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からだの錯覚 脳と感覚が作り出す不思議な世界 (小鷹 研理)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。
 「ブルーバックス」は時折手を伸ばしたくなりますね。

 今回は「認知科学」関係の著作ですが、“錯覚” をテーマにした解説本ということで興味を持ちました。
 もちろん、私はこういった分野は全くのど素人なので、本書に書かれていることは、初めて知ることばかりでした。

 それらの中から特に私の関心を惹いた「第6章 幽体離脱を科学する」の章での解説を、覚えとして書き留めておきます。

 そこでは、小鷹研理さんは、「体の錯覚(フルボディ錯覚)」の一種として “天井を見下ろす” という「寝転がる姿勢での視点反転(重力反転)」が生じることを示したうえで、こう続けています。

(p229より引用) 幽体離脱は、この寝転がりの特異性を、想像世界におけるスペクタクルな対面の演出のために、単に都合よく利用しているのです。

 しばしば超常現象として捉えられる幽体離脱も「脳内現象(=錯覚の一種)」ということですね。

 さて、このように本書では、数多くの興味深い「からだの錯覚」が紹介されています。
 ただ、それを体感しようとすると、ほとんどの例が「二人(体験者と実験者)」で行うものなので、残念ながら私は実際にトライすることができませんでした。やはり少しでも体験してみないと、小鷹さんの解説はなかなか理解しづらいところがありましたね。
 “感覚” を “文字” で表現し、それを他人の “五感” で体感させるのは難しいものなのです。

 あと、私の期待とズレていたところは、“錯覚” が生じるメカニズムの解説です。
 私としては、脳科学的な観点から、その発生メカニズムを素人にもわかるように解き明かしてくれるのではと(勝手に)思っていたのですが、“現象の紹介” が中心で、そういった観点での解説はほとんどありませんでした。あるいは、あったのかもしれないのですが、私には理解できなかったようです。

 そのあたり、オリジナリティのあるテーマを取り上げたとても興味深い挑戦作ではあった半面、ちょっと消化不良が残る読後感でしたね。



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