見出し画像

コンセンサス型意思決定とヴィジョンフューズドワークショップの関係1

これ、ほとんど誰も読まなさそうなテーマやな。

だってどちらも僕が創った方法で、明示的にやったことある人は限られているやつだから(笑)。

そのほとんど知る人のいない方法論の関係について考察する記事を誰が読むというのだ。

でも今、これを考える必要性があるので、書いていくことにする。

コンセンサス型意思決定とは

まず『コンセンサス型意思決定』を紹介する。

具体的には、『賛成(イエス)』『反対(ノー)』『決まったことに従う』の3つの意思表示方法を用いて、『本当の意味で』『反対(ノー)』がなくなるまで案を練り上げて意思決定する方法だ。

これ自体は『合意形成プロセス』で用いられる方法そのままなのだが、それを『コンセンサス型意思決定』と名づけ直したところは、その基本的な考え方が『合意形成プロセス』よりも条件『本当の意味で』が加えられているからだ。

『本当の意味で』だと曖昧になるのだが、『本当の意味で』あるかどうかは場の設定とファシリテーションにとても依存するからだ。

それは、次の仮説に立つのである。

もし本音で(忖度することなく)対話ができるなら、『合意形成プロセス』は集合知化した統合的提案を生み出す。

ということに気づいたからだ。

逆を言えば、本音が言えない、忖度している状況では、『合意形成プロセス』を選択しても集合知化した統合的提案にはならない。

だから『本当の意味で』『反対(ノー)』がなくなる場の設定とそこに徹底的にこだわったファシリテーションが集合知化した統合的提案には不可欠なのである。

一般的な『合意形成(コンセンサス・メイキング)』の議論は、ほとんどは少数派の声を尊重できるとか、決定事項へのコミットメントが生まれるとか、そういった効果の議論である。

僕が注目したのは、むしろ『反対(ノー)』がなくなるということは参加者の気づきや要望が統合された状態を生み出す点にあった。

東日本大震災の津波によって福島の原発事故が起きた。これについて国会で共産党が2011年より以前に昔にあった津波の規模から津波被害の想定が間違っていないか、対策の見直しを当時の政権与党である自民党に問いかけていた。

しかし、それは専門家によって対策は十分であるとして何ひとつ見直すことがなく、実際には共産党が指摘した規模の津波が原発を襲ったのだった。

もし『コンセンサス型意思決定』のように、この共産党の気づきを統合して、昔あった規模の津波を想定した対策を考えて見直しただけでも、まだ事実上収束していない甚大な被害を軽減できたのではないか。

つまり、『コンセンサス型意思決定』はさまざまな異なる立場の気づきを統合することによって、チャンスやリスクに強い、その時点での最適解である案を生み出すことができる方法なのである。

しかし、そのためには単純に『合意形成』を目指すのではなく、最適解をみんなで生み出すという参加姿勢やそれに伴う考え方や進行の仕方が必要となる。

そのような方法論として発展したものはまだ見たことがなかった。

そのことにパタゴニア日本支社長(2009年当時)の辻井さんから、この『コンセンサス型意思決定』を用いて全員参加で戦略策定をしたいというオファーをいただき、結果、2018年まで毎年オフサイトミーティングという形で試行錯誤しながら行っていった。

この10年間のパタゴニアの実践から当初想定してなかった効果や方法論としての精緻化、また新たな可能性などが発見できた。

その後、『未来をソウゾウする政治プロジェクト』というプロジェクトがあり、議員向けでもワークショップをしたり、その流れで『コンセンサス型意思決定』を使った市民による政策策定などと幅広く応用を試みることができた。

『コンセンサス型意思決定』のおもしろいところは、考え方や姿勢がわかると、その作法を離れて対話とか意思決定の意味が深まって、普段のコミュニケーションも大きく変わるところだ。

相手が『反対(ノー)』を出す意味は、今の案にはまだ気づきが統合されていないということになる。

これは、例えばパートナーシップでの普段のコミュニケーションでも起こる場面だ。

そのとき、『コンセンサス型意思決定』ではどのようにとらえ、どのように『反対(ノー)』を扱うかを知っているのと知らないのとでは、コミュニケーションの方向性は大きく変わるのだ。

『コンセンサス型意思決定』を学校教育でも導入して、子どもたちが学校生活のさまざまな場面を通して、対話的に気づきを統合した(多様性を尊重した)案を生み出す態度や考え方を学べたら、それは民主的な態度と考え方を身につけることになるだろう。

『コンセンサス型意思決定』の利点は、大きく3つある。

・参加者全員の気づきを統合し、チャンスやリスクに強い最適解を生み出すことができる。

・参加者全員の気づきを統合する上で必要となる見方・考え方・話し方・聴き方を身につけることができる。

・見方・考え方・話し方・聴き方を身につけた結果、多様性を尊重する民主的な態度・考え方を実際的に身につけることができる。

そして、それらの延長上には、豊かな人間関係の構築や強い器としてのチーム構築が可能になる。

これは組織開発の分野に対応させると、高度な成果を生み出すことだけでなく、チームビルディングのトレーニングのことと、リーダーシップ、コーチング、コミュニケーション力など人財育成のこととを包括的に発展させることができることになる。

大口を叩いてきたが、まだまだ多様な事例が十分でないため、組織の規模や組織文化や経営方針などでどのようなカスタマイズが必要かは、実際に試行錯誤しながら開発する形にはなる。

これ、やりたい経営者、教師、自治体首長、議員や市民団体などいらっしゃったら、気軽にお声かけください!

ここまでで十分長くなったので、次は『ヴィジョンフューズドワークショップ』の説明を第二部として、それから関係について第三部として書く感じで三部作にする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?