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メンターが見つかれば人生は9割決まる! (井口 晃)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本していただいたので読んでみたものです。典型的なHow to本ですね。

 “自らが理想とする人生を実現するための最も効率的な方法は「メンターを見つけ、その人を徹底的に真似る」ことだ”。本書で伝えたい著者井口晃さんのメインメッセージです。

 ここでいう「メンター」とは自分が成功したい世界での成功者であり、その意味で “人生のロールモデル” となる人のことです。
 そういうメンターを見つけ、そして、「モデリング」という手法でそのメンターの「発言」「行動」「思考」「感情」に関するパターンを加速的に身につけていくのが成功への最短経路だと著者は説いています。

 もちろん、ずっと永続的にメンターを真似し続けるわけではありません。

(p68より引用) 私はメンターに学び続ける期間は1年間が理想だと考えています。1年間で、メンターから集中して学び、その後は独り立ちしていくことが大切です。・・・こう期限を切っておくことで、この期間にすべてを学び切るという決意もできますし、貪欲に学んでいけるのです。

 著者が本書で薦める方法を実践する上で最も重要なポイントは「いかにして最適なメンターを見つけるか」という点です。
 もちろん、著者はこの「メンターの選び方」についても、いくつもの条件を紹介しています。「現在トップであり、3年後もトップであるような人」「本を2冊以上出している人」「“再起不能と思えるような失敗”をしている人」・・・と続きます。
 が、私の場合、このあたりから、ちょっと著者の主張に対する「納得感」が薄れてきました。

(p116より引用) メンターに接触する方法の王道は、次の通りです。
①メンターが書いた本を読む
②メンターの勉強会、セミナー、講演会を受ける
③少人数に限定したメンターのプログラムを受講する
④直接あって1対1で学ぶ

 さらに、説明がこう続いてくると、著者が想定している「メンター」というのは、かなり「特殊な業界の特別な人」をイメージしていると考えざるを得ません。多くの悩める人たちに対する現実的なアドバイスとは乖離しているように感じます。

 もう一点、“目標とすべきロールモデル” を意識し、それに一歩でも近づこうと努力することは全く持って正しい姿勢だと思います。しかしながら、私は、「有無を言わさず真似すればいい」という論には十分な説得力を感じません。

 決して“真似”自体を否定するものではありません。良いと思ったものはどんどん真似をすればいいでしょう。
 ただ、メンターとして据えた人物の一体「どこ」を真似すればいいのか?真似ができるメンターの特性は、真似をしようとしている人の知覚で捉えられるものに限られますが、メンターが成功した要因は「表出」したものだけでしょうか?表出したものだけを摘み取ったからといって、その人物の「基質」を自分のものにすることはできないでしょう。
 濃密な師弟関係とかでないと「師」の全てを学び取ることはできないでしょうし、世の中の多くの人が「メンター」とそこまでの親密な関係を築くことは非現実的です。

 類似事象に対する表層的な取り回しはメンターと同じようにできるようになったとしても、姿勢・思考の「基」が確立できていないと、応用問題への対応にはお手上げです。



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