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データで検証! 地球の資源ウソ・ホント ― エネルギー、食糧から水資源まで (井田 徹治)

佐々田 法男

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

 東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所事故。一部で語られていた原子力の安全神話は一瞬にして跡形もなく吹き飛んでしまいました。

 本書では、原子力をはじめとしたエネルギー資源の問題を軸に、水資源・食糧資源・水産資源・森林資源・鉱物資源等の現状を豊富なデータにより紹介し、人類が標榜する「持続可能な社会」実現に向けた課題を浮き彫りにしていきます。

 私は、こういった関係の知識はほとんど持ち合わせていなかったので、本書から多くの気づきを得ることができましたが、その中から、エネルギー問題に関する解説部分の覚えです。

 今般の原子力発電所事故発生前までは、日本は世界でも有数の原子力発電依存国でしたが、他の国々は、すでに以前からかなりのペースで再生可能エネルギーへの転換を進めています。

(p139より引用) IPCCの報告書によると、伝統的なバイオマスを含めた再生可能エネルギーは2008年に64エクサジュールのエネルギーを供給、世界の総エネルギー消費のすでに12.8%をカバーするまでになっており、原子力発電をしのいでいる。

 太陽光発電に関しては、かつての日本はリーディングカンパニーだったのですが、諸外国で、電力会社への「全量固定価格買取制度(FIT)」の導入が進むにつれて遅れをとるようになりました。その他の風力・地熱・バイオマス等の活用も遅々として進んでいません。

 再生可能エネルギーのための資源量に関して言えば、日本は決して劣っているわけではありません。

(p283より引用) 確かに、石油や天然ガスなどの化石燃料資源や鉱物資源、レアメタルやレアアースの資源には恵まれてはいないが、日本は決して資源小国ではない。日本の国内とその周囲に存在する天然資源にいま一度、目を向け、それを保全し、持続可能な方法で利用していけば、激化する一方の世界の資源獲得競争の中で、日本は十分に生きて行けるし、国際競争の中で活路を見いだしていけるはずだ。

 海岸線も長く、火山活動も活発、森林資源も水資源も豊富にあります。また、いわゆる都市鉱山も未開拓です。ポテンシャルはまだまだあるだけに、この分野の積極的な推進は喫緊の課題なのです。

 さて、最後に、本書を読んで改めて思い知らされたことは、「地球環境は閉じた生態系だ」ということでした。
 エネルギー資源の問題は、バイオ燃料という点で食糧資源の問題と密結合ですし、水産資源の問題は、養殖場確保の点で森林問題とも関係があります。ともかく、ありとあらゆる問題は複雑に絡み合い「ゼロサム」さらには「マイナスサム」ゲームの様相を見せています。
 環境負荷を低減させる循環型社会実現に向けた取り組み、ハード的には技術革新ですし、ソフト的には価値観の転換が急務です。

 もうひとつ、何とかしたいのが「偏在」の問題です。
 エネルギー資源・希少価値鉱物資源の偏在もそうですが、食糧問題すなわち飢餓の問題には心が痛みます。

(p185より引用) 緑の革命の効果は頭打ちとなり、その弊害ばかりが目立ってきた21世紀だが、それでも年間の穀物生産量は22億トンにも上り、さらに増える傾向にある。・・・もし22億トンの穀物が公平に世界の人々に分配されたら、世の中から飢餓や栄養不足に苦しむ人はいなくなるはずである。

 1分間に10人近くの新生児や乳児の命が奪われている現状・・・、是が非でも「人の人たる叡智」を結集しなくてはなりません。

(注:本稿は10年以上前に書いたものですが、今(2022年)でも、環境やエネルギーに係る課題は解決に向かっているどころか、諸外国と比較すると相対的に退化しているようです。
 この国の危機感のなさと長期的展望の欠落は致命的です。さて、私たちとしてやるべきことは・・・)



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