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B線TNS日記59 外国語という果実をかじるということ

某月某日 TNSにて

私の母国語はもちろん日本語だ。その後英語とフランス語を学び、どちらも仕事ができるレベルまで頑張って習得した。特にフランス語に関しては勉強嫌いの私がよくやったと自分をほめてあげられるぐらい集中して学んだ。

一般的にフランス語は日本人にとってはとっつきにくいというイメージを持たれていると思う。そして実際、発音や文法などが日本語とはかけ離れている故、覚えることがてんこ盛りのなかなか手強い言語である。その習得には時間もかかるし根気が必要になる。

学生時代、「こんなに勉強したのに、この映画のこのセリフ、まったくわからなかった。こんなに頑張っても聞き取れないならもうフランス語なんてやめてしまいたい......。」と何度も挫けそうになった。しかしながら大学での専攻であるこの言語習得を諦めたら、なんのために上京してきたのかわからなくなる。私はなんとか踏みとどまった。そして、まだまだ初心者の時期に1か月ほど憧れのパリにホームステイしたことでこの言語を話せるようになるんだという強いモチベーションが甦り、そこからは目の色を変えて勉強した。その後のアンジェへの留学を経て、大学卒業までにフランス語検定1級、パリ商工会議所のビジネスフランス語の免状を取得するレベルまで頑張った。もちろん現在でも勉強中の身である。

そして最近、また新しい外国語を習い始めた。韓国語である。

私のもともとの韓国語知識は皆無。あいさつぐらいしかしらないし、ハングル文字については、アラビア文字と同じくらい何を書いてあるか全くわからない状態からのスタートである。

仕事で使うことなんて全く念頭になく、ただただヲタ活したり、韓国ドラマを観るのに役立てたいという軽い気持ちで始めた学習だ。学校に行くわけでも誰かに教えてもらうわけでもない。日々の空き時間に携帯のアプリや辞書機能で少しずつ自分で勉強する。歌詞で気になる言葉や、ドラマのセリフでよく聞く表現が出てきたらその都度辞書で調べる。そんなことしかしていない。

根性論でフランス語を勉強した身としては、こんな中途半端でいい加減な韓国語の勉強では、いつまで経っても上達しないだろうし、ある程度のレベルにまで到達できなければ、学習する意味もないし、それに費やす時間が無駄になってしまうのだろうなという悲観的な考えを消すことができずにいた。

しかし、だ。最近そのいい加減な勉強の成果が出てきているのを実感する場面が多々あるのだ!

アイドルのトークを聞いて、「あっ、これ今日食べたものを聞かれてるな。」とか「実家で飼ってる犬のことについて話してるぞ」とかいうことが、わかるようになってきたのだ。

今まで呪文を唱えるように歌っていたK-POPの歌詞も、部分部分わかるところが出てくる。

そのたびに信じられないくらいの喜びがこみ上げてくる。胸が高鳴り、鼻の穴が大きくなるほどに得意になってしまう。

精度が高まってきているとは言われているが、時にめちゃくちゃな訳を出してくる自動翻訳サービスに頼らず、自らの力で例え一文でも読めたり理解することが出来た時、その言語を話す国や人、文化についての興味や知識欲がぐんと高まる。そしてそれが外国語を学ぶ醍醐味であることを思い出した。

完璧を目指す必要なんて全くないのだ。母国語以外の言葉が、少し聞けて、少し読めて、少し話せる。それだけで世界は大きく変わる。

外国語の果実をかじることは、まったく無駄なことではない。ほんの少しかじっただけで、食べきられなかったとしても食べた実のかけらは私の身になり、心になっていくんだ。

(そんな最近の思いを、フランス語レッスンの生徒さんに熱く語っていたら、その熱が基盤にでも伝わったのだろうか、パソコンがいきなりダウンした。)




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