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日当りの椅子 (佐藤 愛子)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
このところ図書館で予約している本の受取タイミングがうまくいかず、また読む本が切れてしまいました。
ということで、納戸の本棚を探って、家族の古い蔵書の中から気軽に読めるエッセイを取り出してきました。
作者は佐藤愛子さん、北海道浦河に建てた別荘での暮らしを材料に、その地の人びととの暖かな交流の様子を書き綴っています。
発行は1987年ですから今から35年ほど前、佐藤さんが60歳を少し超えたぐらいの作品です。当時はこういったテイストが「エッセイの王道」のひとつだったのでしょうね。
まずは、何といっても大事なのが “題材”、何をエッセイのネタにするかです。
この作品集の場合、それは、別荘のある “「シロイト」の住人たち” なのですが、佐藤さんにとっては、もうこの段階で “オチ” まで付いたエピソードが「はい、どうぞ」と差し出されているようなものでした。
(p147より引用) 以上がアベさんが書けばいいといった、「あのこと」である。
「そうだわ、ありがとう、思い出した。あのこと書くわ」
「うん、それがいいよ」
「でも、タカノさん、怒らないかな」
「だいじょぶだろ。シロイトの人はもう、センセエに書かれることみんな覚悟してるからね」
アベさんはそういって励ましてくれたのであった。
そして、こういった豊富な素材を楽しい一編の読み物に料理するのが、佐藤さんの筆力。
文章に込められたユーモアと温かみが “佐藤さんならではの味付け” ということでしょう。
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