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ナイルに死す (アガサ・クリスティー)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 ちょっと前に映画「ナイル殺人事件(1978年版)」を観ました。
 最近もまた映画化されたようで、そうなってくると、やはりアガサ・クリスティーの「原作」を読んでみようという気になってくるのです。

 ということで、いつも行く近所の図書館から文庫本を借りてきました。

 ネタバレになるとまずいので、内容には触れませんが、読み終わっての印象は、彼女の代表作のひとつということもあり、流石にしっかりとした構成の密度の濃い作品だと感じますね。
 少々欲張り過ぎのような印象を与える枝葉のエピソードも、物語の展開の中できちんと丁寧に回収しています。

 映画の方も、結構、原作に忠実に作ってあるようです。
 最後、オリエント急行殺人事件と同様に、関係者が一堂に会した場でエルキュール・ポアロが謎解きを披露するのですが、これは映画ならではの演出でした。ちなみに、私は、わざとらしさを感じる映画のラストよりも、原作のエンディングの方が好みですね。

 さて、作中、レイス大佐とエルキュール・ポアロとの間で、こんな会話が交わされていました。

(p448より引用)
「・・・探偵の仕事というものはえてして間違った出発点を拭いとって、再出発することにあるからね」
「そうです。まさに真理です。それができない人がずいぶんいます。この人たちはまずある仮説を立てて、あらゆることをその仮説に当てはめようとするんです。それで何か小さな事実がその説に当てはまらないと、その事実を拗りだしてしまう。ところがその当てはまらない事実こそ、えてして意味深長なことが多いのです。・・・」

 なるほど、サスペンスの “謎解き” の王道ですね。



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