合ですね。
 私もお手伝いしま~す」

「じゃ、決まり!ってことで」
悦子は親指をたてていいねのポーズをした。

いいねのポーズとは裏腹に悦子は
アミールの突然の行動癖がとても気になっていた。

昔にもそのことで悩み、泣いたことがあった…
悦子はその事をアミールに伝えたことも
あったが、はっきりとした答えも出ず、
所詮文化も違う異国同志の人間…
理解し合うことはできないのか?と諦めていた。

人は自分が当たり前にできてしまうことや
当たり前に感じていることを前提に
話や物事を進めてしまうように思う…

悦子はアミールと出逢ってから、
たくさんの『違い』や『前提』を経験した。

だからこそ、彼の突破的な行動には
何か不思議な違和感を感じずには
いられないのだ。

悦子はあの時も…のあの時を静かに
手繰り寄せていた。


次回、eternal flame…永遠の愛 6
お楽しみに♡



 
 





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