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理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル (犬塚 壮志)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 “いかにも今どきの新刊” といった仰々しいサブタイトルですね。

 私には、数多くの本を読みたいとか、少しでも早く読みたいとか、そういう気持ちは全くありませんし、読書に “効率” という概念を持ち込もうとも思っていません。
 ただ、いろいろな方々の “読書スタイル” には関心があって、こういう「マーケティング感満々の本」も改めて “素直に” 読んでみようかと手に取ってみた次第です。

 早速ですが、本書の「はじめに」の章にはこう書かれています。

(p2より引用) 「超合理化サイクル」で読書効率を最大化して、効果的に本を読んでいくことが、本書の趣旨です。
 具体的には、「問題発見力」と「仮説思考力」により、読むべき箇所の絞り込みを行い、読書の時短を徹底し、読む時間をおよそ15分に絞ります。さらに、現実世界での「検証実験」に時間を割くことで、自分に変化を起こし、読書で得られるリターンを最大化します。

 なるほど、そもそも対象にしている「読書」(のコンセプト)が違うんですね。
 「書物(本)を読む」といった場合の「本」とはどんな(ジャンルの)本なのか、「読む」とは何を求める行為なのか、流石に著者も、ドストエフスキーの「罪と罰」を15分で読むことを目指してはいません。そういう類の本は、本書で説いている読書法の対象外です。

 さて、本書を読んでの感想ですが、ビジネス書や実用書に特化した読み方指南という点では、有益なアドバイスがいくつもありました。
 たとえば、以下のような指摘です。

(p139より引用) 「わかっている」と「やってみる」の間、さらに「やってみる」と「できる」の間には、大きな隔たりがあることがこの件で改めてわかりました。
 本から抽出した情報は、実際に「やってみる」をしないと身につけることはできません。やってみて、できるまでのプロセスによって深い理解は得られます。

 ビジネス書や実用書を読む場合、その動機や背景には解決したい課題や実現したい目的があるはずですから、本から得た情報は実際の「(課題解決や目的実現に向けた)行動」に結び付けないと全く無意味だということですね。

 著者のイメージしている「読書」のスコープは読後のアクションまで含めたかなり幅広いものです。
 「読む」のは15分に短縮できるかもしれませんが、読んだ後の「やってみる」「確かめる」というステップを経ないと、読書で得たエッセンスは結局のところ身につかないのです。
 「はじめに」に著者自身が語っているとおり、読む時間を15分に短縮して、そこで生み出した時間をその後のアクションのために使うという主張のようです。

 つまるところ、本書で著者が開陳している「理系読書」とは、“本を活かすための「PDCA」サイクル” だと言えるでしょう。
 「読む」→「やってみる」→「確かめる」というサイクルですから、まさにPDCAそのものです。

 その点では、本書は極めて「合目的的」な本なので読む人を選びますね。
  “粗製濫造” されたTips本が数多く氾濫している中から、自分自身に有益なアドバイスを抽出できるものを見つけるには、それなりのノウハウと経験が必要です。

 速読術的な “安直なTips” を得ようとして本書を手にとるのはやめた方がよさそうですし、“問題意識” が合致するのであれば結構ツボにハマるかもしれません。



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