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下町ロケット (池井戸 潤)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 あまり「小説」を読む方ではありませんし、「○○賞受賞作品」といったものにも疎いのですが、たまたま、いつも行く図書館の返却棚で目についたので手にとってみました。(ちなみに本作は、第145回(平成23年度上半期) 直木賞受賞作です)

 小説なので、あまり詳しくはご紹介しませんが、登場人物が魅せた印象的なたシーンをふたつ、覚えとして書き留めておきます。

 まずは、帝国重工宇宙航空部の財前道生部長。
 本物語のキーマンのひとりです。

(p214より引用) もちろん、工場を一度見ただけでそれに陶酔するほど、財前は青くはない。しかし、帝国重工の部長として、相手の技術を見定める目には自信があった。そして、ひとたびこれと認めたら相手を尊敬し、誠意を見せる。それは、川崎の町工場で生まれ育った人間に染み付いた、ある種性癖のようなものかも知れない。

 続いて、佃製作所のメインバンク銀行から出向して経理部長殿村直弘。
 普段はあまり目立たず社内の人間からは門外漢と見られながらも、佃製作所への熱い想いを抱いた人物です。

(p110より引用) 「なにか勘違いされていませんか、田村さん」
 そのとき、重々しい声で殿村が割って入った。「こんな評価しかできない相手に、我々の特許を使っていただくわけにはいきません。そんな契約などなくても、我々は一向に困ることはありません。どうぞ、お引き取りください」

 さて、この作品ですが、一気に読み切ってしまえるテンポが心地よく、確かに世の中受けするストーリー展開ですね。大きなどんでん返しがあるわけでなく予定調和的です。

 “ものづくり”という時代的なキーワードの波に乗った、とても無難で優等生的なエンターテイメント作品だと思います。



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