(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
著者の立川談春さんは、言わずと知れた立川談志師匠のお弟子さん、その前座時代のエピソードを綴ったエッセイです。
談春さん本人の失敗談・苦労談はもちろん、兄弟弟子連中をネタにした取って置きの話もこれでもかと紹介されていますが、やはり期待どおりの談志師匠に纏わる逸話も満載です。
その中で、(失礼ながら)ちょっと私が意外に思ったのが、談志師匠の「弟子の育成」に対する取り組み姿勢でした。
見事なまでに “真っ当な姿勢” です。
さらに、談春さんたち前座4人が「二ツ目」試験に合格したとき、談志師匠が彼らに語ったお祝いの台詞の一節も振るっていました。
ちなみに、先の「稽古」の話が後の「柳家小さん師匠」とのエピソードにつながっていきます。
真打昇進試験を兼ねた会のゲストとして小さん師匠を招いたときでした。
わざわざ面白いネタを探さなくても、日々の前座暮らしの中に飛び切りの話題が山積していたとはいえ、それなりの文才がなければ一冊の本に整えることは一筋縄ではいかないでしょう。
立川流を旗揚げした談志師匠の心意気と、それに心酔した談春さんたち若き弟子たちの劇画のような暮らしざまが、怒涛のごとくに伝わってくるエッセイでした。