(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。
このところ “地政学” という言葉をよく目にします。今日の世界情勢を理解するに必須の視点を提示しているようですが、私は全く勉強したことがありません。
ということで、手近な本書を手に取ってみました。
私のような初学者にとって、初めの一歩としては馴染みやすい構成ですね。さっそく、私の興味を惹いたところをいくつか書き留めておきます。
まずは、「地政学」の基礎としての “2つの異なる源流” について。
「英米系地政学」と「大陸系地政学」の世界観の整理です。
この2つの世界観はあまりにも異なっていることから、本書ではこの点についてはこれ以上議論を深めるのではなく、2つの考え方の並存を前提として解説を進めて行きます。
ちなみに、最近の大きな事件である「ロシアのウクライナ侵攻」の地政学的位置づけについては、こう言及しています。
さらに、ひろく現代の紛争の構図を “ふたつの地政学の考え方” で整理すると以下のように言えます。
そして、もう一点、この二つの地政学の盛衰の実例として、とても興味深く感じたのが “日本における地政学の捉え方” の変遷です。
外見的には、英米系から大陸系へ、そして戦後は、また英米系へ回帰という変遷を見せた日本の「地政学」の歴史ですが、その文脈で戦時中に “大東亜共栄圏”思想 として隆盛し、戦後否定されたのは「ハウスホーファーに代表される大陸系地政学」でした。
現実的には、日本においてはこの二つの地政学の違いは強く意識されなかったようですが、「マッキンダー理論(英米系地政学)」は、たとえば、シー・パワー同盟である現代の日米同盟を明確に説明する理論だということなのです。
さて最後に、本書を読んで、最も腹に落ちた解説です。
第二次世界大戦以降の武力紛争のうち「内戦」の数が大半である所以がよく分かります。
未成熟な体制下での新興国の誕生は、基本理念としては望ましいものの、現実社会という点では、国際政治における無責任さの拡散であるといった性格も否定できないようです。