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ビジョナリー・ピープル (ジェリー・ポラス他)

何をするか

 「ビジョナリー・カンパニー」の著者たちが書いた「ビジョナリー・人物版」です。

 10年間200人以上の「継続的に成功をおさめている人」に対するインタビューをもとに、それらの人々の共通項を明らかにした著作です。(超有名人もいれば、日本ではあまり馴染みのない人もいます)

 著者によると、その継続的な成功の鍵の「共通項」は、「意義」「思考」「行動」の3つの要素でまとめられると言います。

(p42より引用) ビジョナリー・ピープルの本質を探求する過程で、言い換えれば永続するだけの価値を持つ成功を探求する過程で、筆者は次のようなことを発見した。三つの要素、すなわち自分なりに定義した意義創造力のある思考スタイル、そして効果的な行動スタイル、これらの三つの要素は、三者相互の調和がとれたときに、自分の足元を固める礎となり、ベストプラクティス(成功体験)を持続させてくれる、そうした事実の発見だった。

 特にその分析の中で抽出された彼らの際立った特性は、「自らのビジョンに向かって突き進む」という姿勢です。

(p342より引用) 成功をおさめている人は自分の目標、大義、あるいは天職を追い求めるときに他人の同意をあてにはしないという事実が改めて確認された、ということであった。成功している人たちは社会的な重圧があるからではなく、社会的な重圧に逆らっても自らの責任をまっとうする。彼らは他人が気に入っていることよりも、自分が大好きなことに必死に打ち込んでいる。たった一度の挫折によって自分を見失ったり拘泥したりすることはない。スケープゴートを探すこともなければ、思うようにことが運ばないときに非難がましいことを口にすることもない。

 本書で言う「意義」とは、「自分が信念と情熱をもって追求する対象」であり、「自己の価値観が具現化されたもの」のように思います。「自分がなすべきこと」です。
 当然ですが、「何をするのか」が最も重要なことです。

(p174より引用) カリスマ性のあるリーダーという考え方は、最近、メディアの間で評判が悪い。・・・個性によって、永続的な成功がおさめられるかどうかが決まるのではないからだ。重要なことは、その大切な個性を糧にして何をするのかということだ。

 本書で紹介されている人々は、必ずしもいわゆる「カリスマ」とは限りません。(歴代の大統領や伝説の経営者も数多く登場していますが・・・)
 共通項は、「永続的」な「成功」をおさめている人々です。

(p207より引用) 完璧主義と持続性・・・両方の特質とも必要なもので、同時に、立派な成果を上げている人たちが懸命に求める高潔なあこがれでもある。不屈の努力がなければ多くのことをなし遂げられないのも真実だ。・・・
 ここで大切なのは完璧さでもなければ、持続性でもない。答えは明らかに、(持続させるべきものは何か)ということだ。意義を理解し、自分の挫折のポイントから学習することに意識を集中すれば、そのときには成長が待っている。

 ともかく、繰り返しますが、大切なことは「何をするか」です。

失敗と学習

 この種の多くの本で共通して説かれていて、やはり本書でも指摘されている点をいくつかご紹介します。

 まずは、「失敗」について。
 本書では、「敗者はそれを失敗だと言い、勝者はそれを学習だと言う」という項で、何人かのインタビューをもとに「失敗の効用」に触れています。
 たとえば、グラミー賞受賞者クインシー・ジョーンズ氏の台詞です。

(p209より引用) 「困ったもんだ。もちろん、いまさらという話だ。自分のおかしたどんな失敗からでも何かを学びとれるはずだ。でも、君が最後に、その忠告を実際の行動に移したのはいつのことだ

 この言葉は、「失敗が学習であること」を当然の前提として、実際それを「実行したか」、その「失敗を活かしたか」を鋭く突いたものです。

 もうひとり、アメリカ・インターネット界のオピニオンリーダー、エスター・ダイソン女史の言葉です。

(p211より引用) 「取り込む価値のあることならどんなことでも、それによって人は試行錯誤の連鎖の中に巻き込まれてしまうものだ。だからもがきながらさまざまなことを学ぼう。ミスをおかすときは、経験したことのないミスをすることを心がけようではないか

 本書で紹介されている人々は、失敗したときの再起動にも前向きの姿勢を示します。その際にもやはり大切なのは「意義」を意識することです。

(p200より引用) ビジョナリーな人が凡人と違うのは、後ろ向きの感情から建設的な行動へとすばやく方向を変える思考スタイルを確立しているからだ。つまり、自分の再起をどのように考えるかではなく、最終的に何をすべきかを決断しようとする、そんな思考スタイルのことだ。

 「失敗の意義」に加えて、最近の本でよく登場するのが、「セレンディピティ(思いがけない幸運)」という言葉です。

 ちなみに、この単語は、1754年、「セレンディップ(Serendip)の三人の王子」という物語に出てくる逸話をもとにイギリスの作家ウォルポール(イギリス首相R.ウォルポールの息子)が作り出した「造語」だそうです。

 「セレンディピティ」については、このBlogでも芳沢光雄氏の「数学的思考法」池谷裕二氏の「進化しすぎた脳」で紹介しました。
 本書でも、やはり同じような趣旨のフレーズがありました。

(p282より引用) 思いがけない幸運というものは、次のような人のところにやってくる。つまり、自分に与えられた課題に打ち込みながら、同時に、自分の目標にとって本当に大切なことを達成する針路を維持しているかどうかを判断するための、現実的な検証に踏み出す勇気がある、そんな人だ。・・・
自分の価値観に生き、神経を鋭敏にすることによって、彼らは、日常の生活、仕事の場面で経験する、避けられない、予見できない、しかも困難な出来事の絶え間なく続く流れを、幸運のほうへと転換できるのだ。

 偶然は必然だということです。
 今やるべきことに一生懸命に取り組むこと。やはり、それが成功への「王道」のようです。

(p188より引用) ある仕事をこなす優秀な存在になれば、幸運の扉は目の前で開いてくれる。人はあなたと一緒に働きたいと思う。だから彼らがあなたのためにチャンスを用意してくれる。あなたのほうから彼らを探す必要はない。というのも、たいていは彼らのほうからあなたを見つけにやってくるから

 ゴードン&ベティ・ムーア財団エド・ペンフォートの言です。


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