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相対性理論はファシリテーションの場に何を提供するか

この記事は「ファシリテーター Advent Calendar 2020」12月5日のために投稿しました。

先日、「場づくりの自然科学」というコミュニティの第1回目の会合に参加しました。この会合は、ファシリテーションの「場づくり」や「ヒトの変容」について、自然科学の視点から観ていくことで、ファシリテーションに新たなアプローチやあり方を探求するものです。

本稿では、そこでの学びから、私の感じた探究テーマを紹介します。

相対性理論は重量場に関する理論だ

物理学では、私たちの周りに幾つかの種類の場があるとしています。

そのひとつが、磁場です。
磁場は、方位磁針が北を示したり、厚紙の台紙の上に砂鉄をまいて、下に磁石を置くと磁力線にそって砂鉄の模様ができたりすることで、その存在を確認できます。

その他にも、電場があります。
これは、電荷に力を及ぼす空間(自由電子が存在しない空間。絶縁空間)の性質の一つです。んん? 時間によって変化しない電場を静電場(せいでんば)と呼びます。んんんん?
でも、以下の写真をみると、電場のことが何となく分かりますね。静電気により、髪の毛が逆立っている少女です。

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(Wikipediaより引用、Biswarup Ganguly, CC表示 3.0) 

では、本題の重力場。
重力場とは、万有引力(重力)が作用する時空中に存在する場のことです。万有引力なら、ニュートンのりんごの話で、馴染みがあります。で、万有引力の法則とは、「この宇宙においてはどこでも全ての物体は互いに引き寄せる作用(=引力、重力)を及ぼしあっている」とする法則です。
アインシュタインは、この重力場に関する理論として、特殊相対性理論を1905年に、一般相対性理論を1915年から1916年にかけて発表しました。
これら相対性理論では、物体の周りでは、空間が伸び(=長くなる)、時間はゆっくりになる(=遅くなる)という現象があるということを、数学的に説明しています。(以下、その一部を説明した解説動画を見つけました)

アインシュタインは、相対性理論の中で、時間や空間はゆがむもので、そのゆがみは水面を伝わる波のように、宇宙を伝わっていくと考えました。その波を「重力波」と呼びます。そして2015年、米・ワシントン州ハンフォードとルイジアナ州リビングストンに設置されているレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」によって、ついに重力波が世界で初めて検出されました()。100年たって、思考実験の成果が実際に観測され、検証されたということです。因みに、観測に成功した3名の科学者は、異例のスピードで、2017年にノーベル賞を受賞しました。

なお、いま紹介した磁場、電場(両方合わせて、電磁場)、重力場以外にも、量子場というのもあります。それぞれの場は、同じ時空間をそれぞれの視点で観察し、理論として体系化されています。

ファシリテーションにおける場を捉える視点

物理学における場を、簡単に学んだところで、ここからは、私たちが扱うファシリテーションの場について考えます。

私たちは「この場は、雰囲気が悪い」「いい場を作る」「この場に、心身をゆだねる」など、ファシリテーションにおいて「場」という言葉をよく使います。また、それをとても大切に扱っています。

では、この「ファシリテーションにおける場」とは、何なのでしょう。
先の物理学の視点で見れば、その場には、磁場も電場も重力場も、存在しています。そして、それらを必要性に応じて使い分けています。

ファシリテーションにおける場を見る視点とは、いくつあるのでしょう。
何名かに聴いてみました。
・ 会場の物理環境(明るさ、広さ、香り、レイアウト、温湿度、色彩等)
・ 個人の感情状態(開放的、制御的、抑圧的、自発的、犠牲的、無関心等)
・ 参加者間の関係性(平等、オープン、階層、協調、対立等)
・ 参加者間の多様性(表層(性別、人種、年齢、肩書、役割等)、
  深層(性格、スタイル、問題意識、好き嫌い、価値観、信念等))
・ 全体の雰囲気(緊張、緩急、疲労、温度差、熱量、一体感など)
・ ファシリテータと参加者のトポロジー (1⇒n、1⇔n、n⇔n、
  N(主客一体)等)
・ 場のデザイン要素(目的、目標、進め方とスケジュール、メンバーと
 その役割、ルールと方針など)
まだまだあるかもしれません。

つまり私たちは、上記のような視点の幾つかを使い、場を観察します。そして観察して得た情報(データ)をもとに、評価・判断します。評価・判断の結果、何らかの介入策を実施します。そして介入策の結果、再び場を観察します。この繰り返しで、ファシリテーションを行っていると言えます。

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ファシリテーションの場の理論をどう作るか

再び、物理学にもどります。
ニュートンは、リンゴが落ちるのを見て、万有引力の法則を考えたと言われていますが、どうやらそれは作り話のようです()。それはさておき、ニュートンにしろ、アインシュタインにしろ、多くの観察データから、そこに存在する法則や理論を探しだし構築しています。そして、この法則や理論があることで、再現性のあるシステムができています。

例えば、アインシュタインの相対性理論があるから、GPSによるNaviシステムが機能しています(

私たち、ファシリテーターは、とかく介入策(問い、受容、対話、発散・収束、合意形成)に重きを置きがちです。もちろん、介入策も重要です。しかし、適切な介入を行うには、適切な場の観察に基づく評価があってのことです。そして、仮にファシリテーションの場における法則や理論を構築できたら、より効果的なファシリテーションが実施できるのではないかと夢見ています。

ファシリテーションの場における理論を作るには、物理学にならい、まずは現象の観察から始めることが、第一歩でしょう。

あなたは、ファシリテーションにおける場を見る視点として、何の観察から始めますか。


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