場の理論(Field Theory)とファシリテーションの場について
Kazuo Kashimaxさんの相対性理論とファシリテーションの場についての記事を読んだ。
僕の興味を惹いたのは、自然科学を基礎としてファシリテーションの場を観る視点を探せないかという設定だ。
はじめ相対性理論からファシリテーションの介入に関する知見を見出すのかと思い読み進めた。
ファシリテーションの場を見る視点の考察へと進む。
そうして、どちらかというと物理学に代表される自然科学的なアプローチも参考にしつつ、ファシリテーションの場を観察、評価することによる介入に関する再現性のある知見を探究しよう!という誘いとして理解した。
そして、この記事に触発されて思い出したことを記事にしてみようと書き始めたのだ。
実は、『場の理論』という言葉については、少なくとも1996年ぐらいから興味をもっている。
ここに書くにはあまりに稚拙なものかもしれないが、記憶にあるものをそのまま書いてみる。
僕が『場』に興味をもったきっかけは、『プロセスワーク』という『ユング心理学』から発展した介入技法で、個人だけでなく集団や社会、世界を扱う方法論に出会ったことである。
プロセスワーク創始者のアーノルド・ミンデルは、ユング心理学の分析家でありつつ、MIT(マサチューセッツ工科大学)出身の量子力学博士でもある。
先の記事は相対性理論から話が始まるが、その中に電場、磁場、重力場と並び、相対性理論とはまだ統合されていないが、『量子場』という概念が出てくる。
アーノルド・ミンデルは、この『量子場』とユングのいう『集合的無意識』の振る舞いに共通性を見出し、個人や集団の振る舞いに応用する視点をつけ加えたのだ。
人間科学・社会科学的な場におけるさまざまな影響や振る舞いについての性質を、量子力学の『場の理論(Field Thory)』から推定して、手法として実験、探究を行なってきたと言える。
のちに『シャーマンズボディ』という著作では、ユング心理学、量子力学、メキシコのシャーマニズムが実は同じパラダイムの表現の違いとして統合的にまとめ上げていく。
ここまではプロセスワークの話なのだが、『場の理論』をベースに、僕はファシリテーションの場で長きに渡り実験してきたことがある。
それはコミュニティファシリテーションの探究期に『Deep Listening』と名づけた方法に結晶化していくものである。
この僕の実験に関連する、『場の理論』の中で特徴的なところは、『非局在性(Non-Locality)』という概念で、簡単にいうと『フィールド(量子場)』を通じてあらゆる情報が微かなレベルで共有されている(つまり局在していない)という性質である。
言い換えると、個人と個人の振る舞いには観察できないレベルで微かな影響を及ぼしている。逆に言えば『フィールド』を通じて個人個人がつながり合ってさまざまな振る舞いを生み出し合っていく。
ということが言える(まぁ、自然科学的立場からすると、トンデモ科学的なんだけどもね)。
そこで、ファシリテーションの場において、これを前提とすると、こんな感じの仮説が立つと僕は考えた。
誰かが何かを場で言おうとして言葉になりきらない場面において、その人の近くに行き、『フィールド』に意識の焦点を当てていくことで、その人に立ち現れようとしている『声』を聴く(感じとる)ことができる。
これを2004年から2018年まで関わってきたファシリテーションの場で実際に探究してみたのだ。
これは科学と言えるかはわからないが、実践する中で精度が高まっていくのは感じた。
2011年以後はさまざまな場で具体的な手法として当たり前に使っていた。
ヒントは、量子力学の場(フィールド)とユングの集合的無意識が重なった概念というところにあった。
つまり、ポイントは、フィールドに意識の焦点を当てるということが『集合的無意識』に意識のチューニングをしていくことなのだ。
意識のチューニングというと、ますます怪しいことのように感じる人たちがいるだろう。
実は怪しいことは何もなくて、意識のチューニングってのは、普段誰もが何となく体験している意識状態を自覚的にコントロールすることなんだ。
ほら、電車に乗って座ってるとき、フッと眠りに落ちそうになって起きてるような、夢を見てるような瞬間って経験あるでしょ。
あるいは、めっちゃ睡眠不足とか疲労で頭がボーッとしてるときとか、お酒を飲み過ぎてだいぶフラフラしながら意識を保ってるみたいなときとか。
このような意識状態のとき、意識が集合的無意識に入り込んでいってる(と考えられる)。
なので、頭を少しボーッとしながら身体で感じ取っていくようなやり方が『Deep Listening』なんだ。
僕は数学的なので、実験の精度を高めるために、次の条件でこれを実証的に試みた。
・『Deep Listening』で聴き取り、言語化するとき、相手の話していないことを話す、・・・あるいは相手が使っていない言葉を用いて表現する(すでに話していることは『フィールド』にアクセスしなくてもわかるから対象外)。
・それが妥当であるかどうかは、相手が判断する。
・それが表れ出てきたとき、『場(Field)』の全体の反応をとらえる(『場』はひとつのエネルギーシステムであるから、表現できなかったものが表れ出たとき、システムとして影響が広がることも仮説されるから)。
この条件で実際の場でファシリテーションしてみて、これまで次のような反応があった。
「そう!まさにそれです!私が言いたかったことは!」(おぉ!マジっすか?!自分も驚く)
「読心術ができるんですか??!!!」(読心術とか知りませんけど)
「ノリさんにはいつも心が読まれてる気がして怖いです!」(心を読んだり、当てたりできません)
なんかカルトっぽいことになってきて、逆に怖い(苦笑)。
でも、ある程度、この『Deep Listening』は訓練でできるのだけは確認できた気がする。
さて、長くなったけど、この方法を応用すると何ができるかをあと書いておきたい。
ファシリテーションの場で、システム的に何か起きてきているときにも、この意識のチューニングをしていくことで、何が起きようとしているのか、流れとしてどこへいこうとしているのかを感じとれる。
それを組織や社会において応用すると、その組織がこうであるとか、社会はこうなろうとしているという傾向性も感じとれる。
これは個人でも同様で、その人とある程度時間を過ごすと、意識のチューニングを合わせれば、その人の傾向性が感じとれる。本当はこうなんじゃない、みたいなことね。
ADS(うちの会社なんだけど)の仲間から、「ノリさん、占いやったらいいんじゃない!」って言われたことがあったな。
「『そろばん占い』が出てくる古典落語があるから、それをしよっか!」とか言ってふざけてたけど、ちょっと誤解のないように書いておくと、これは何か真実を言い当てるとか、僕が何かわかってるとか、そういう質のものじゃないんだ。
僕が感じとったことを話すことはできるけれど、それが本当に役に立つかは相手が決めることなんだよね。
ただ元パタゴニア日本支社の支社長だった辻井さんが、僕のことをよくディスカッションパートナーという表現をしてくれていて、これはかなり僕をある意味端的に表している気がする。
意思決定に必要なことを見つけ出すことが得意なのと、意識化・言語化されてないことを引き出すことも得意だし、さらに広範囲に影響する要素をエコシステムとして解像度高く捉えて、可能性を示すことも得意だから。
それも、すべてとは言わないが『場の理論』の世界観が僕に発達させた能力だと思う。
Kazuo Kashimaxさんの記事をきっかけに、『場の理論』『Deep Listening』、そしてそれらの応用まで語ったなぁ!
なんか手法を身につけるための手順みたいなのを再発見する機会にもなったような気がする。
ありがたや!
【蛇足】
『場』絡みで統合的に扱えないか興味を示していた本を並べてみよっと。ちょっと似非科学みたいなのもあるのだけどね。
クルト・レヴィン
社会科学における場の理論 (社会的葛藤の解決と社会科学における場の理論)
https://amzn.asia/d/0CYeFpo
↑
量子力学のインパクトから社会科学にアプローチしようという流れで生まれた場の理論の古典みたいな本。
ルパート・シェルドレイク
生命のニューサイエンス―形態形成場と行動の進化
https://amzn.asia/d/fttwy2h
↑
形態形成場という概念を取り入れて進化について考察しようとしている。勝手な憶測だが、場という概念が流行ってたんちゃうかな。
デヴィッド・ボーム
全体性と内蔵秩序
https://amzn.asia/d/8CniuJn
↑
ファシリテーションとかいう人たちは『ダイアログ』の方読んでるかもしれないけど、彼も量子力学博士で、その世界観からいろいろ構想している。
他にもいくつかあるけど、思い出せないから後で蛇足の加筆するわ。
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