橋本治と内田樹 (橋本 治・内田 樹)
橋本治氏の著作は、以前、「「わからない」という方法」や「これで古典がよくわかる」を読んだことがあります。ご本人はそのつもりはないようですが、非常にユニークな思考回路を持った方との印象を持っています。
本書は「橋本治論」です。
ただ、その論考は「対談形式」で進められ、さらに面白いことに、その対談相手のひとりとして橋本治氏本人が登場しているのです。
とはいえ、タイトルにもあるように、対談の主たる相手は内田樹氏。
橋本氏独特の思考方法が、内田氏との対話を通して対比的に浮かび上がって、大変興味深いものがありました。
お二人の議論の的は、リアルな「人」に密着しています。「人」の現実の所作や思考が材料になります。
たとえば、「一流の職人遊び心」について。
そして、こちらは、「若者のお洒落」に関する橋本氏の指摘です。ちなみに、橋本氏も一時期、数百万円かけて全身をベルサーチで包んだことがあるとのこと。
この解説は結構納得感がありました。
「若者」を材料にした議論で、もうひとつ面白かったのが「義務教育」の意味についての内田氏の指摘でした。
さらに、全く観点の違った話題ですが、「現代国語」のテストが得意だった内田氏による「現国テスト攻略法」の伝授です。
この指摘もビシッと的を得ていますね。「現代国語」のテストの問題文に採用された著者自身が、その問題に戸惑うというのはよく聞く話です。
さて、最後に「橋本治論」として、内田氏が指摘した「橋本治的思考方法」を記しておきます。「引き算による人物造形」です。
創作において、自分の人格とか思考方法等を元に、いろいろな要素を「加える」ことによって「他人になる」のではなく、今、既にある「自分」から(年齢差・性差等の)差分の経験値等を引くことによって「他人になる」というやり方です。
これは、内田氏の言うように、なかなか思いつく発想ではありません。
さらに、橋本氏自身は、他人と重なりのない「公共の一部」であり、他人がやらないことを自分が分担してやることによって「公共の拡大」に寄与しているといいます。
非常に面白い考え方ですね。
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